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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年10月16日 No.3701 「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」報告書 内閣府消費者委員会および消費者庁と意見交換 -消費者政策委員会消費者法部会/企画部会

経団連は9月12日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会消費者法部会(土屋達朗部会長)と同企画部会(楯美和子部会長)の合同会合を開催した。内閣府消費者委員会の小林真一郎事務局長、消費者庁の古川剛消費者制度課長から、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」報告書について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

左から小林氏、古川氏

内閣府消費者委員会は2023年12月から、「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」で、消費者法制度のあり方について議論し、25年7月に報告書を公表した。同報告書は、主に三つの論点について土台となる考え方を示している。

第一は、消費者が関わる取引を幅広く規律する法制度のあり方である。日本では超高齢化やデジタル化等が進み、従来の消費者法制度で消費者取引の安心・安全を十分に実現するのは難しい。今後は、格差是正に加え、消費者の誰もが多様な脆弱性を有するとの認識に基づき、消費者が安心・安全に取引できる環境を整備すべきである。

現代社会では、個人は他者のサポートがなければ単独で選択することが難しい。このため、制度設計においては、「選択の実質性を保護するアプローチ」を基盤とし、「結果としての幸福を保護するアプローチ」については、法律による介入の必要性や許容範囲を慎重に見極めつつ、検討するべきである。

インターネットの普及による情報過多社会では、人々の関心、注目、注意、認知コスト(アテンション)や消費時間が経済的価値を持って取引されている。このため、消費者法制度において、消費者が金銭だけではなく情報、時間、アテンションを提供する場合も消費者取引として視野に入れる必要がある。

第二は、デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方である。消費者取引のデジタル化は、利便性の向上をもたらす一方で、従来にはなかったさまざまなリスクも発生する。同報告書では、デジタル取引について、特徴を分析・具体化し、リアル取引と異なる規律が必要な場面や規律が未整備の場面を整理した。

第三は、種々の手法を組み合わせた実効性の高い規律のあり方である。今後の制度では、他者との適切な関係性のなかで、自らの価値観に基づく「自分自身の選択」であると納得できるような「自律」的な決定が可能となることを保障することが重要となる。

制度設計では、契約ルールや損害賠償制度などの民事ルール、行政規制や刑事規制などに加え、政府のガイドラインや官民が策定する基準などのソフトローも活用し、事業者の法規範に対する対応のグラデーションを考慮に入れながら最適な規律を組み合わせることが求められる。

同報告書では、以上の内容を踏まえ、消費者契約法を中心に既存の枠組みにとらわれず消費者法制度を抜本的に再編・拡充すべきとされており、消費者庁はさらなる検討を進める。

なお、23年に施行された消費者契約法および消費者裁判手続特例法の改正法附則では、施行後5年後の見直し規定が定められている。

【経済基盤本部】

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