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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年12月21日 No.3618 雇用保険制度を含む職業安定行政の現状と今後の課題 -雇用政策委員会・政策部会

経団連の雇用政策委員会(淡輪敏委員長、内田高史委員長)と同政策部会(東佳樹部会長)は11月30日、合同会合をオンラインで開催した。厚生労働省の山田雅彦職業安定局長が職業安定行政の現状や今後の課題をテーマに講演した。労働政策審議会で議論が行われている雇用保険制度の見直しを中心に説明を聴いた後、意見交換を行った。山田局長による講演の概要は次のとおり。

■ 雇用保険制度見直しの検討状況

雇用保険制度は、失業等給付と育児休業給付、雇用保険二事業から成り、その財源は国庫と労使の保険料で支えられている。このうち、事業主の保険料負担は、雇用保険二事業分を含め、賃金総額の0.95%分となっている。

雇用保険制度改正の主な検討事項
Ⅰ. 育児期における多様な働き方の支援
  1. ① 育児休業給付の給付率の手取り10割相当への引上げ
  2. ② 育児時短就業給付(仮称)の創設
  3. ③ 育児休業給付の財政基盤強化
  4. ④ 育児休業給付の勘定移管
Ⅱ. 教育訓練、リ・スキリング支援
  1. ① 教育訓練給付の給付率等の見直し
  2. ② 教育訓練中の生活を支えるための給付の創設
  3. ③ 教育訓練中の生活を支えるための融資制度の創設
  4. ④ 自己都合離職者の給付制限の見直し
Ⅲ. 多様な働き方を支えるためのセーフティネットの拡大
  • ○ 雇用保険の適用拡大
Ⅳ. 安定的な財政運営の確保

雇用保険制度については、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2023」(6月16日閣議決定)などを踏まえ、労働政策審議会において、四つの観点から見直しに向けた検討を進めている(図表参照)。

一つ目は、育児期における多様な働き方の支援の観点である。育児休業給付の給付率の引き上げについて検討しており、具体的には、子の出生後一定期間内に被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得した場合に28日間を限度として、給付率を現行の67%(手取りで8割相当)から8割程度(手取りで10割相当)に引き上げる。また、2歳未満の子を養育するために、時短勤務を選択して賃金が低下した労働者に対する給付の創設も検討している。

二つ目は、教育訓練やリスキリング支援の観点である。教育訓練給付の給付内容の見直しについて検討しており、具体的には、労働者の中長期的なキャリア形成に資する教育訓練を対象とした「専門実践教育訓練給付金」と労働者の速やかな再就職および早期のキャリア形成に資する教育訓練を対象とした「特定一般教育訓練給付」の2類型において、訓練後の賃金上昇など一定の要件のもとで追加給付を新設する。また、労働者が安心して再就職活動や転職等の検討を行えるよう、(正当な理由のない)自己都合離職者に対する2カ月間の給付制限期間を短縮する方向で議論している。

三つ目は、多様な働き方を支えるためのセーフティネット拡大の観点である。週所定労働時間20時間未満の労働者への適用拡大について検討しており、仮に、適用対象を週所定労働時間10時間以上に拡大した場合、最大で約500万人が新規適用になることが見込まれる。

四つ目は、安定的な財政運営の確保の観点である。コロナ禍における雇用調整助成金の活用に伴う大幅な支出を賄うために、その財源である雇用保険二事業の雇用安定資金は、失業等給付の積立金を経由して累計3.4兆円(2023年度予算ベース)を借り入れている。返済のあり方については、労使からの意見を踏まえながら、財政当局との調整を含め、今後も検討を進めたい。

【労働政策本部】

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