会員の皆さま方には、平素より経団連の活動に多大なご支援とご協力をいただき、厚くお礼を申し上げる。
私が経団連会長に就任してから約1年となる。2025年のこの場で、私は「この混迷の時代に、数々の難題に真正面から立ち向かい、打開策を見いだすことこそ、経団連に課された使命である」と申し上げた。就任2年目を迎える今、その使命の重みをもう一段強く感じているところである。
こうした認識の背景には、自由貿易体制の揺らぎや、深刻化する分断と対立などによって、混迷を深める国際情勢がある。そして、そのなかで、わが国が地政学面や通商面でのリスクにさらされているという現実がある。
また国内においても、持続可能な社会保障制度の構築といった待ったなしの課題が山積している。こうした課題に対して、これも就任時に掲げた「将来世代への責任を果たす」観点から、適切な解決策を迅速に提示し、実現していくことが、これまで以上に経団連に求められていると、日々痛感する次第である。
25年10月に国民の厚い信任を得て誕生した高市政権は、「強い経済」の確立に向け、積極的に政策を推進している。経団連は、官民連携を一層強化しつつ、さまざまな将来リスクに対して強靭な経済社会を構築するとともに、イノベーションの創出によって力強い経済成長をつくり出す。そのためには、われわれ企業・経営者がマインドセットを転換し、国内での設備投資、研究開発投資、賃金引き上げを含む人的投資を積極果敢に実行し、潜在成長力を着実に引き上げていくことが不可欠である。すなわち「投資牽引型経済」を確立し、日本経済の自律的基盤を強化していくことで「成長と分配の好循環」を実現する。
26年は「投資牽引型経済」の実行フェーズと位置付けた。そして次の七つの主要政策分野における取り組みを強力に推進する。
第一は、絶え間ないイノベーションが創出される「科学技術立国」の実現である。5月に公表した「科学技術立国戦略」では、40年に官民研究開発投資を対GDP比5%、年間投資額にして50兆円に拡大すべきと提言した。この提言を高市早苗内閣総理大臣に直接お渡ししたところ、研究機器などの基盤強化を通じた研究費の実質的倍増を図る等の力強いお言葉をいただいた。
26年は、この提言の具体化に向けた活動を進めるとともに、スタートアップ振興やAIに着目した取り組みを進める。
第二は、税・財政・社会保障の一体改革の推進である。4月に「税・財政・社会保障一体改革に関する基本的考え方」を公表した。かねて経団連が提唱していた「国民会議」が設置され、経団連もこの議論に参画している。引き続き、全世代型社会保障制度の構築や給付と負担のあり方の見直しを含めて、公正・公平で持続可能な中福祉・中負担の制度の構築を政府に働きかける。
第三は、人的投資の拡充・促進に向けた労働改革である。1月に公表した26年版「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)では、ベースアップ実施の検討を交渉のスタンダードと位置付け、各企業に積極的な検討と着実な実行を呼びかけてきた。その結果、26年は大手企業で前年比1万9964円増、率にして5.46%増の賃金引き上げが実現した。賃金引き上げの力強いモメンタムの「さらなる定着」の確かな手応えを感じている。中東情勢の緊迫化が続き、先行きは不透明ななかにあっても、賃金引き上げ、人的投資を起点とした「成長と分配の好循環」の実現を目指す。あわせて、裁量労働制の拡充を働きかけ、広く労働改革の推進につなげる。
第四は、わが国経済社会の強靭性を高めるための地域経済社会の活性化である。政府の「戦略産業クラスター計画」とも連携させながら、経団連の提唱する「新たな道州圏域構想」のコンセプトの認知度向上と社会への具体的浸透を目指す。
第五は、「貿易・投資立国」としての自由で開かれた国際秩序の維持・強化と経済安全保障への配慮である。ルールに基づく自由で公正な貿易投資環境とともに同志国との連携による経済安全保障の確保が重要である。25年10月には、WTO改革に向けた提言を取りまとめた。そして、スイス・ジュネーブと日本で、世界貿易機関(WTO)のンゴジ・オコンジョイウェアラ事務局長らと意見交換を行った。あわせて同年12月に、提言「グローバルサウスとの連携強化に向けて」を公表した。特定の国・地域に過度に依存しない強靭な経済構造の確立に向けて、民間経済外交を積極的に展開する。
第六は、経済活動の基盤となるエネルギーの安価で安定的な供給確保とグリーントランスフォーメーション(GX)の推進である。「第7次エネルギー基本計画」等の具体化と着実な実現が重要である。なかでも脱炭素電源の最大限の活用は、今般の中東情勢を踏まえると、その重要性は格段に高まっており、特に原子力発電所の再稼働の加速が求められる。25年に訪問した東京電力柏崎刈羽原子力発電所が26年4月に営業運転に至ったことは、大変心強い。加えて、リプレース・新増設の推進等にも早急に着手すべきである。
第七は、持続的な成長とマルチステークホルダーへの還元を志向したコーポレートガバナンス改革である。25年12月に、提言「持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方」を取りまとめた。企業の自律的な経営判断を後押しするための環境整備や、中長期的な企業価値向上に向けた投資家との建設的な対話の促進等に取り組む。
これら七つの主要政策分野に加えて、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)の成功に向け、経団連としても政府、地方自治体、地元経済界等との連携のもとで開催準備に協力する。
本年、経団連は80周年の節目を迎える。終戦直後、1946年8月に発足した経団連は日本経済の再建・復興を果たしながら、自由主義経済の維持・発展に寄与してきた。この機会に設立の原点に立ち返って、経済界の公正な意見を基に政策を立案し、その実現に邁進する。そして、日本経済の持続的発展を通じて、国民一人ひとりが物心両面の豊かさを享受できる社会の実現に皆さまと共に取り組みたい。
最後に、「投資牽引型経済」確立の立役者は、われわれ企業に他ならない。設備投資、研究開発投資、人的投資を一体的に推進するフロントランナーとして、共に積極果敢に未来を切り拓いていきたい。
会員の皆さま方の変わらぬご理解とご支援を心よりお願い申し上げる。
