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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月19日 No.3687 健康経営ガイドブック改訂を踏まえた健康経営の進め方 -永田産業医大准教授に聴く/社会保障委員会

経団連は6月3日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会(小堀秀毅委員長、根岸秋男委員長)を開催した。健康経営の進め方に関し、産業医科大学の永田智久准教授が講演したほか、企業2社から取り組み事例を聴取した。概要は次のとおり。

■ 永田氏講演

健康経営ガイドブックは、経済産業省から2014年に初版が公表されている。25年3月に10年ぶりに改訂版を公表するに当たり、改訂内容を検討する委員会の委員長として携わった。今回の改訂では、ガイドブックを辞書的に活用できるようにすることを意識した。また健康投資と人的資本・社会関係資本との関係の明示や、戦略マップの作成を含め、健康経営の実践手順や解説なども充実させた。

健康経営は、組織活性化や生産性向上につながり、業績向上や企業価値向上に寄与する。さらに、健康寿命延伸や労働力人口減少等の社会課題解決にも貢献する。健康経営を企業全体の取り組みとして推進し、浸透させるためには、経営層のコミットメントを担保する体制づくりが重要である。そのうえで、健康経営を通じた生産性の向上において最も重要な要因となるのが健康面のケアや励ましなどに関する上司の支援である。また、組織的な要因が与える影響も大きい。組織風土が醸成されている企業とそうでない企業とでは、同一の健康増進プログラムを行った場合でも、従業員の参加率や健康度などの成果に違いが生じることが確認されている。

健康経営への正しい理解も必要である。健康経営を通じた社員の健康増進は企業の利益を高める手段ではない。「企業の利益と社員の健康の総和を拡大させることによって、企業の長期的な発展性を高める」ものであり、「企業の利益」と「社員の健康増進」はいずれもが目的である。

健康経営に取り組む企業は増えているが、中小企業での実施率は低い。大企業が健康経営の効果を発信し、中小企業の取り組みを促すことが重要である。

■ 企業事例

1.中外製薬(山本秀一 人事部エンプロイーサポートグループグループマネジャー)

当社における健康経営の取り組みの特徴の一つとして、会社と労働組合と健康保険組合が一体となって健康経営を進めている点が挙げられる。例えば、がん検診の受診率90%以上の達成に向けて健保組合との連携を強化している。その他、無関心層の行動変容の課題に対しては、「自分のためではなく誰かのために健康を意識しよう」など、本人の主体性を喚起するメッセージを発信するなど、能動的な個別支援にも取り組んでいる。

2.三菱マテリアル(鈴木正哉 人事労政室健康経営推進グループ長)

当社では20年の「三菱マテリアルグループ健康宣言」以来、経営陣一体となって健康経営を推進してきた。メンタルヘルスを健康経営の重点実施項目の一つに位置付け、ストレスチェック集団分析結果から導き出される「健康いきいき職場」の該当拠点80%以上を目標指標として設定した。分析結果を全執行役へ報告して対応を協議するほか、全拠点向けの説明会開催や、「いきいき度」が低い拠点に対する本社臨床心理士による個別支援を行っている。

【経済政策本部】

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