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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年6月19日 No.3687 新たな基準認証政策の展開 -知的財産・国際標準戦略委員会国際標準戦略部会

菊川氏

有馬氏

2023年6月に日本産業標準調査会(JISC)基本政策部会が「日本型標準加速化モデル」を、24年2月には経団連が「グローバルな市場創出に向けた国際標準戦略のあり方に関する提言」を公表し、国際標準を巡る国内の機運は高まりを見せている。他方、国際的なルール形成競争は一層激化しており、わが国における国際標準・認証政策のさらなる加速化が必要である。

そこで経団連は5月23日、知的財産・国際標準戦略委員会国際標準戦略部会(澤井克行部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催し、経済産業省イノベーション・環境局の菊川人吾局長、有馬伸明基準認証政策課長から、JISCで取りまとめる予定の「新たな基準認証政策の展開」について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 菊川氏あいさつ

標準は経済全体を貫く制度であり、総論に陥りがちだが、産業界と連携しながら具体的な取り組みを進めることが重要である。今般、量子をはじめとするパイロット5分野を設定した。量子コンピューターについては先日、石破茂内閣総理大臣、武藤容治経産大臣にも出席してもらい、産業技術総合研究所に世界最高レベルのテストベッドを整備した。技術開発に加えて国際標準化でも日本がリードする立場を強化していきたい。

また、グリーントランスフォーメーション(GX)関連法案が成立した暁には、排出量取引制度における認証および検証のプロセスが具体化されていく。認証機関においても経済安全保障の観点を踏まえた慎重なデータの取り扱いが求められており、国内認証機関の強化が不可欠である。

こうした基準認証政策を通じて、日本の技術的優位性を確保し、経済安全保障と産業競争力の両立を図る。政府としても標準化を国家戦略の中核に据えて取り組んでいく。

■ 国主導で重点分野の標準化を推進

新たな政策の一つ目の柱は、新興技術分野や国際的な競争が激化する分野を念頭に置いている。特定分野における国主導の戦略的標準化である。

今般、(1)量子(2)ペロブスカイト太陽電池(3)水素・アンモニア(4)バイオものづくり(5)データ連携基盤――の五つをパイロット分野として設定した。こうした分野では、政府が旗振り役となり、産業界やアカデミアのキーパーソンと連携しながら戦略を構築する。そのうえで、専門人材を擁する「伴走組織」が戦略策定から規格開発・活用までを一気通貫で推進する体制を構築した。

今後は、世界動向、イノベーション、産業政策等を踏まえながら、この取り組みをパイロット分野のみならず、戦略的標準化を進めるべき他の分野にも積極的に応用し、展開していく。

■ 認証制度改革でサプライチェーン全体の競争力を強化

二つ目の柱は、国内認証機関の抜本的な強化である。認証の対象が最終製品からサプライチェーン全体に広がるなか、EU電池規則への対応など、産業界から機微情報が可能な限り国内にとどまる仕組みの構築を求める声がある。

そこで、短期的には欧州機関との戦略的パートナーシップのもと、機微データに直接触れるのは国内機関に限る体制を構築した。中長期的には、国内機関の海外拠点を設立するなど、時間軸に応じたアプローチを展開する。

国内規制への対応では、排出量取引制度において第三者による認証および検証が義務化される見込みである。これを好機として国内機関の育成に向けた機運を高めていきたい。

■ CSO設置と人材育成で進める標準化経営

企業の経営戦略に標準化を組み込むことも引き続き重要である。最高標準化責任者(CSO)の設置、統合報告書への標準化の取り組みに係る記載を推奨する。市場形成力指標の開発・公表を通じて、企業行動の変容を促す。標準化人材の育成にも注力しており、標準化人材情報ダイレクトリーの公開や、ルール形成戦略研修、ヤングプロフェッショナル育成講座(ヤンプロ)、経験年数の少ない人材を応援するための表彰の見直しなどを通じ、次世代の担い手育成を強化する。

【産業技術本部】

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