門間氏
経団連は12月3日、東京・大手町の経団連会館で経済財政委員会(柄澤康喜委員長、鈴木伸弥委員長)を開催した。経済の現状および成長力強化につなげるための経済政策の考え方について、みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストから説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 世界経済と日本経済の現状
世界経済は、地政学リスクの高まりや供給制約を背景に成長力が低下してきている。各国の拡張的な財政政策も相まってインフレ圧力が強まり、これに対応して欧米等で利上げが進んだ結果、為替市場では円安が進行してきた。
日本では、円安の影響による輸入物価の上昇を経由して、世界のインフレを輸入する形になった。このインフレに対処するための利上げによって、「金利のある世界」への移行が進んでいる。
こうした環境下でも、日本経済はこれまで設備投資に支えられ緩やかな成長を続けてきた。しかし、世界的な需要の弱さや国際競争の激化により生産・輸出は伸び悩み、供給制約から投資意欲があっても実行が進まないケースも増えている。
家計部門では、物価高を背景に実質賃金が伸びず、消費が弱含んでおり、家計の負担感はリーマンショック期と同等の水準にまで高まっている。物価高によって苦境にあえぐ人々を手当てする政策が求められるだろう。
■ 日本経済と日本企業の状況の乖離
中長期的にみると、日本の経済成長率はバブル崩壊以降低水準で推移している一方、日本企業の株価は改善が続いており、両者の間に乖離が生じている。
日本企業は内部留保(純資産)を積み増してリスクを取っていないと指摘されることもあるが、資産側をみると海外事業への投資を拡大しており、成長機会の大きい海外で積極的にリスクテイクしていることが分かる。こうした取り組みによる収益拡大が株価上昇の背景だ。
一方で、高齢化などにより成長機会に乏しい国内では事業再編やコスト削減を行ってきた。その過程で中小企業や労働者の負担が大きくなり、日本経済の停滞にもつながっている。
■ 求められる企業行動と経済財政政策の考え方
企業の活力を国内へ呼び戻すためには、国内市場の成長期待を高め、実質賃金の上昇、イノベーションや事業モデルの変革、マクロ経済の生産性の向上から成る「実質賃金と生産性の好循環」を実現しなければならない。
民間企業は政府の政策推進から生まれる国内でのビジネスチャンスを取りに行き、成長する海外市場の取り込みと併せて、稼ぐ力の増大に徹するべきだ。
「実質賃金と生産性の好循環」の前提となる、国内市場の成長期待を形成するうえでの必勝法は存在せず、国全体として本気で取り組むしかない。
そのためには、国民的な社会課題(例えば経済安全保障、脱炭素化など)から発想した大きなビジョンを示すことが重要だ。そのうえで、政府は“本気度”を示すだけの財政支出とその財源手当てを行うことが不可欠だ。
【経済政策本部】
