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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年7月17日 No.3691 「能動的サイバー防御」の導入と官民連携の強化 -平サイバー安全保障担当相と懇談/サイバーセキュリティ委員会

平大臣

経団連(筒井義信会長)のサイバーセキュリティ委員会(遠藤信博委員長、島田太郎委員長)は7月1日、東京・大手町の経団連会館で「『能動的サイバー防御』の導入と官民連携の強化に関する平大臣との懇談会」を開催した。5月23日に公布された「サイバー対処能力強化法及び同整備法」の趣旨や今後の運用方針、官民連携のあり方等について、平将明サイバー安全保障担当大臣、飯田陽一内閣サイバー官、門松貴国家サイバー統括室統括官から、説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 遠藤副会長あいさつ

遠藤副会長・同委員長は、「実効性のあるサイバーセキュリティ対策は、全ての事業者にとって経営の最優先課題である」と指摘。官民連携を一層強化し、国家全体のレジリエンス向上につなげることの重要性を強調した。

■ 平大臣あいさつ

続いて平大臣は、同法が(1)官民連携の強化(2)通信情報の利用(3)攻撃サーバーへのアクセス・無害化――の三つの取り組みを柱とする「能動的サイバー防御」を導入するものである旨を説明した。

同懇談会の同日に「内閣サイバー官」が任命され、そのもとで司令塔機能を担う「国家サイバー統括室」が発足したこと、石破茂内閣総理大臣を本部長、全閣僚を本部員とするよう改組されたサイバーセキュリティ戦略本部(旧内閣サイバーセキュリティセンター)の第1回会合が開催されたことを紹介した。

そのうえで、サイバー攻撃の巧妙化・高度化が進むなか、官民の間で双方向の情報共有・活用を進めることにより、全体の対策強化を図る体制の構築が重要との認識を示し、「民間への過度な負担を避けつつ、産業界の声を反映した最適なエコシステムを構築していく」と発言した。

「経営層には、これまで以上にリーダーシップを発揮し、サイバーセキュリティ対策に取り組んでほしい」との期待も示した。

■ 飯田氏・門松氏説明

その後、飯田氏と門松氏から、同法の運用方針や今後の官民連携のあり方等について、次の説明があった。

国家を背景とする高度なサイバー攻撃に対抗するには、官民が連携して監視や情報共有等の体制を強化する必要がある。その際、民間の過度な負担を避ける観点から、事業者が政府に提出する被害報告の様式の統一を進めている。

今後はシステム整備により、報告窓口を一元化し、関係省庁と情報を共有できるようにする予定である。

深刻なサイバー人材不足への対応も急務である。国内では、サイバー人材に必要とされる職種ごとのタスク、知識、スキルが不明確であり、キャリアパスの見通しが立たないという課題が指摘されている。

一方、米国など諸外国では、これらを明確に定義した「人材フレームワーク」が整備され、求められる人材像の可視化が進んでいる。日本でも、こうした事例を参考にしつつ、官民一体で早期に人材フレームワークを策定し、効果的な人材確保・育成の基盤としたい。

1日に開催されたサイバーセキュリティ戦略本部第1回会合では、石破首相から、(1)年内をめどに新たな「サイバーセキュリティ戦略」を取りまとめること(2)サイバー対処能力強化法等の運用に向け、体制整備等に着実に取り組むこと(3)各府省庁の所管分野の取り組みについて不断の点検・改善を行い、効果的な対策を常に講じていくこと――の3点の指示があった。

官民連携なくしてサイバーセキュリティの実現は成し得ず、経済安全保障の基盤も揺らぐ。官民間での緊密かつ率直な意見交換を継続していきたい。

【産業技術本部】

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