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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年5月22日 No.3683 幹事会で佐橋21世紀政策研究所客員研究委員が講演

佐橋氏

経団連は4月15日、東京・大手町の経団連会館で幹事会を開催した。東京大学東洋文化研究所教授で、経団連の21世紀政策研究所客員研究委員を務める佐橋亮氏が、「今後の日米関係の展望~21世紀政策研究所米国ミッションを踏まえて」と題して講演した。概要は次のとおり。

3月下旬に、米国・ワシントンDCを訪れ、戦略国際問題研究所(CSIS)をはじめとする主要なシンクタンクや有識者と意見交換した。トランプ政権は、(1)グローバル経済は米国にとって利益よりも損害が大きい(2)同盟国への「安全保障の傘」を提供するため米国は過度な負担を強いられている――という大きく二つの不満を外交に反映させている。また国内では、リベラルな価値観が浸透していると思われる組織の弱体化だけでなく、大統領権限の強化を重視し、政策形成へのグリップを高めている。スピード感のある展開もトランプ政権の作戦のうちだと、今回の訪問を通じて強く感じた。

足元では、とりわけ中国との間で激しい報復関税の応酬が続き、経済面で強硬論が目立つ。安全保障面での中国戦略の基本姿勢にまだ変化は見られないが、政権は全般的に、従来と異なる内向きの外交姿勢を強めている。今後の米中関係は、対話の実現すら危機的になりかねず、予断を許さない。

同盟関係についても、従来の関係から変質していくことが想定される。米国の同盟国には、米国への投資をはじめとする米国経済への協力や、米国にとって過度な負担とならないような防衛・安全保障体制の構築が求められる。この点は日本も例外ではなく、米国経済への貢献や防衛に関する負担増は避けられないと思われる。特に、エネルギー分野における日米の協力が重要性を増すとみている。

このように、米国の変質はこれまでとは一線を画すものであり、「帰っていく黒船」とも形容できる。かつての日米貿易摩擦期を上回る大きな外交問題として認識すべきであり、不確実性の高い時代を迎えているという前提での対処が求められる。他方、こうしたなかにあっても、やはり日米関係と米国に関する情勢分析をまずは中心に据えるべきである。より具体的には、経済界は民間レベルの関係構築に努めるとともに、政策提案も含めた構想力と持続性のある新しい「シンク&ドゥタンク」を構築して対応していくことが重要である。

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講演終了後、シンクタンク機能を担う21世紀政策研究所の活動をより一層強化していく観点から、「経団連総合政策研究所」に名称を変更(5月29日付)する旨を事務局が説明した。今後も日米関係をはじめとする情勢の分析や、海外の大学・シンクタンクなどとの連携強化に努めていく。

【総務本部】

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