経団連自然保護協議会(西澤敬二会長)は8月25日、生物多様性・自然資本保全に関する統合的取り組みの促進に向けた懇談会の第2回を、東京・大手町の経団連会館とオンラインのハイブリッド形式で開催した。
今回のテーマは「食料・スマート農業」。
地球環境戦略研究機関(IGES)から、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES)の「ビジネスと生物多様性アセスメント報告書」や、アジア太平洋シナジーレポート(注1)などを踏まえた自然への依存・影響やシナジーの考え方、事例選定の視点について説明を聴いた。
セブン&アイ・ホールディングスの鈴木彩子サステナビリティ推進室オフィサー、IHI航空・宇宙・防衛事業領域宇宙システム事業推進部事業開発グループの山内淑久地球環境計測チーム長は、それぞれの取り組み事例を紹介した。統合的アプローチを推進するうえでの実務上の工夫や課題、事業活動への反映などについて意見交換も行った。
概要は次のとおり。
■ IGES
IPBESの報告書では、あらゆるビジネスが生物多様性に依存するとともに、自然に影響を及ぼしており、こうした依存・影響が企業のリスクと機会につながることが示されている。
これを踏まえると、企業は自然への依存・影響を把握し、それをリスク・機会への対応や経営上の意思決定につなげていくことが重要となる。
気候変動、食料、水などの課題は相互に関連しており、シナジーの最大化とトレードオフの最小化を図る統合的な取り組みが求められる。特にバリューチェーンや地域レベルの課題は企業単独での対応が難しく、自治体、地域社会、金融機関、NPOなどとの連携が不可欠だ。
今回の事例選定では、(1)新規性(2)本業との関連性(マテリアリティ)(3)地域連携(4)汎用性(5)ファイナンス(6)社会変革――の六つの視点を重視した。
■ セブン&アイHD
鈴木氏
当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)・自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言に基づき、気候・自然関連の取り組みを進めている。
TNFD対応では、LEAPアプローチ(注2)を活用し、食を中心とする事業と自然との依存・影響を分析している。2025年にはコーヒー豆とコメについて分析結果を開示し、「気候・自然関連情報報告書(TCFD・TNFD統合開示)」に反映している。
特にコーヒー豆については、気候変動などによる収量および品質の低下が調達コストや販売に及ぼす影響を分析し、生産地支援、再生農業、水素焙煎、地産地消などの対応を進めている。
今後は重要原材料への分析を拡大するとともに、価値創造の観点からのビジネス機会の定量評価や、気候変動と自然関連課題、人権・人的資本を含めた統合的な取り組みを進めていく。
■ IHI
山内氏
当社は、気候変動による豪雨や渇水の激甚化を踏まえ、水資源を流域単位で捉え、衛星データを活用して流域の水資源配分を可視化・効率化する「流域水管理システム」の取り組みを進めている。
農業用水については、水管理システムと配水支援システムを活用し、支線ごとの配水状況を可視化するとともに、経験や勘に依存していた配水管理をデータに基づく管理へ転換することで、水資源の有効利用と管理業務の効率化を図っている。
衛星による大気水蒸気観測やAIを活用した局地気象予測などを組み合わせ、雨量や水蒸気などの情報を把握・予測することで、河川、農業用水、地下水などを含む流域全体の水循環を統合的に管理する「流域総合水管理」の実現も目指している。
こうした技術を通じ、水資源の持続的利用と地域の健全な水循環の実現、ネイチャーポジティブ(NP)への貢献を目指している。
(注1)アジア太平洋地域における気候変動、生物多様性、汚染等の環境課題への統合的な対応と、シナジー(相乗効果)を生み出すための戦略をまとめた報告書
(注2)TNFDが開発した統合的な評価手法。Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)により構成される
【教育・自然保護本部】
