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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年10月30日 No.3703 最近の労働行政の動向 -労働法規委員会

山田氏

経団連は9月16日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会(冨田哲郎委員長、小路明善委員長、芳井敬一委員長)を開催した。厚生労働省の山田雅彦厚生労働審議官から、最近の労働行政の取り組みについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ ハラスメント対策、女性活躍の推進

2025年6月、ハラスメント対策の強化や女性活躍のさらなる推進等を目的として、労働施策総合推進法等一部改正法が成立、公布された。

改正法により、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための雇用管理上の措置が事業主の義務となった。

このほか、カスタマーハラスメントおよび求職者等に対するセクシュアルハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者等の責務が明確化された。

時限立法である女性活躍推進法の有効期限は36年3月末まで延長した。男女間賃金差異および女性管理職比率の情報公表義務が拡充され、常用労働者数101人以上の事業主が対象となった。

■ 年収の壁対策

いわゆる「年収の壁」や配偶者手当を理由に就業調整をしている労働者が存在する現状を踏まえ、政府は当面の対応策を講ずるとともに、社会保険制度の見直しを進めている。

106万円の壁への対応として、キャリアアップ助成金により、被用者保険の適用対象となった短時間労働者の収入を増加させた事業主に対する助成を行っている。

25年7月からは、130万円の壁対策として、キャリアアップ助成金に「短時間労働者労働時間延長支援コース」を創設した。

このほか、企業の配偶者手当の見直しを促進するため、見直しの手順について資料等を通じて周知している。

106万円の壁として意識されている賃金要件(短時間労働者の被用者保険の適用要件の一つ)は、全国の最低賃金の動向を踏まえたうえで撤廃される予定となっている。

■ 労働安全衛生対策

24年の労働災害の発生状況を見ると、死亡者数が過去最少を記録する一方、休業4日以上の死傷者数は4年連続で増加した。

多様な人材が安全・安心に働き続けられる職場環境を整備する観点から、先の通常国会で労働安全衛生法(安衛法)等の改正法が成立し、25年5月14日(公布日)から段階的に施行されている。

主な内容は、(1)個人事業者等を安衛法の保護対象・義務主体に位置付ける(2)常用労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施を義務付ける(3)化学物質の危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則を設ける(4)特に危険な作業を必要とする特定機械等の設計審査等の民間移管を拡大する(5)高齢者の労働災害防止に必要な措置を事業者の努力義務とする――等である。

■ 働き方改革関連法施行5年後の見直し

19年から順次施行された働き方改革関連法の附則に、施行5年後の見直しの規定がある。これを受け、25年1月から労働政策審議会労働条件分科会で労働基準法の見直しに向けた議論を開始した。9月の分科会では、中間整理に向けて議論した。

今後は、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)等を受け、時間外労働の実態や労働者の労働時間に対するニーズなどを調査する。

同一労働同一賃金法制についても、25年2月から同一労働同一賃金部会で見直しに向けた議論を進めている。

24年12月には、労災保険制度の現代的課題を包括的に検討するため、学識経験者による研究会を設置し、7月29日に中間報告書を取りまとめた。

同報告書を踏まえ、遺族(補償)等年金の支給要件の男女差の解消、消滅時効期間のあり方、保険給付の支給・不支給決定の事実に関する情報の事業主への提供等について、労働政策審議会労災保険部会で議論している。

◇◇◇

講演後の質疑応答で小路委員長は「裁量労働制の適用労働者の8割が適用に満足しており、対象業務の拡大に向けて厚労省で前向きに検討を進めてほしい」と要望。他の参加者からも同趣旨の発言があった。

本会合の後半では、経済産業省から、大企業と中堅・中小企業の人材マッチングを通じて地域活性化を図る「地域企業経営人材マッチング促進事業」について説明があった。

【労働法制本部】

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