経団連自然保護協議会(西澤敬二会長)は9月16日、生物多様性・自然資本保全に関する統合的取り組みの促進に向けた懇談会の第3回を、東京・大手町の経団連会館とオンラインのハイブリッド形式で開催した。
今回のテーマは「水産・海洋」。
地球環境戦略研究機関(IGES)から、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム(IPBES)の「ビジネスと生物多様性アセスメント報告書」や、ネクサス評価(注)などを踏まえた統合的取り組みの考え方について説明を聴いた。
岡部の後藤新一経営企画室サステナビリティ推進部長ならびに林裕一海洋事業部応用藻類学研究所副所長、ニッスイの西昭彦サステナビリティ推進部長が、それぞれの取り組み事例を紹介した。統合的アプローチを推進するうえでの実務上の工夫や課題、事業活動への反映などについて意見交換も行った。
概要は次のとおり。
■ IGES
企業活動は自然に依存すると同時に自然へ影響を及ぼし、それらが事業上のリスクと機会につながる。
IPBESによるネクサス評価では、生物多様性、水、食料、健康、気候変動の相互関係を捉えることが重要とされる。沿岸・海洋生態系の再生やブルーカーボンの取り組みは、生物多様性と気候変動などの課題に横断的な効果をもたらし得る。
■ 岡部
左から後藤氏、林氏
当社は、魚礁・藻場礁の海洋資材技術と海藻種苗の培養・生産技術を活用し、日本沿岸の藻場造成の課題への取り組みを通じて、海洋での脱炭素の推進を目指している。
海洋での脱炭素の推進には健全な沿岸環境が必要であり、沿岸藻場は生物多様性を創出する環境形成のために重要だ。
藻場造成の課題である「磯焼け」への対応では、当社の水産基盤整備事業向けの製品開発で培った技術を用いて、植食動物(魚類、ウニ・貝類)からの食害防御構造を備えた藻場礁(ブロック)を設置した。母藻の減少や海藻の種不足に対しては、海藻種苗の大量生産と移植技術を活用している。
水深方向に複数段の基質を配置する多段式海藻養殖技術を開発し、これにより限られた海域で海藻の生産量を高め、CO2固定量の増加も目指す。
2026年6月には環境省の「ブルーカーボン等の吸収源対策に係る大規模実証プロジェクトの立上げ等実施事業」に採択された。島根、宮城、北海道の海域で実証を進める予定だ。
■ ニッスイ
西氏
当社は、水産資源への高い依存を踏まえ、「海洋の生物多様性の主流化」をマテリアリティに掲げている。23年の自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)レポート発行を契機に投資家、金融機関、アカデミア、NGOなどとの対話を進め、ネイチャーファイナンスによる資金調達や開示の高度化に取り組んでいる。
養殖では、ブリの完全養殖により天然の稚魚に依存しない生産を実現。育種や大規模な沖合養殖、いけすを沈めた状態での給餌などを通じ、環境負荷の低減と気候変動への適応、生産性向上を図っている。
TNFD開示を出発点に「自然関連課題を見える化」し、ステークホルダーとの対話を重ね、得られた気付きや課題を事業に主体的に反映する。自然資本への依存と影響を踏まえた事業運営にも努め、事業の意思決定や取り組みに着実につなげていく。
(注)生物多様性、水、食料、健康、気候変動の相互関係を評価し、複数の課題への統合的な対応を示したIPBESの評価報告書
【教育・自然保護本部】
