経団連は4月20日、東京・大手町の経団連会館で、温室効果ガス(GHG)の算定・報告の国際的な基準であるGHGプロトコル(注)改定に関する打ち合わせ会を開催した。
GHGプロトコルは、RE100、SBTiといった国際イニシアチブに加え、わが国のSSBJ基準といったサステナビリティ開示基準でも参照されており、現在改定の検討が進んでいる。
みずほ総合研究所(みずほ銀行内の組織)サステナビリティコンサルティング部サステナビリティ戦略チームの角潤幸マネジャーからプロトコルの概要と改定の動向について、日本鉄鋼連盟技術・環境部の川又広実地球環境グループリーダーからAMI(Actions and Market Instruments)スタンダードについて、日揮ホールディングスの山崎亜也シニアアドバイザーから改定に係る懸念事項と対策について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
左から角氏、川又氏、山崎氏
■ GHGプロトコルの概要と改定の動向(角氏)
プロトコルでは、コーポレートスタンダード、スコープ2ガイダンス、スコープ3スタンダードの3文書が、組織の排出量算定方法を規定している。民間団体が作成した自主ルールであるが、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の世界で活用され続けたことで、現在ではデファクトスタンダード化した。
現行の3文書は、2004年から15年にかけて作成されたものだ。以降、企業の排出量算定を巡る状況が変化したほか、持続可能な航空燃料(SAF)のように新たな算定手法を必要とする燃料や材料が登場したことを受け、各文書の改定が必要とされている。
27年から28年にかけて、各文書の改定、新たなAMIスタンダードの策定が予定されている。すでに25年10月から26年1月にかけて、スコープ2ガイダンス改定に関する初回の意見募集が行われた。26年3月末から5月末には、AMIスタンダードに関する意見募集が実施されている。今後も各文書の改定に関する意見募集が予定されている。
スコープ2におけるマーケット基準の厳格化等、現在示されている改定案が採用された場合、企業への影響は非常に大きい。意見募集に際しては、公表されているプロトコルの意思決定基準を参照しながら、効果的に意見を提出することが重要だ。
■ AMIスタンダード(川又氏)
24年以降、3文書改定に加え、AMIスタンダードの新規開発が進められており、検討のために組成されたテクニカルワーキンググループに参加している。
現行のプロトコルでは、スコープ2について再生可能エネルギー証書等のマーケット手法に関する規定が存在する。一方でスコープ1および3には、同様の規定が存在しない。クレジットや削減貢献量を適切に報告するための枠組みも存在しない。
こうした現状を踏まえ、26年3月に公表されたAMIホワイトペーパーでは、物理的インベントリを基礎としつつマーケット手法や削減貢献量等を補完的に報告する、マルチステートメント型の報告構造が提案された。
プロトコルに、GXスチール等のコモディティ証書や各種クレジット・削減貢献量等が新たに位置付けられることは、日本企業にとって望ましいと考えられる。国外ではとりわけ削減貢献量そのものに関する認知度が低いため、提案内容に賛成の企業には積極的な意見提出を推奨する。
■ 懸念事項と対策(山崎氏)
個人の認識と見解だが、スコープ2ガイダンス改定案は、同時同量等の要求が非化石証書の利便性や環境価値の提供に悪影響を与え、わが国のグリーントランスフォーメーション(GX)政策における各種ツール活用や、企業の排出削減の取り組みを阻害する可能性がある。
スコープ3スタンダードにも、閾値への定量指標導入、算定対象の大幅拡大等、費用対効果を度外視して精緻化・厳格化が追求されている印象が否めない。
AMIホワイトペーパーで提案されているマルチステートメント型の報告構造の導入により、GXスチール、クリーンガス、炭素クレジット、削減貢献等がGHGプロトコルの枠組みに取り入れられ、国際的な認知につながるとすれば、歓迎すべきことだ。
今後のGHGプロトコル改定を受け、SBTiをはじめ関連プログラムの対応次第で生じる影響も注視する必要がある。
今後、改定内容の動向や影響を注視し、意見募集へ積極的に対応することはもとより、GHGプロトコルの母体の一つである持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)や、GHGプロトコルとの間で算定基準等の統合作業が始まっている国際標準化機構(ISO)を通じた働きかけが重要だ。
保証対象の不確実性や拡大に関する監査法人の動向等も勘案する必要がある。
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)やサステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、法定開示の算定基準としてGHGプロトコルを参照している。今後、プロトコルの改定内容が不適切なものとなる場合に備え、参照のあり方を今から検討しておく必要があるのではないか。
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その後の意見交換では、改定による各業界・企業への影響や、賛成意見を含め各社・団体からの意見提出の重要性等について議論が交わされた。
(注)WBCSDと世界資源研究所(WRI)が中心となり設立されたGHGプロトコルイニシアチブが策定する、GHG排出量の算定・報告の基準
【環境エネルギー本部】
