経団連は9月25日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)をオンラインで開催した。ダイキン工業の東風晴雄人事本部採用グループ専任部長、金沢工業大学の二飯田一貴進路開発センター次長・進路キャリア支援室課長、埴田翔同大学X(クロス)デザインラボ運営準備室長・企画調整課長から、産学連携による人材交流の取り組みについて、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ ダイキン工業~産学協創で広がる人材交流
東風氏
ダイキン工業は「人を基軸におく経営」を理念として掲げ、170カ国以上に事業を展開している。その傍ら、社会課題の解決、サステイナブルな事業拡大に向けて、産学協創を積極的に推進しており、その特徴の一つに人材交流がある。
2018年には東京大学と当社のトップが意気投合し、「空気の価値化」をテーマに大規模協創協定を締結した。大勢の理系・文系の教員やベンチャーの参画を得て、ビジョンの策定、革新技術の研究や社会実装に挑んできた。
グローバル人材の育成と、学生の視点からのダイキンへの提言を目的にスタートしたグローバル・インターンシップでは、これまで172人のインターン生が世界22カ国で当社拠点を訪れ、現地のビジネスや社会課題に向き合って解決策を提案した。参加したインターン生からは「世界の現実を肌で感じ、将来を考える契機となった」との声が寄せられた。
大阪大学との連携は16年に始まり、AI人材養成や女性エンジニアリーダー育成など、多様なプログラムを展開した。教員のクロスアポイントメントをはじめ、産学双方の人材が互いを往来、エネルギーマネジメントの社会実装にもつなげている。
こうした取り組みにより、大学側では教員への刺激や学生の成長につながるとともに、部局間の協創が生じている。企業側でも、新たな知見やネットワークの拡大といった成果が得られている。今後も人材交流の面から協創ネットワークをさらに深め、発展させていく。
■ 金沢工業大学~地域の人材育成を通した教育・研究の質の向上
二飯田氏
埴田氏
金沢工業大学は建学の理念に産学協同を掲げ、社会のニーズを捉えた教育・研究を重視してきた。全学必修のプロジェクトデザイン教育では、学科横断で課題解決に挑み、イノベーション創出方法を学ぶ授業やAI教育も必修としている。こうした教育を通じて、学生は早期から社会課題を発見する力や解決力を磨いている。
企業と学生が直接出会える機会・環境も整えており、その中核を成すのが「KITコーオプ教育」である。学生は4カ月間程度の有期雇用を通じて実務を担う。企業はテーマ設定から学生選抜まで関わり、若手社員が学生を指導することで社員教育にもつながっている。
産学共創ラボを設置し、社会実装型の研究と人材育成も進めている。複雑化する社会課題に対応するため、文理を問わない分野横断的な連携のもと、予測研究から社会実装まで、大学・企業が協働して取り組んでいる。
地域社会との連携にも力を注いでいる。金沢工業大学の革新複合材料研究開発センターを拠点とし、石川県と共同で地元企業をクラスター化することで、産業活性化と人材育成を一体的に推進している。
今後は、社会実装型教育研究の実践拠点となる「Xデザインラボ」を設立し、さまざまなステークホルダーの参画を得ながら、地域の人口減少や産業基盤維持といったさまざまな課題の解決に挑んでいく。
【教育・自然保護本部】
