経団連は5月28日、東京・大手町の経団連会館で「経団連 Startup Summit 2025」を開催した。同イベントは、「スタートアップ育成5か年計画」の後半に差し掛かる今、日本のスタートアップの数と成功レベルを共に10倍にする目標「10X10X」の実現に向けた進捗を振り返り、取り組みを一層加速すべく開催したもの。大企業・スタートアップ・大学・行政等から約260人が参加した。今号と次号の2回にわたり、その内容を紹介する。
一つ目のセッションでは、「Science to Startupの実現・加速に向けて」をテーマに鼎談した。概要は次のとおり。
■ 南場智子 副会長(当時)・スタートアップ委員長

スタートアップの数は増えているものの、成功レベルの高さは不足している。特に、ディープテックをはじめとした大学の研究成果を産業に結び付ける「Science to Startup」のパスが未整備であることが、日本のエコシステムの課題である。この解決には、国内外の研究者や経営者、投資家など多様な人材のミックスが必要である。日本に多様な人材を呼び込むと同時に、日本からも積極的に世界へ飛び出していくための環境づくりが不可欠である。
■ 染谷隆夫 東京大学執行役・副学長

東京大学発スタートアップは着実に増加しており、学生の就職先としてスタートアップは当たり前の選択肢の一つになってきている。大学は研究力に加えて事業化力を強化すべきだが、大学には事業ニーズに通じた人材が乏しい。技術のシーズを社会のニーズにつなげるには、研究者と産業界の人材が交わる環境が重要である。あわせて、グローバル人材が力を発揮できる土壌づくりも必要である。
■ 大西晋嗣 九州大学副理事・九大OIP代表取締役

九州大学では産学連携組織を大学本体から切り離し、九大OIP(オープンイノベーションプラットフォーム)という企業に機能を集約した。地方大学が独自の特色を発揮するには、多様な人材のミックスが不可欠であり、そのための具体的な取り組みとして、研究プロジェクトへの外部人材の任用などを進めている。また、九州大学で博士号を取得した学生1000人が九州にとどまって事業を行っていくことを目標とし、博士号取得者にとって魅力的なジョブをつくっていくことを目指している。
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最後に南場委員長は、日本から世界で大きく成功するスタートアップを5社生み出すことができれば、日本のスタートアップの風景は大きく変わるとの意気込みを示し、セッションを締めくくった。
【産業技術本部】