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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年2月19日 No.3718 第2次トランプ政権の州兵運用 -経団連総合政策研究所 解説シリーズ/トランプ大統領の米国はどこへ行くのか<5>経団連総研研究委員(駒澤大学法学部准教授) 梅川葉菜

第2次トランプ政権の特徴として、州兵(National Guard)の国内への積極的な投入が指摘できる。しかしながら、そもそも米国の州兵制度自体が独特であることが、トランプ政権の州兵の運用を理解することを困難にしている。

そこで本稿では、州兵制度について整理したのち、2025年末までのトランプ政権の州兵の国内運用の特徴について概観する。

州兵は、地域共同体に根差す民兵(militia)の伝統を起源とする地域の部隊である一方、合衆国軍予備役として非常事態への対応や海外派兵も担う軍事組織でもある。

ところが、第2次トランプ政権の州兵の国内投入は、派遣先の民主党州知事・市長や市民の反発を招くものでもあり、非常事態ではない局面での投入でもあった。州兵の投入の一部は訴訟にまで発展し、全てが政権の期待どおりには推移しなかった。

あまり知られていないことだが、こうした運用の土台となっている一因として、州兵が複数の法的身分を取り得る仕組みが指摘できる。

州兵が動員される際の法的身分の根拠法は、州法、合衆国法典第32編、合衆国法典第10編の三つのいずれかに大別され、指揮権・費用負担・州の同意の要否が異なる。州法に基づく運用の場合は連邦が関与する余地はなく、州知事指揮・州費用負担の運用となる。

第32編の場合、州の同意のもと、連邦政府の定めた方針・任務計画に沿うことを前提としつつも、州知事指揮・連邦費用負担の運用となる。災害や公衆衛生危機、国土安全保障、麻薬取り締まり、空港保安、国境支援などが想定される。

第10編の場合、州の同意は必要とせず、大統領指揮・連邦費用負担の運用となる。海外派兵や国家安全保障上の危機対応に加え、侵略や反乱、連邦法の執行が不能になったなどの国内危機事態への対処などが想定される。

なお、ワシントンDC州兵は常に第32編か第10編に基づく運用であり、いずれにおいても大統領指揮下にあり、ワシントンDC市長の同意は不要だ。

従来の国内出動においては、任務の性格が州兵運用の身分選択を強く誘導してきた。例えば、大規模な暴動対応では、秩序回復・連邦法執行の確保を目的に、法執行活動を含む危機対応に当たる必要性から第10編が選ばれやすかった。

他方で、空港保安、災害、国境支援、公衆衛生対応などでは、連邦と州の緊密な連携を要するため、第32編が用いられやすかった。

ところが第2次トランプ政権では、同一の目的(連邦機能保全・連邦法執行の確保)を掲げながらも、投入先の党派性に沿って第10編と第32編を使い分けるという、従来とは異なる運用がみられるようになった。

民主党州の大都市に対しては、州の不同意でも展開し得る第10編が用いられた。

トランプ政権は、連邦機能保全と連邦法執行の実現を名目として、民主党州知事・市長の反発を受けながら、カリフォルニア州ロサンゼルス、オレゴン州ポートランド、イリノイ州シカゴなどの市街地での展開を試みた。いずれも州や市が提訴し、ポートランドとシカゴについては州兵の展開前に差し止められた。

共和党州に対しては、移民・関税執行局の業務を支援して連邦機能を保全するという名目で、少なくとも17の州の同意のもと、第32編が用いられた。任務は、被収容者の事務管理、輸送・兵站、収容施設における入退所事務や文書処理等の非・法執行支援であり、州兵の任務は事務・後方支援に限定された。

ワシントンDCに対しては、連邦機能保全と連邦法の執行の確保を名目として、民主党市長の反発を受けながらも、第32編に基づく動員が行われた。

ワシントンDC州兵はもともと大統領指揮下にあるが、他州の州兵の越境投入には各州知事の同意が必要であったところ、複数の共和党州知事の同意に基づいて州兵が派遣された。ここでも市街地での展開が行われた。

このように、第2次トランプ政権では、同一の目的(連邦機能保全)を掲げながら、州兵の法的身分の使い分けが地理的党派性に沿って体系的に運用された点に特徴がある。

時事解説「トランプ大統領の米国はどこへ行くのか」〈第5回〉
https://www.keidanren.or.jp/pri/theme/current/index.html

【経団連総研】

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