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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月19日 No.3687 同一労働同一賃金法制の見直しの動向 -労働法規委員会労務管理政策部会・雇用政策委員会政策部会

経団連は5月14日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会労務管理政策部会(斉藤彰浩部会長)と雇用政策委員会政策部会(東佳樹部会長)の合同会合を開催した。

厚生労働省雇用環境・均等局の竹野佑喜有期・短時間労働課長、同省職業安定局の中嶋章浩需給調整事業課長から、労働政策審議会同一労働同一賃金部会における議論の動向について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

左から中嶋氏、竹野氏

■ 同一労働同一賃金法制の見直しの背景

2020年4月、働き方改革関連法(パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法の改正)により、同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の是正を図るための規定(均等・均衡待遇規定)の整備や、待遇に関する労働者への説明義務の強化、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備等が行われた。

法施行から5年が経過したことを受けて、労働政策審議会同一労働同一賃金部会では、25年2月から見直しに向けた議論が開始され、これまでに学識者や企業、労働組合等からのヒアリングを行った。

■ 改正法の施行状況

厚労省の調査によると、「正社員・正職員(フルタイム)」と「正社員・正職員以外」の間の賃金格差は縮小傾向にある。また、6割強(64.0%)の事業所が雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けて「取り組んでいるまたは取り組んだ」と回答したほか、「待遇の見直しは必要ないと判断した」(21.0%)や「異なる雇用形態が存在しない」(7.0%)との回答もあった。

同一労働同一賃金ルールへの具体的な対応としては、大企業については、パートタイム・有期雇用社員の「基本給」「賞与」や「慶弔休暇」などの待遇を新設・拡充したとの回答が多い。

正社員との待遇差についての説明義務に関する調査(労働者)によると、「説明を求めたことがない」との回答が9割超(92.0%)であった。その理由としては、「特に理由はない」が最も多く(40.4%)、「説明を求めることができることを知らなかった」(6.6%)との回答も見られた。他方、「説明を求めたことがある」との回答(8.0%)のうち、「説明に納得できた」との回答は約6割(57.5%)、「納得できないことがあった」との回答は約4割(42.5%)であった。

派遣労働者についても賃金(時間給)は上昇傾向にある。さらに各種手当等の適用割合も上昇しており、待遇改善が進展している。また、賃金に「満足している」(41.1%)との回答が、22年調査で初めて「満足していない」(38.0%)を上回った。

■ 同一労働同一賃金部会における議論の見通し

改正法の施行状況を踏まえ、今後、同一労働同一賃金部会では各論の議論が行われる。具体的には、均等・均衡待遇規定のあり方や近年の最高裁判例を踏まえた同一労働同一賃金ガイドラインの見直し、待遇に関する説明義務の改善、正社員転換・キャリアアップ支援などが論点となる。非正規雇用労働者の待遇改善に向けて、労使の取り組みを促していく観点から検討を進めたい。

【労働法制本部】

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