久保研究主幹
経団連総合政策研究所(筒井義信会長)の米国研究プロジェクト(研究主幹=久保文明防衛大学校長)は2月4日、シンポジウム「第2次トランプ政権と世界」をオンラインで開催した。
冒頭で前嶋和弘研究副主幹(上智大学総合グローバル学部教授)が米国最新情勢に触れた後、梅川健研究委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、皇學館大学現代日本社会学部の村上政俊准教授がそれぞれ講演した。
後半は久保研究主幹がモデレーターとなり、4人でパネル討議を行った。概要は次のとおり。
■ はじめに(前嶋研究副主幹)
ベネズエラは米国にとって薬物流入などの問題がある裏庭で、中国やロシアとも関係が近い。それならばと、2025年9月にはすでにミサイルと空母打撃群が準備されていた。同様にキューバには経済封鎖をしようとしており、コロンビア、メキシコへのドミノ効果も想定される。
ベネズエラ侵攻は明らかな国際法違反であり、日本や欧州が中国やロシアに国際法を守れとは言いにくくなった。
トランプ政権が西半球に焦点を当てているのは自身の支持層にとって分かりやすいからだ。
福音派はベネズエラ侵攻を「サタンの国をやっつけた」と見ている。米CBSと英YouGovの調査によれば、ベネズエラ侵攻に賛成するとの回答は48%だったが、共和党支持者に限れば賛成は89%、民主党支持者の賛成は13%と大きな分断が見える。
■ 第2次トランプ政権における緊急権と関税政策(梅川研究委員)
大統領令は法律が定めている事項を行政組織に執行させる命令だ。第2次トランプ政権は第1次より多くの大統領令を使い、しかも内容が過激になっている。
大統領令は基本的に「法律に書かれているこういう権限を使って命令を下す」と書かれるが、第2次政権では「緊急権に基づいて」という書きぶりが目立つ。緊急権とは、国家緊急事態宣言を大統領が発することによって使用可能になる特殊な権限で、現在約137件の連邦法に規定されている。
1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)の「輸入を規制できる」という文言を、第2次トランプ政権は「関税率を変更できる」と解釈して相互関税をかけている。
裁判所は、緊急事態の有無の判断は大統領にゆだね、他方で法律の解釈が正しいかどうかに踏み込む可能性がある。裁判官は文言主義という、実際に法律に書かれている言葉を重視するため、政権に厳しい判決が出る可能性がある。
ただ、法律違反とされても、例えば通商法301条や通商拡大法232条を使うことで、関税率を維持するかもしれない。
■ トランプ2.0の台湾政策(村上氏)
米国の国家安全保障戦略には「ルールに基づいた国際秩序への中国の加入が促進されるという期待は、現実とはならなかった」とある。台湾、第一列島線、南シナ海に関し、中国との名指しはないものの、中国が脅威との前提で記述されている。
米国にとって台湾政策の最重要事項は武器売却だ。第2次トランプ政権は、2025年12月に過去最大の111億ドルで、ハイマースやジャベリンを売却することを決めた。これらはウクライナでも有用性が示されている。
他にも台湾の呉釗燮国家安全会議秘書長や林佳竜外交部長が頻繁に訪米するなど、閣僚以下のレベルで緊密な意思疎通が図られている。25年は、5月のテキサス州での半導体関連、9月のニューヨークの国連総会での訪米があった。12月のワシントン訪問はおそらく頼清徳総統が立ち寄ることを見据えた前さばきだろう。
第2次トランプ政権は表面的には異なるベクトルの発信があるものの、少なくとも軍や議会では、台湾支援を継続するモメンタムを維持している。
■ パネル討議
久保研究主幹は「米国の侵攻後、ベネズエラで内戦になることが心配されたが、安定を維持している。それでも米国でトランプ大統領の支持率は40%前後で上昇していない。支持率が上昇しないのは医療費や家賃を中心とする物価高への不満がうずまいていることが要因」と述べた。
