川島研究主幹
経団連総合政策研究所(筒井義信会長)の中国情勢研究プロジェクト(研究主幹=川島真東京大学大学院総合文化研究科教授)は7月13日、東京・大手町の経団連会館で、講演会「米中関係の現在と東アジアの国際関係~台湾問題と日中関係への指針」を開催し、140人が参加した。
川島研究主幹が講演した後、参加者と意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。
■ 党大会人事に向けて
中国は2027年秋の共産党大会に向け、「人事の季節」を迎えている。次代の指導者候補となる1970年代生まれの世代を中央政治局に引き上げる必要があり、中国にとって決して「失敗できない」、極めて特殊な時期にある。
習近平政権はこれまで、地方勤務時代の部下を登用してきた。今回は「部下の部下」の世代に対象が広がる。
習政権は胡錦濤政権期の反省から、党の指導力回復を重視し、国家よりも党に権限を集中させている。「国家の安全」を最優先に掲げるが、その「安全」の解釈権は習氏と党が握る。デジタル技術を駆使した社会の引き締めは、文化大革命以来、最も強い状態にある。
■ 対米関係と台湾問題
中国は、先進国対非先進国という対立軸のなかで、自らをグローバルサウスのリーダーと位置付け、独自の国際秩序を形成しようとしている。中国は2049年に米国に追い付くことを目標に掲げる一方、当面は米国と衝突せず、「穏当」に「管理」する関係を維持していくとみられる。
その安定した関係を壊しかねない最大の火種が台湾問題だ。中国にとって台湾「解放」は悲願である一方、台湾人の85%以上が統一を拒否しており、中国の思惑どおりにはならない。習政権がこの状況をどう評価するか、28年の台湾の政治日程も注視すべきだ。
中国は、軍事的侵攻よりも、台湾の東側への海警局の展開や、海底ケーブルの損傷、サイバー攻撃、事前通告なしの軍事演習など、グレーゾーンを通じた圧力を強めている。
一方、米国の「戦略的曖昧性」やトランプ大統領の言動を背景に、台湾では「疑米論」が高まり、日本への期待が増している。米国が世界の警察としての役割を後退させるなか、日本は台湾やフィリピンなどと連携し、関係を強化していくべき段階に来ている。
■ 日中関係の展望
中国から見た日本は、米国の同盟国であり西側の価値観にコミットする存在であるため、長期的には極めて厳しい関係が続くとみられる。中国国内の保守派を懐柔するために「日本たたき」が利用される側面もあるうえ、AIを用いて台湾や沖縄の分断を図る巧妙な言論工作も行われている。
一方で、在日中国人が過去最多となるなど、新しい日中関係も生まれている。日本はミクロレベルでの新たな交流と、隣国である中国の変化をいち早く捉えられる立場を生かし、「日本のナラティブ」を内外に発信していく必要がある。国際社会と連携しながら、この局面を主導していくことが求められる。
