経団連は4月22日、東京・大手町の経団連会館で第2回AZEC推進ワーキングチームを開催した。日本貿易振興機構(ジェトロ)調査部アジア大洋州課の田口裕介課長代理から、ASEANのカーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みや課題について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ ASEANにおけるCNの取り組みと課題
ASEANでは多くの国が長期的にCNやネットゼロ目標を設定し、脱炭素化に取り組んでいる。エネルギー源として化石燃料への依存度が高く、また今後の経済成長や人口増に伴い、エネルギー需要、炭素排出量は拡大する見込みである。
こうしたなか、脱炭素政策の一環としてASEAN各国は、省エネルギーや再生可能エネルギー拡大に向けた目標を設定している。また、シンガポールやインドネシアは、水素の開発・利用に関する国家戦略を策定している。他方で、国によっては電力供給不足や資金不足などの課題も多くある。
資金については、ASEANで2016~30年の期間で、毎年2000億ドル、累計3兆ドルのグリーン投資が期待されるという試算もあるが、現状(16年)は年間400億ドルにとどまっており、資金調達環境の改善が求められる。また、低炭素化に取り組む事業を対象とするトランジションボンドが十分発行されていないことも課題である。他方、投資を促す判断材料となる「ASEANタクソノミー(第2版)」が23年3月に公表された。アジアの実態に即し、各国の技術や金融の発展段階に応じた内容となっている。
再エネ普及に向けては、国境を越えたクリーンエネルギーの融通を可能とする「ASEANパワーグリッド構想」の実現が期待される。しかし現状(22年)は、目標送電量の4分の1にとどまっているため、整備が急がれる。また、ASEANでは化石燃料補助金を導入している国が多いことも、低炭素エネルギーへの移行を遅らせている原因と国際機関から指摘されている。
■ 日本への期待
ASEANの国々は、脱炭素化目標を達成するため、気候変動関連技術やノウハウを積極的に伝授してくれる存在として日本に高い期待を寄せており、その期待は年々高まっている。
ASEANにはすでに多くの日本企業が進出し、炭素排出量の見える化や、省エネ・再エネの導入等に取り組んでいる。こうした産業集積のあるASEANで、日本企業が各国と連携して脱炭素化に取り組むことで、ASEANのサプライチェーン全体の低炭素化・国際競争力強化に貢献することが可能である。ジェトロとしても、日本企業と外国企業のマッチングや情報提供を通じて、ASEANの脱炭素化・経済成長・エネルギー安全保障に貢献していく。
【環境エネルギー本部】