竹野氏
髙島氏
経団連は4月7日、同一労働同一賃金の見直しに関する説明会をオンラインで開催し、約460人が参加した。
厚生労働省雇用環境・均等局の竹野佑喜有期・短時間労働課長、職業安定局の髙島洋平需給調整事業課長から、同一労働同一賃金に関する新たな措置や同一労働同一賃金ガイドラインの改正内容について説明を聴いた。
中山・男澤法律事務所の高仲幸雄弁護士からは、ガイドラインの改正を踏まえ、企業が待遇の見直しを検討する際の手順や、留意事項等の解説を聴いた。
概要は次のとおり。
■ 同一労働同一賃金の見直し(厚労省)
1.施行状況
2020年4月、働き方改革関連法により、同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正するための規定(均等・均衡待遇規定)整備や、待遇に関する労働者への説明義務の強化等が行われた。
厚労省の調査によると、同法施行後、約9割(92.0%)の事業所で、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保の実現に向けた取り組みの実施や検討が行われた。一般労働者の雇用形態間の賃金格差は縮小傾向にあり、短時間労働者の時給や賞与等の額は増加している。
一方で、依然として雇用形態間の賃金格差がみられる。同一労働同一賃金のルールの内容を知っている労働者は3割超(34.2%)にとどまり、待遇差の説明を求めたことがある労働者は8.0%だった。
こうした状況を踏まえ、労働政策審議会の同一労働同一賃金部会では、25年2月から計14回にわたり見直しの議論を重ね、同年12月25日に部会報告をまとめた。報告の内容を踏まえて改正された省令や指針、ガイドラインは、26年10月1日から施行される。
2.主な改正事項
パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正により、労働者を雇い入れる際の労働条件明示事項として「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨が追加された。
指針の改正により、説明の方法については「資料を活用した口頭による説明」または「説明すべき事項を全て記載し、短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料交付」によるものとされた。
指針にはこの他、正社員転換推進措置を講ずる際の意向への配慮や福利厚生施設の利用に関する便宜供与の措置の配慮、雇用管理の改善等に関する情報公表の促進等が措置される。
同一労働同一賃金ガイドラインは、近時の判例等を踏まえ、賞与や退職手当などの各種手当、休暇制度等の待遇について、記載の充実や新規追加が行われた。
無期雇用フルタイム労働者の均衡の考慮に当たっては、ガイドラインの趣旨が考慮されるべき旨等が明示された。
■ 同一労働同一賃金ガイドラインの見直しへの実務対応(高仲氏)
高仲氏
1.実務対応の要点
改正同一労働同一賃金ガイドラインを踏まえ、企業が今後の対応を検討する際には、雇用形態に応じて待遇を一覧表にまとめて整理することが基本となる。その際、就業規則や労働協約、個別の労働条件通知書等にある「規定」だけでなく、「実態」としての職務内容や配置の変更範囲等も確認することが必要だ。
とりわけ待遇差の理由については、判例やガイドラインにある内容だけでなく、自社での待遇差の内容や各待遇の趣旨に基づいた整理が必要だ。
待遇差の検討に当たっては、特定の正社員との間だけでなく、「複数の雇用形態」と比較することも重要だ。
例えば、65歳までの定年後再雇用社員の待遇は、定年退職前(正社員時)の本人の待遇だけでなく、65歳後も契約更新された場合の待遇や定年後再雇用ではない60歳以上の非正規社員の待遇とも比較・検討することが適切だ。
各待遇の比較は、関連する他の待遇にも着目する必要がある。例えば、業務に関連する手当は基本給との関連性、勤務日・勤務時間に関連する手当は勤務形態(シフト)との関連性を確認する必要がある。
2.待遇見直し手順例
基本給や賞与、退職金については、まず非正規社員の制度を確認する。具体的には、基本給の決定基準や変更(昇給・降給)の要素などを整理し、賞与や退職金の有無、類似制度(一時金や慰労金等)の有無を確認する。
次に、非正規社員と正社員の制度を比較(共通点・相違点)したうえ、待遇差の理由を整理して、待遇の見直しや理由の明確化を行う。
各種手当や休暇制度については、正社員の待遇内容やその趣旨を確認したうえで、非正規社員の勤務形態や待遇と比較することが適当だ。
待遇の変更に当たっては、現状の規定を正確に把握したうえで、変更のタイミング(契約更新や就業規則変更の時期)、他の待遇への波及効果(手当変更による割増賃金への影響等)、就業規則の不利益変更(労働契約法9条、10条)に留意する必要がある。
【労働法制本部】
