1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2025年5月29日 No.3684
  5. オコンジョ・イウェアラWTO事務局長と懇談

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年5月29日 No.3684 オコンジョ・イウェアラWTO事務局長と懇談

オコンジョ・イウェアラ氏(中央)、吉田副会長(左)、早川副議長(右)

経団連(十倉雅和会長)の吉田憲一郎副会長・通商政策委員長、早川茂審議員会副議長・同委員長、久保田政一副会長・事務総長は5月13日、東京・大手町の経団連会館で、世界貿易機関(WTO)のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ事務局長と懇談した。オコンジョ・イウェアラ氏の発言概要は次のとおり。

世界貿易を巡る不確実性が高まり、多角的貿易体制もさまざまな困難に直面している。4月14日時点の米国の関税に基づいてWTOが試算したところ、2025年のモノの貿易量は24年比で0.2%減少する。これに加え、米国が一時停止中の「相互関税」を実施した場合には、減少幅が大きくなると見通している。

こうした厳しい見通しがあるものの、グローバルな貿易は依然として続いている。今こそ、WTOを中心とした多角的貿易体制の重要性を思い起こす必要がある。世界貿易の約74%はWTOの最恵国待遇のルールに基づいて行われており、世界貿易の約9割は米国以外の国・地域が占める。機能している部分を維持しながら、問題が指摘されている点について必要な改革を進めていきたい。関心が持たれている紛争解決機能の回復はもとより、不公正な貿易慣行の是正や公平な競争条件の確立、途上国に対する優遇制度である「特別かつ異なる待遇」を巡る問題は優先度が高い。また、一カ国でも反対すると合意できないというコンセンサスに基づく意思決定方式についても、運用の改善を含めそのあり方を検討したい。

不確実性の高い世界情勢のなか、企業は、冷静を保って各国の政策に対応するとともに、特定国への過度の依存を回避しながら分散投資を進めていくべきである。北米やアジアだけでなく、アフリカや中南米といった地域もサプライチェーンに関与させる「リ・グローバリゼーション」は、企業のリスク分散によるサプライチェーンのレジリエンス強化だけではなく、これまでグローバル化の恩恵を受けていなかった多くの途上国の経済発展の契機にもなる。

日本は貿易大国であり、グローバルな貿易体制を維持するために大きな役割を果たしている。そのなかでも、さまざまな困難を乗り越えて日本やアジアの発展に貢献してきた日本企業の声は重要である。経団連には、多国間主義やWTO改革の重要性等について、各国のカウンターパートとも連携しながら、カギとなる各国政府等へ働きかけてもらいたい。

【国際経済本部】

「2025年5月29日 No.3684」一覧はこちら