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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年12月7日 No.3616 厚労省による医療DXの取り組み -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

岡本氏

田中氏

経団連は11月16日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を開催した。厚生労働省の岡本利久大臣官房参事官(情報化担当)と田中彰子医政局参事官(特定医薬品開発支援・医療情報担当)から、医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 社会保障を取り巻く状況

人口減少局面を迎えるなか、現在提供されている医療・福祉等の維持が課題となっている。厚労省では、(1)多様な就労・社会参加の環境整備(2)健康寿命の延伸(3)医療・福祉サービスの改革による生産性の向上(4)給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保――に取り組んでいる。その一方で、医療・福祉サービスの改革の一環として2017年からデータヘルス改革を行っている。

■ データヘルス改革に向けた取り組み

厚労省はデータヘルスの基盤であるオンライン資格確認等システムの普及に努め、すでに多くの病院等に導入されている。

こうしたなか、新型コロナウイルスの流行も踏まえ、デジタル化を通じた強靭な社会保障を実現するため、データヘルスの集中改革プランを策定した。(1)全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大(2)電子処方箋の仕組みの構築(3)自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大――を図っていく。

■ 医療DXの推進に向けた取り組み

セキュリティを考慮しながら医療DXの施策を推進することにより、(1)国民のさらなる健康増進(2)切れ目なく質の高い医療等の効率的な提供(3)医療機関等の業務効率化(4)システム人材等の有効活用(5)医療等情報の二次利用の環境整備の実現――を目指す。

具体的には、まずオンライン資格確認のシステムを拡充して、それを基に全国医療情報プラットフォームを構築することが挙げられる。また、電子カルテ情報を標準規格化する範囲を拡大させている。加えて、救急時に本人の同意を要せずとも医療機関において患者の必要な医療情報を速やかに閲覧できる仕組みも整備する。

他方、診療報酬改定に関するDXの取り組みも推進している。デジタル化を通じて医療現場における業務の効率化がもたらされるほか、人材の有効活用が可能になる。

医療等情報の二次利用については、医薬産業やヘルスケア産業の振興にも貢献する。そこで、医療等情報の二次利用に関するワーキンググループを設置し、有識者による検討を進めている。

■ 政府全体のデジタル政策と医療DX

人材や財政に関する制約が厳しくなるなかでも国民一人ひとりにきめ細かなサービスを提供する、いわば「小さくて大きい政府」を実現するためにDXがある。また、今後の医療需要に影響する人口構造の変化は地域ごとに大きく異なる。官と民は連続的であり、個々のニーズに対応するという目的を共有しながら、急速に進歩するデジタル技術の特性を踏まえて「行政」という社会の基盤を更新しつつ、国民の満足度を上げるような社会のあり方を官民で考える必要がある。

【産業技術本部】

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