長澤委員長
経団連(筒井義信会長)は1月20日、春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンスを示す2026年版「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)をまとめ、長澤仁志同委員長が記者会見を行った。
冒頭で長澤委員長は、23年を「起点」として24年に「加速」し、25年に「定着」し始めた賃金引き上げの力強いモメンタム(勢い)について、26年の春季労使交渉で、経団連はその「さらなる定着」を図るという強い思いをもって取り組んでいくとの決意を表明した。
そのうえで、「さらなる定着」の実現には生産性の改善・向上による安定的な賃金引き上げ原資の確保が不可欠だと強調した。
加えて、「賃金は上がっていくもの」という機運の醸成と定着とともに、そのために必要な「適正な価格転嫁と販売価格アップの受け入れ」という二つの考え方の社会的規範化に向けて「さまざまな形で企業や働き手、消費者へ還元されるとの認識を広く共有して浸透させていくことが重要」と述べた。
最後に、賃金引き上げの力強いモメンタムの「さらなる定着」の実現に向けて「できるだけ多くの機会を捉え、26年版経労委報告の周知活動を展開していきたい」と語った。
同報告の概要は次のとおり。
Ⅰ.賃金引き上げの力強いモメンタム「さらなる定着」が必要な理由
わが国は「明らかにデフレではない」状況にあるが、デフレマインドは完全には払拭されていない。「資源を持たない島国」「人口減少」の二つの供給制約があるなかで「コストプッシュ型インフレ」に直面している。
今後、新たな価値を創造する「高付加価値創出型経済」の実現を図り、「デマンドプル型インフレ」へ移行する必要がある。企業には、「国内投資」の拡大、生産性の改善・向上等、賃金引き上げの力強いモメンタムのさらなる定着を通じた「働き手への公正・公平な分配」が肝要だ。
賃金引き上げの力強いモメンタムの「さらなる定着」を通じた名目賃金の上昇の継続と2%程度の適度な物価上昇の実現による実質賃金の安定的なプラス化が社会的に求められている。
Ⅱ.賃金引き上げの力強いモメンタム「さらなる定着」に向けた基本的な考え方
「付加価値の最大化」に注力しながら「労働投入の効率化」を図る「働き方改革」の深化を通じて労働生産性を改善・向上させ、賃金引き上げ原資を安定的に確保することが不可欠だ。
わが国全体の生産性向上には、成長産業・分野等への「労働移動の積極的な推進」が必要。
「構造的な賃金引き上げ」の実現には、「賃金は上がっていくもの」との考え方とともに、そのために必要な「適正な価格転嫁と販売価格アップの受け入れ」が社会的規範として浸透することが重要だ。
26年の春季労使交渉・協議では、経団連・企業の社会的責務として賃金引き上げのさらなる定着に取り組み、「分厚い中間層」の形成と「構造的な賃金引き上げ」の実現に貢献していく。各企業には、「賃金・処遇決定の大原則」にのっとり、「人への投資」と位置付けた積極的な検討と着実な実行が望まれる。
賃金引き上げの成果を個人消費の喚起・増大に結び付けるため、政府に対し、税・財政・社会保障の一体改革による持続可能性の確保と負担のあり方を含めた具体的な検討・実行の早期実現を求める。
Ⅲ.賃金引き上げの力強いモメンタム「さらなる定着」の具体策
多様な方法による賃金引き上げ(月例賃金引き上げ、諸手当、賞与一時金、最低賃金関連)のうち、月例賃金引き上げについては、ベースアップ実施の検討が賃金交渉のスタンダードであり、重点配分を基本に据えて自社にとって最適な方法を見いだす必要がある。
地域経済を支える中小企業の構造的な賃金引き上げには、原資を安定的に確保し、賃金引き上げの持続可能性を高めることが必要。中小企業自身による生産性の改善・向上に加え、サプライチェーン全体を通じた適正な価格転嫁の推進や政府・地方自治体等による取り組み、社会全体における環境整備が不可欠だ。
イノベーション創出と生産性の改善・向上には、賃金引き上げとともに「人への投資」の両輪である「総合的な処遇改善」を通じて、働き手の意欲と能力を最大限に引き出す職場環境の整備(制度面、設備面)と、自社の事業方針・計画の遂行を担う人材育成・能力開発(制度面、経済面)が必要だ。
【労働政策本部】
