(図表のクリックで拡大表示)
経団連は3月17日、「わが国ロボット(AI+)戦略のあり方に関する提言」を公表した。米中がヒューマノイドを含む多用途ロボットの開発・実装に向けた大規模投資で先行するなか、日本の強みを生かした戦略の方向性を示した。概要は次のとおり。
■ 趣旨と背景
人口減少および少子高齢化に伴う構造的な人手不足や、老朽化インフラの維持管理等の社会課題に直面するなか、AIを搭載したロボット(AI+)には社会課題解決と産業競争力強化の双方に資する潜在力がある。
AI分野で高度な基盤モデル、膨大な学習データ、圧倒的な資金等を背景に米中両国が先行するなか、グローバル競争の軸として、実社会における信頼性や実装力の重要性が増している。
技術的ブレークスルーと国際競争の激化、国内の人手不足の深刻化が同時に進行する今、わが国は、AIを組み合わせたロボットの社会実装を本格化させる重要な分水嶺にある。
■ 基本的な考え方
わが国は、人の判断や作業が価値を持つ領域では支援や補完を基本としつつ、人手不足や危険で過酷な作業等において、ロボットによる完全代替も視野に入れ、モノづくりやサービス提供が高度化・自動化する社会を目指すべきだ。
ロボット(AI+)の開発・導入・活用に当たっては、現場でロボットを活用する需要者の視点に立った「利用者起点」の徹底も不可欠だ。
センサーや精密制御部品、アクチュエーターといった要素技術は、わが国のロボット産業の競争力の根幹を成す。競争力をさらに引き上げる潜在力を持つのが、(1)高品質への信頼を基盤として蓄積されてきた産業データ(2)ロボットが日常的に稼働するなかで蓄えられた、いわゆる「現場知」――だ。
企業・業界の垣根を越えてデータを連携する基盤として「産業データスペース」の構築は喫緊の課題だ。
■ 政府への要望
ロボット(AI+)の社会実装に際しては、民間の挑戦を後押しする環境を整備すべく、産学官の連携のもと、規制・制度改革、国際標準化、人材育成等を一体的かつ戦略的に推進することが求められる。
1.ルール形成~規制・制度改革および国際標準化の推進
ネガティブリスト方式を基本とした「ガードレール型」ルールの整備や、高品質・高信頼を軸とした国際標準化の戦略的な推進によって、競争力強化とグローバル市場獲得につなげることが極めて重要。
2.人材育成~ロボット(AI+)エコシステムの構築
開発人材に加え、技術・現場・経営を横断する「統合型人材」や、運用・保守・改善を担う現場人材の育成が重要。持続的なエコシステムを構築すべく、政府がイニシアティブを取ることが戦略的に重要。
3.フェーズ別に見た勝ち筋
時間軸に沿って、現実的かつ戦略的な社会実装を進めていくことが必要。
- 短期=産業用ロボット(AI+)に資源を重点投入、「信頼の基盤」を蓄積
- 中期=「産業データスペース」を本格運用、生活・サービス分野に展開
- 長期=「現場力×安全×品質」という日本の強みをグローバルに展開、米中に伍する「第三極」に
◇◇◇
2026年夏に予定される「日本成長戦略」の策定に向け、AI・半導体を含む17の戦略分野で、大胆な投資促進や人材育成、国際標準化等の総合的支援が検討されていることは千載一遇の機会だ。
経団連は「投資牽引型経済」への転換に向けて挑戦と実装を積み重ね、産学官の結節点として先導的な役割を果たす決意だ。
【産業政策本部】
