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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年12月7日 No.3616 株式報酬の利便性向上に向けた税務上の課題 -金融・資本市場委員会資本市場部会

経団連は11月17日、金融・資本市場委員会資本市場部会(松岡直美部会長)をオンラインで開催した。EY税理士法人の西村美智子アソシエートパートナーが「株式報酬の利便性向上に向けた税務上の課題」と題して講演した。概要は次のとおり。

■ 株式報酬にかかる近時の税制改正の趣旨および背景

コーポレートガバナンスの実現のために、上場会社の経営陣には中長期的な企業価値と連動するインセンティブ報酬を付与すべきだと考えられている。そこで、株式報酬や業績連動報酬等の柔軟な活用を可能にするために、累次の税制改正が行われてきている。2016、17年度には、法人税において、損金算入の対象となる株式報酬の範囲が拡充されたほか、異なる給与類型の間で整合性を図る見直しが行われた。

スタートアップは、資金・経営資源が乏しいことから、その育成を図るうえでは、ストックオプションを活用しやすい環境を整備することが重要である。政府は、22年に策定した「スタートアップ育成5か年計画」に基づいて、税制適格ストックオプションの見直しを進めている。23年度には権利行使期間が延長され、24年度改正では権利行使限度額の大幅引き上げ、または撤廃等が検討されている。

■ 株式報酬のより一層の利便性向上のための課題

日本の税制の基本原則は、公平・中立・簡素とされてきた。公平は、水平的公平と垂直的公平の二つから構成される。そのうち水平的公平とは、負担能力の等しい人に等しい負担を求める考え方である。中立とは、税制ができるだけ個人や企業の経済活動における選択をゆがめることのないようにする考え方である。税制の基本原則やあるべき姿と現状を比較して、ギャップが生じているものを課題としてとらえている。

公平性の観点からは、上場している同族会社(注)に、業績連動給与の損金算入を認めるべきである。現行の制度では、業績連動給与の損金算入は、非同族会社、あるいはその完全子会社に限定されている。これまで同族会社は、役員報酬の決定に恣意性が介入しやすく、透明性や適正性を確保することが難しいと考えられてきた。しかし上場企業では、会社法や金融商品取引法等によって、透明性や適正性が担保されていると思われる。

中立性の観点からは、組織再編の形態にかかわらず、特定譲渡制限付株式(特定RS)の承継に対する税制上の手当てがなされるべきである。基本的には、組織再編に伴う特定RSの譲渡制限解除によって、課税所得が発生することとなっている。一定の組織再編には、課税を繰り延べる措置が講じられているものの、組織再編の形態によっては、当該措置の対象とならない。

他にも、従業員向け株式報酬の取り扱い、税制適格ストックオプションの要件等をはじめ、多数の課題が存在すると考えている。

(注)会社の株主等の3人以下(ならびにこれらと特殊の関係のある個人および法人)がその会社の発行済み株式、出資の総数、あるいは総額の50%超を有する会社

【経済基盤本部】

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