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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年12月11日 No.3709 サステナビリティ情報を含む開示制度 最新動向 -金融・資本市場委員会企業会計部会/サステナビリティ情報開示TF

小長谷氏

経団連は11月5日、金融庁企画市場局の小長谷章人企業開示課長を招き、金融・資本市場委員会企業会計部会(佐々木啓吾部会長)と同サステナビリティ情報開示タスクフォースの委員らを対象とした説明会を東京・大手町の経団連会館で開催した。

「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」および「ディスクロージャーワーキング・グループ」の金融審議会における議論を踏まえた、サステナビリティ情報の開示・保証等を含む開示制度に係る足元の動向および今後の見通しについて、小長谷氏から説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(以下、WG)

2025年7月に「中間論点整理」を公表して以降、しばらく開催されていなかったWGを10月に再開し、次の3点を議論した。

1.「中間論点整理」で25年中をめどに結論を出すとされた2項目

該当する2項目のうち「時価総額5000億円以上1兆円未満のプライム市場上場企業のSSBJ基準(注)適用開始時期」は、当初のロードマップの提案どおり「29年3月期」とする方向で整理した。

「有価証券報告書の提出期限の延長」は、WGでは「実施しない」案を示したものの、寄せられたさまざまな意見を踏まえて金融庁で再検討している。

2.SSBJ基準の適用義務付け等に関する制度的対応

SSBJ基準を告示指定し、近日中に公表予定の内閣府令等の改正案では、時価総額1兆円以上のプライム市場上場企業を対象にSSBJ基準の適用を義務付け、適用開始時期は「27年3月期」を初年度として時価総額の規模に応じて段階的に定める方向で検討している。

適用対象企業の判断基準は、5年平均時価総額を基礎とし、さまざまなケースでも的確に対応できるよう詳細部分は今後検討していく。

3.サステナビリティ保証業務の全体像

サステナビリティ保証は、国際基準(保証基準ISSA5000、品質管理基準ISQM1、倫理・独立性基準IESSA)と整合性が確保された基準に準拠して実施するものとし、こうした保証を実施できるものを保証の担い手、すなわち保証業務実施者と整理した。

保証業務実施者は登録制(監査法人、監査法人以外のいずれも要件を満たせば登録可能)とし、登録業者への検査・監督は金融庁が行う方向で議論している。

■ ディスクロージャーワーキング・グループ(以下、DWG)

「スタートアップ等の資金調達ニーズの高まり、非財務情報の開示の拡充等、情報開示を巡る環境変化を踏まえ、投資判断に資する企業情報の開示のあり方やその実現に向けた環境整備について幅広く検討を行うこと」を目的に、25年8月にDWGを立ち上げた。

これまでDWGでは、「虚偽記載等に対する責任のあり方(セーフハーバー・ルール等)」や「有価証券届出書の提出免除基準」などについて議論している。

このうちセーフハーバー・ルールの内容および適用要件については「一定の要件の下で合理性のある開示がなされていれば、不正な記載とはみなされない」とする案を軸に検討を進めている。

より具体的なイメージとして「非財務情報のうち将来情報等については、その合理性が確保されていると認められる場合には、金融商品取引法上の民事責任の規定を適用しない」という考え方も示した。サステナビリティ情報を含む企業側の積極的な開示を促すためにもセーフハーバー・ルールに係る制度設計は重要であり、関係者間で十分かつ丁寧に議論しつつ、詳細部分を詰めていく。

DWGは今後、年内に報告書をまとめ、26年以降に「有価証券報告書の記載事項の整理」についての議論を開始する予定だ。

■ 意見交換

企業側から、有価証券報告書の提出期限の延長、排出量計測指標の見直しに関するGHG(温室効果ガス)プロトコルの昨今の動向が国内制度化の議論に与える影響、法定開示書類に国際基準であるISSB基準に準拠している旨を記載することへの考え方――などについて質問やコメントがあった。

(注)日本国内におけるサステナビリティ情報開示基準

【経済基盤本部】

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