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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年6月13日 No.3640 インパクト投資に係る金融庁の取り組み -金融・資本市場委員会資本市場部会インパクト投融資ワーキング・グループ

西田氏

宮田座長

経団連は、インパクト投融資の普及方策の検討やインパクトコンソーシアムへの意見発信を行うため、金融・資本市場委員会のもとに、インパクト投融資ワーキング・グループ(宮田千夏子座長)を設置した。5月15日に東京・大手町の経団連会館で開催した初回会合では、金融庁総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室の西田勇樹室長から、インパクト投資に係る金融庁の取り組みについて説明を聴いた。説明の概要は次のとおり。

■ 政府におけるこれまでの検討

「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太方針2023)には、主にスタートアップ支援の文脈で、「インパクト投資の促進」がうたわれている。スタートアップへの投資は、事業により創造されるインパクトを端的に特定し、インパクト創出のストーリーを分かりやすく伝えやすい等の点が指摘される。他方で、上場市場もインパクト投資の推進に向けた重要な領域であると考えている。

2023年10月の「PRI in Person」における岸田文雄内閣総理大臣のスピーチでも、インパクト投資の重要性に言及されるなど、政府内でも機運が高まっている。昨日(5月14日)も、多くの内外の投資家・企業等の参加を得て「インパクトフォーラム」を開催したところである。

同フォーラムでもまさに議論があったが、インパクト投資の意義について大きく、(1)社会課題への対応を進める点に意義を見いだす考え方(2)インパクト投資により事業の潜在性を拡大させる可能性に意義を見いだす考え方――が存在すると承知している。双方の考え方はそれぞれの投資家・企業等の判断と理解しているが、多様な参加者がいるなかで、共通の要素・項目・手法等を探求していくニーズも高まっている。

金融庁は24年3月にインパクト投資に期待される要素を「基本的指針」として取りまとめた。ここでは、一定の投資リターンを確保することを前提に、投資に当たって、インパクト創造の(1)意図(2)貢献(3)特定・測定・管理(4)市場変革――等の支援を図っていくものとしている。(4)については、特に特徴的な部分として、市中協議も含めて海外関係者とも議論のうえで、投資家と企業との協働による価値創造の重要性を含んでいる。

■ インパクトコンソーシアムの立ち上げと議論

投資家・企業が相互に実践的な議論をさらに進める場面を提供していく観点から、23年11月に、インパクト投融資を推進していくための官民連携による対話の場である「インパクトコンソーシアム」を発足し、次の四つの分科会を設けている。

「データ・指標分科会」では、インパクトを有効に捉えるKPI(重要業績評価指標)などについて議論し、海外のデータベースとの連携も検討していきたい。

「市場調査・形成分科会」では、複数事業を営む上場企業のインパクトの測定方法や、インパクトと上場企業の企業価値評価のあり方等について議論していくことを想定している。

「地域・実践分科会」では、特に、融資が軸である地域でエクイティ投資等が課題と指摘される一方、関係者の巻き込みや知見向上の観点からは課題も多い。地域におけるインパクトの創出への具体的な支援ニーズ・方法等の議論を通じ、実践イメージを共有していくことが重要と理解している。

「官民連携促進分科会」では、インパクトスタートアップと行政組織とのマッチングについて議論する予定である。

■ 今後の対応

インパクト投資は、民間主体の取り組みが牽引してきた分野である。引き続き尊重されるべきとの指摘がある一方、公共財となるデータベースの整備などには官の関与も重要との指摘もある。官民でよく連携して、例えば、上場市場のインパクト投資手法の議論などは、経団連のワーキング・グループの知見を得ながら進めていきたいと考えている。引き続き協力をお願いしたい。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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