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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年11月23日 No.3614 宇宙技術戦略に関する考え方 -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

滝澤氏

経団連は10月27日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(佐藤智典部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合を都内で開催した。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の滝澤豪参事官から、政府において現在策定中の宇宙技術戦略に関する考え方について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙政策決定の流れ

わが国では、内閣総理大臣を本部長とし全閣僚が構成員を務める宇宙開発戦略本部において、宇宙基本計画および工程表が策定される。また、内閣総理大臣の諮問に応じて重要事項を審議する場として、外部有識者で構成される宇宙政策委員会が設けられている。

2023年6月13日、宇宙開発戦略本部による了承を経て、第5次宇宙基本計画が閣議決定された。同時に、同計画に基づき、今後10年間に実施する具体的な施策・プロジェクト等を工程表として取りまとめている。毎年6月ごろに重点事項を整理したうえで、年末に向けて工程表を改訂することとしている。

内閣府宇宙開発戦略推進事務局では、宇宙政策担当大臣の指揮のもと、文部科学省、経済産業省、総務省、防衛省等の関連省庁と連携し、宇宙政策の総合的かつ計画的な推進・調整を行っている。

■ 宇宙を取り巻く最近の状況

今般のウクライナ危機で、民生利用に加え軍事作戦の支援や戦場動向把握などのため、欧米企業が提供する商用宇宙アセットがフル活用されたことは記憶に新しい。安全保障分野において、宇宙システムの重要性が高まっている。

加えて、社会課題の解決にも宇宙システムは活用されている。23年6月、台風2号の影響で愛知県の河川が氾濫した際には、翌朝のポンプ車の配置決定に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星データが大きく貢献した。また、国際協力のもと、CO2など温室効果ガスの排出・吸収状況を観測するためにも衛星は使用されている。現在、世界で衛星測位システムを有する国は米国と日本を含め6カ国のみである。

宇宙産業は17年以降、年率5%の勢いで市場が拡大しており、40年の世界市場は1兆ドル超になるとの予測がある。いまや多様な最先端宇宙関連技術が民間企業からも創出されており、宇宙産業はかつての官主導体制から官民連携体制へと構造変化が起きている。

地域・国全体で一貫した産業基盤支援を実施するため、欧米の宇宙開発機関や政府では、先端・基盤技術開発から商業化に至るまでの技術戦略を策定し、技術開発支援等を通じて宇宙産業を育成している。

■ わが国の宇宙技術戦略

宇宙空間における活動を通じてもたらされる経済・社会の変革が世界的なうねりとなっているなか、わが国が宇宙先進国として宇宙活動の自立性を維持・強化し、世界をリードしていけるかどうかが、わが国の存立と繁栄の帰趨を大きく左右する。

第5次宇宙基本計画では、わが国の勝ち筋を見据えながら開発を進めるべき技術を見極めるため、「宇宙技術戦略」を策定してローリングしていくことを決定した。今後、衛星、宇宙科学・探査、輸送の3分野、さらにそれらの分野に共通する技術について、宇宙政策委員会の各小委員会において、関係省庁やJAXA、民間企業等を交えて技術開発や支援のあり方について議論する。各小委員会での議論を踏まえ、同委員会・基本政策部会において宇宙技術戦略の全体を取りまとめ、23年度内の策定を目指す。

策定された宇宙技術戦略のローリングを通じて、わが国の宇宙活動の自立性の維持・強化に資する技術、国際市場で勝ち残る意志と技術、事業モデルを有する企業を政府として重点的に支援していく。

【産業技術本部】

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