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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月19日 No.3687 コンセプトに基づく価値づくりとサステイナブル消費への適用 -サステイナブル消費の促進に向けたアプローチ/消費者政策委員会企画部会

加藤氏

経団連は5月20日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会企画部会(楯美和子部会長)を開催した。明治大学商学部の加藤拓巳准教授から、サステイナブルな消費行動を促進するために企業が取るべきアプローチについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ コンセプトの具体化が価値づくりの出発点

日本が高度成長を成し遂げた一つの要因は、家電メーカーや自動車メーカーを中心に、「日本製は壊れない」という価値を提供してきたことにある。しかし「壊れない」が当たり前になった現在では、商品・サービスの存在目的である「消費者の困りごとの解決」の前に、その困りごとを発見するところから始める必要がある。困りごとの発見は、その解決より難しい場合があるが、競争力のある商品・サービスを生み出すには、「消費者が高いお金を払ってでも解決したい困りごと」の探求にリソースを割かなければならない。

価値づくりの出発点は、Who/What/Howで構成されるコンセプトの定義である。このなかで最も重要な要素はWhoであり、「どのような実用的・心理的な問題を抱えている人か」を具体的に特定する必要がある。コンセプトが曖昧なままでは、どれだけ優れた技術やデザインであっても消費者に響かない。優れた技術や社会的に意義のある活動を価値に転換するには、消費者価値を捉えたコンセプトが不可欠である。

コンセプトを策定した後は、(1)デザイン(2)ユーザーエクスペリエンス(UX)(3)プロモーション――の三つによって、それを一貫して具現化し続けることが重要である。企業は消費者にコンセプトの提供を約束し、それを守り続けることで、消費者から信頼を得る。この地道な積み重ねこそがブランドマネジメントであり、派手で場当たり的な広告やキャンペーンでは決して強固なブランド構築は成し得ない。

■ 消費者の利己的価値の訴求がサステイナブル消費の実現に不可欠

近年の夏の猛暑や未曽有の自然災害などの経験を通じ、消費者が環境問題を自分ごととして考える瞬間が増えている。環境に配慮された商品の購入姿勢を問う調査を行うと、消費者は肯定的に回答する。しかし実際には消費者の行動は伴っておらず、言行不一致が生じている。

調査環境では、社会的望ましさバイアスによって、サステイナブルな消費に対する消費者の肯定的な態度が引き出される。一方で実環境では、サステイナブルな商品の便益の曖昧さと価格の高さによって、消費者の否定的な行動を引き起こしていると考えられる。これが消費者の姿勢と行動に乖離が生まれる主な理由である。

この乖離を解消するためには、「おいしいものを食べたい」「快適に暮らしたい」といった消費者の利己的・人間的な欲求から目を背けず、消費者価値を捉えたコンセプトを起点とした商品・サービスづくりを徹底する必要がある。

現代の資本主義社会で商品・サービスを普及させるためには、倫理を押し付けるのではなく、消費者の利己的価値を前提として捉えるしかない。社会的に意義のあるサステイナブル消費を根付かせるためには、価値づくりが不可欠である。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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