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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年5月30日 No.3638 多国籍企業行動指針の最新動向 -OECD諮問委員会多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォース

ボーレ氏

経団連のOECD諮問委員会多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォース(佐久間総一郎座長)は4月26日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。OECD責任ある企業行動センターのフロキエ・ボーレ公共政策・地域プログラム課長らから、OECD多国籍企業行動指針の最新動向について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 多国籍企業行動指針の概要と改訂の要点

OECD多国籍企業行動指針は、責任ある企業行動に関する最も包括的な国際基準である。大企業だけでなく、国際的なビジネス関係がある限り、国有企業や中小企業を含むあらゆる規模の企業に適用される。OECD加盟38カ国全てと、4月にモーリシャスを加えた14の非加盟国が同指針を遵守している。

同指針は、企業に対して、リスクベースのデュー・ディリジェンス(DD)の実施を求めている。企業は、自社事業のみならずサプライチェーン全体を通じて、労働者や環境、社会への悪影響を特定し、対処・軽減することが期待されている。また同指針は、責任ある企業行動に関連する国際労働機関(ILO)や国連等による他の国際文書と整合的である。

2023年の改訂は、前回改訂(11年)後の10年間の経験を反映しており、現在、世界が直面している社会的、環境的、技術的優先事項に対応している。OECDの公式諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC)と労働組合諮問委員会(TUAC)、市民社会の代表であるOECDウォッチとの緊密な連携のもと、複数回におよぶ協議を経て改訂された。

主な変更点として、データの収集と使用を含む技術の開発・販売・ライセンス供与・取引・使用・資金調達に関するリスクベースのDDに関する推奨事項が追加された。気候変動と生物多様性に関する国際的に合意された目標に沿うよう企業に勧告することも含まれる。責任ある企業行動のための各国連絡窓口(NCP)の可視性、有効性、機能的同等性を確保するための手続きも整備された。

DDについて、企業は優先順位を付けることができ、最も重要なリスクから取り組むこと、影響の重大さや企業の役割と能力を考慮して、それに見合った水準で行うことが許可されている。企業に求められることは改善であり、完璧にすることではない。

現在、OECD加盟国の約75%が責任ある企業行動とDDに関する規制を設けている。また、4月24日に欧州議会はコーポレート・サステナビリティ・DD指令を採択した。これらは、同指針のDD枠組みを規制の基礎に用いている。

■ NCPの役割

NCPは、OECD多国籍企業行動指針を遵守する各国政府が設置する機関である。同機関は二つの役割を有している。第一は、同指針そのものやDDのガイダンス、その他のツールを普及促進すること、第二は、非司法的な苦情処理メカニズムとして特定の事例を処理することである。各国政府がNCPを設置する方法には、柔軟性が相当認められている。例えば、単一省庁で完結する形式(単一型)、複数の省庁から代表者が集まる形式(省庁間型)、政府職員に加え非政府の利害関係者の代表が参加する形式(マルチパート型)、政府と独立した専門家で構成される形式(専門家型)、また、それらを複合した形式(ハイブリッド型)がある。日本のNCPは省庁間型である。

普及活動にはさまざまな方法があり、ノルウェーのNCPは、DDの自己評価ツールを開発し、企業に提供している。

【国際経済本部】

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