上野大臣(右)と筒井会長
経団連は1月19日、東京・大手町の経団連会館で上野賢一郎厚生労働大臣をはじめとする厚労省幹部との懇談会を開催した。経団連からは筒井義信会長をはじめ副会長、審議員会副議長、関係委員長ら17人が出席した。
冒頭で筒井会長は、柔軟で自律的な働き方の実現のため、時間外労働の上限規制を堅持しつつ、働き手の健康確保を大前提に、特に裁量労働制の拡充が欠かせないと発言。賃金引き上げの力強いモメンタム(勢い)の「さらなる定着」に向けて主体的に取り組み、「成長と分配の好循環」の実現に貢献する決意を示すとともに、原資の安定的な確保のためにも労働移動の積極的な推進が必要と指摘した。
続いてあいさつした上野大臣は、わが国の経済成長を実現するため、生産性の高い分野への円滑な労働移動や働き方改革を含めた労働市場改革を進めることは極めて重要と述べた。
その後の懇談の概要は次のとおり。
■ 裁量労働制等の労働時間法制
経団連側は、裁量労働制が労働者の働きがいと生産性の向上に資する制度であることを、裁量労働制の導入企業の労働者のポジティブな声も交えながら説明した。
現在の対象業務は限定的であり、会員企業からは、企画業務型の裁量労働制を中心に、対象業務以外の業務が一部に含まれていても適用が認められるよう見直すべきとの意見があることや、ホワイトカラー労働者約1000人に行った経団連のアンケートで約3割が裁量労働制の適用を希望していることも紹介した。
過半数労働組合との十分な協議と健康確保を前提に、一定の範囲での対象業務の拡大に向けて、政府での議論の前進を強く求めた。
上野大臣は、裁量労働制の適用拡大に対する企業ニーズがあることを改めて認識したと応じた。そのうえで、「長時間労働を助長しかねない」との声もあるなか、濫用防止や代替措置も含めた議論が重要との認識を示した。
労働時間規制については、日本成長戦略会議のもとに設置された「労働市場改革分科会」で必要な検討を行っていく意向を表明した。
■ 労働移動の積極的な推進、賃金引き上げに向けた環境整備
経団連側は、2026年春季労使交渉・協議で、ベースアップ実施の検討を「賃金交渉のスタンダード」と位置付ける方針であることを紹介。そのうえで、賃金引き上げに資する支援策を検討し、実施するなどの環境整備を要望した。
労働移動を積極的に推進するために、それに適したセーフティーネットへの移行が必要とも指摘。雇用保険の基本手当の所定給付日数見直しや再就職手当の給付率改定など、逆インセンティブ解消に向け、法改正議論の加速を求めた。
これに対し上野大臣は、継続的な賃金引き上げに向けて中小企業支援を含めた環境整備を進めるとしたうえで、価格転嫁の徹底を経団連側に要請した。
リスキリングを含む人材投資が労働移動の推進につながると述べ、雇用保険制度も不断に見直していく意向を示した。
■ 税・財政・社会保障の一体改革
経団連側は、経団連が重要政策課題に掲げている税・財政・社会保障の一体改革の実現の観点から、首相が設置を表明している国民会議での今後の議論に期待を示すとともに、経団連も積極的に関与するとの意向を述べた。
一体改革や社会保障改革を進めるための基盤としての「見える化」の重要性や、医療・介護分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの強化、介護人材の確保に向けた取り組みの必要性なども指摘した。
これを受けて上野大臣は、現役世代の負担の軽減も含め、社会保障制度が、高齢化し、人口が減少する社会のなかで持続可能であり続けるために不断の改革が必要と述べた。
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その他、女性特有の健康課題に関するマネジメント層も含めたリテラシー向上などについて、活発に意見が交わされた。
筒井会長は、これらの分野での官民連携が必要と指摘し、議論を継続することで一致した。
【労働法制本部】
