大企業はスタートアップエコシステムの重要な一員である。なかでも資金面では、多くの大企業がコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立し、スタートアップに積極的に投資しており、日本ではスタートアップへの主要な資金供給源の一つとなっている。
米国ではCVCコミュニティの構築が進んでおり、9月8日から12日にかけて、カリフォルニア州サンフランシスコでCVCカンファレンス(CVC Week + Counter VI)が開催された。日本企業30社からの参加者を含む約1000人が、各国CVCやスタートアップと交流した。経団連からは事務局が視察した。概要は次のとおり。
■ CVCの現状
同会合を主催したカウンターパートベンチャーズのパトリック・イーガン共同創業者兼パートナーは、このCVCコミュニティは6年間で40人から1000人に急成長していると紹介。
CVCの現状については、投資環境は厳しい状況にあり、取引件数は回復傾向にあるものの依然としてピーク時を下回っていると説明した。こうした環境変化に伴って、CVC自体も進化の途上にあるとした。
具体的には、(1)CVCは親会社からより高い独立性を追求し始めている(2)取引の3分の2がシード期からシリーズBの間に集中し、初期段階かつ狙いを絞った投資が増加している(3)流動性確保に向けて、セカンダリー投資がCVCにとって一般的なツールになりつつある――という。
これらのデータは、同社とシリコンバレー銀行の共同レポート「State of CVC 2025」に基づく。
■ 加速するAIブーム
同レポートによれば、AIに投資するCVCの割合は2024年の55%から25年には69%に増加しており、AIは同会合の主要テーマの一つとなった。
オンラインで登壇した連邦政府のマイケル・クラツィオス大統領府科学技術政策局長は、トランプ政権が7月に公表したAI行動計画(AI Action Plan)に盛り込んだ規制緩和、データセンター増設、起業家のAIアクセス拡大、サンドボックス制度等について説明。現政権のAI推進姿勢を発信した。
とりわけ産業セクターごとのAI導入・実装が競争のカギだとして、会合参加者に積極的な推進を呼びかけた。
Google AI Futures Fundのジョン・シルバー共同創業者は、同社のAI基盤モデルを事業に活用する企業パートナーを探している最中だと強調した。
■ サンフランシスコ・シリコンバレーの熱気
同会合には、サンフランシスコのダニエル・ルーリー市長も登壇。市に観光客やビジネスが戻り、活性化している現状を紹介したうえで、市政府は残る課題に積極的に取り組み、企業の事業活動・投資を歓迎すると述べた。
今回の視察期間中、スタンフォード大学で、グローバル会合シリーズ「Imagination in Action」によるAIに関する産学連携の会合が開催された。
テック企業やAI研究者らがAI活用加速・AI革命のビジョンを熱く語った。日本のスタートアップ向け拠点であるパロアルトのジャパン・イノベーション・キャンパス(JIC)では、防衛テックや量子に関する会合が開催され、入居スタートアップや大企業等が活発に意見交換した。
投資対象・成長分野に関する議論が飛び交い、スタートアップ・イノベーションに関する同地域のすさまじい熱量を感じた視察となった。
【米国事務所】
