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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年10月2日 No.3699 「人間の尊厳」を確保するために日本企業に求められる取り組み -企業行動・SDGs委員会/企画部会

湯川氏

経団連は9月1日、東京・大手町の経団連会館で、企業行動・SDGs委員会(西澤敬二委員長、秋池玲子委員長、眞鍋淳委員長)および同企画部会(清水郁輔部会長)の合同会合を開催した。西村あさひ法律事務所・外国法共同事業のパートナーを務める湯川雄介弁護士から、「ビジネスと人権」に関して、日本企業に求められる取り組みなどの説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 企業の取り組みの現状

EUの人権関連規制への対応など、日々さまざまな課題が発生するなか、日本企業は規程やマニュアル作りに追われ、現場は疲弊している。加えて、そのような対応は国際基準から期待されているものでは必ずしもなく、往々にして評価されないという悪循環に陥っている。

ハラスメントや働き方改革、児童労働等の社会課題に共通するのは、「人間の尊厳」に対する侵害であるという点である。尊厳の定義は時々刻々と変化し、侵害の様態もさまざまであるが、個別の侵害やそれに関連する法規制への対応は“もぐらたたき”のようなものであり限界がある。

本来は、人間の尊厳とは何かという原理原則や根本的な社会規範を考える必要があるが、日本特有のメンタリティやマインドセットが、原理原則的なアプローチを困難にしている。

■ 企業に求められる姿勢

企業からは「これに取り組めば、絶対に人権リスクがないと言い切れるか」「他社はどれくらい取り組んでいるのか」といった質問が頻繁に寄せられる。しかし、そのような正解志向・横並び発想が求められているのではない。

前述のようなメンタリティが元々あるなか、同質的な環境に身を置き続けると、視野が狭くなり、リスクに気が付きにくくなる。これを解消するためには、異なる価値観に触れて自分の意見が変わることを潔しとする態度を持って臨む外部のライツホルダーとの対話が必要である。

もし企業の慣習や組織・制度が、不適切な発想を醸成したり、対話精神を抑圧したりしているのであれば、そのような構造自体を見直すべきではないだろうか。

■ 企業に求められる取り組み

企業が人権尊重のための具体策を考える際は、人を疲れさせないことを重視すべきである。形式的なルールや研修の量を増やすのではなく、手や頭を動かした心を揺さぶる体験など、質・内容の変化で対応する必要がある。

人間の尊厳を侵害するさまざまな事件は現場で起きており、後追いでやめることには無理がある。現場での「おかしいのではないか」というささいな気付きこそが重要である。「人はどうあるべきか」について自ら考えることが必要であり、企業はそれを促すような環境づくりに取り組むべきである。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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