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2010年度事業報告

III.委員会等の活動

【政策委員会】

○政策全般

1.総合政策委員会

(〜5月27日 御手洗冨士夫委員長)
(5月27日〜 米倉弘昌委員長)

(1)総会決議の取りまとめ

経団連の活動の指針となる総会決議「民間活力で経済を再生し世界に貢献する」を取りまとめた(5月27日の定時総会において採択)。同決議では、一刻も早く日本経済を再生し、自律的な経済成長の達成と雇用の創出、安心・安全な社会の実現を図るため、デフレの克服や自律的景気回復、豊かな国民生活に向けた基盤強化、世界との連携強化と国際貢献といった課題に取り組むことの必要性を提起した。また、自ら成長分野を切り拓く気概をもって、民間活力による経済再生およびグローバル化への対応に、英知を結集して取り組むとの覚悟を表明した。

(2)「サンライズ・レポート」の取りまとめ

高度な技術力と人材力を軸として日本経済を復活させることを目指し、12月に「サンライズ・レポート」を取りまとめた。同レポートでは、「未来都市モデルプロジェクト」をはじめ、22の具体的プロジェクトを推進することにより、民主導によるイノベーションを創出し、産業競争力の強化につなげていくことを謳っている。

2.震災復興特別委員会

(2011年3月24日〜 米倉弘昌委員長)
(2011年3月24日〜 岩沙弘道共同委員長)
(2011年3月24日〜 坂根正弘共同委員長)

2011年に発生した東日本大震災はわが国経済社会に未曾有の被害をもたらした。経団連では震災発生後、直ちに米倉会長を本部長とする「東日本大震災対策本部」を立ち上げ、被災者支援・被災地復旧のための取組みを開始した。まず、3月16日、被災者の生活ならびに被災地の産業・経済の一刻も早い復旧に焦点をあてた、「未曾有の震災からの早期復旧に向けた緊急アピール」を公表し、関係方面へ建議した。

社会貢献推進委員会、1%クラブ等と協力し、会員企業・団体に対して、義援金、救援物資の提供の呼び掛けを行った。会員企業等の義援金・支援金等の拠出表明額は3月28日現在、約540億円にのぼった。また、日本郵船、全日本空輸の全面的協力を受け、東北各県と直接連絡をとり、各企業・団体から寄せられた救援物資を海と空から運ぶ「救援物資ホットライン便」を立ち上げた。さらに、被災地支援に携わるNPOやボランティアへの支援、連携の取組みを行った。

その上で、3月24日、震災復興に向けた取組みを総合的に進めるため、米倉会長を委員長、岩沙・坂根両副会長を共同委員長とし、評議員会議長、全副会長・評議員会副議長を委員とする「震災復興委員会」を設立した。同委員会では、3月31日、「震災復興に向けた緊急提言」を取りまとめ、政府における強力な司令塔の確立、復興に向けた「基本法」の早期制定と被災地の人々のニーズを十分に踏まえた形での各基本計画の策定・実行、税制、財政、金融面の支援措置と財源確保、各種規制や許認可手続きの緩和・弾力的運用等を求めた。同時に民間としても、「電力対策自主行動計画」を策定し、当面の電力需給対策に自ら取組むことを決定した。

3.政策検証委員会

(坂根正弘委員長)

(1)政策検証の具体的な枠組みの構築

企画部会(部会長:高尾剛正住友化学代表取締役専務執行役員)において、検証・評価の手法や在り方等について検討を行った。その結果、総会決議等を踏まえ、重要政策課題に関して、経団連の活動実績と政策実現度を二段階で検証・評価するとの枠組みをまとめた。

(2)政策検証作業の実施

政策検証の枠組みに基づき、2010年度の活動実績と政策の実現度を検証・評価するとともに、今後の課題や対応をとりまとめ、その結果を次年度の総会決議に反映させた。

4.国の基本問題検討委員会

(清水正孝委員長)

4月に「新憲法制定議員同盟」が開催した会合において、清水委員長が憲法改正に関する取り組み等について説明した。

○経済・法制関係

1.経済政策委員会

(奥田務共同委員長)
(畔柳信雄共同委員長)

(1)「新成長戦略」の具体化に向けた取り組み

6月に、政府の「新成長戦略」が決定されたことを受け、わが国企業にとって国際的にイコール・フッティングな事業環境を確保するとともに、国内における投資と雇用を拡大することを目的に、企画部会(部会長:村岡富美雄東芝取締役代表執行役副社長)において検討を進め、提言「『新成長戦略』の早期実行を求める」(2010年7月20日)をとりまとめた。
上記提言を含め、持続的な経済成長の実現に向けた経団連の主張を政策に反映するため、政府の「新成長戦略実現会議」や、その下部組織である「国内投資促進円卓会議」において、委員として参画している米倉会長より、経済界の意見を発信し、世論の形成に努めた。その結果、平成23年度税制改正大綱において、法人実効税率の5%引下げが明記されるとともに、「新成長戦略実現2011」(2011年1月25日)に、パッケージ型インフラの海外展開推進や経済連携の推進等、経団連の主張が多く盛り込まれた。

(2)経済・金融情勢の把握

経済情勢専門部会(月1回)では、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般について、また、金融情勢懇談会(年5回)では、日本銀行および金融庁から金融市場情勢や国際的な金融規制について、それぞれ説明を聞き、意見交換を行った。さらに、企業金融の円滑化に向けて、会員企業からの要望等を適宜聴取した。

(3)経済統計の改善に向けた検討

統計部会(部会長:竹原功ニッセイ基礎研究所社長)において、総務省・内閣府から、政府が策定した「公的統計の整備に関する基本計画」の進捗状況および、2010年に実施された「国勢調査」について説明を聞くとともに意見交換を行った。
また、こうした政府の説明も踏まえた上で、GDP統計を含む経済統計の信頼性向上や報告者負担の軽減、利用者利便の向上といった観点から、公的統計の改善策について、経済界の意見をとりまとめることとした。

2.税制委員会

(渡辺捷昭委員長)
(〜5月27日 大橋光夫共同委員長)
(5月27日〜 馬田一共同委員長)

2010年度においては、「新成長戦略実行元年」の位置づけのもと、法人税の実質的な負担軽減を伴う法人実効税率の5%引き下げが実現されるよう働きかけるとともに、社会保障と税・財政の一体改革に向けた取組みを行った。

(1)平成23年度税制改正等に関する取組み

菅内閣の成立に伴い、民主党内に政策調査会が復活し、「税制改正PT」および「社会保障と税の抜本改革調査会」が設置されたことから、政府税制調査会および与党内における税制改正の検討作業への意見反映を図るべく、企画部会(部会長:中村豊明日立製作所執行役専務)を中心に精力的な検討を行い、「平成23年度税制改正に関する提言」(2010年9月)を取りまとめた。
同提言では、第一に、企業の国際競争力を向上させ、投資意欲を増大させることにより、企業の海外移転の抑止と国内雇用の維持・増加を図る観点から、法人実効税率を最終的にはアジア近隣諸国と均衡する水準まで引き下げるべく、平成23年度税制改正において、実質的な税負担の軽減を伴うかたちで、少なくとも5%程度の法人税率引下げを行うよう求めた。第二に、税・社会保障共通番号制度については、早期導入に向けて、平成23年度税制改正において成案を得るよう求めた。第三に、環境税については、国内産業の空洞化等につながる懸念があることから、新税の安易な導入に反対した。このほか、OECDガイドラインの改定に伴う国際的整合性を踏まえた移転価格税制の見直し、企業年金等の積立金に係る特別法人税の廃止、航空機燃料税の廃止ないしは大幅軽減等を求めた。
政府税制調査会では、法人実効税率の引下げに伴う課税ベースの拡大について激しい議論が行われたが、最終的には菅総理の決断により、12月に閣議決定された税制改正大綱では、法人実効税率の5%引下げが盛り込まれた。税率引下げに伴い、特別償却や準備金等の廃止・縮減、減価償却制度の見直し、欠損金の繰越控除の利用制限等の課税ベースの拡大が行われることとなったが、法人税においては6,000億円強の実質減税が図られることとなった。地球温暖化対策としては、石油石炭税の上乗せ措置が設けられるにとどまった。このほか、税制改正大綱には、移転価格税制の抜本的見直し、企業年金等の積立金に係る特別法人税の課税停止措置の3年間の延長、航空機燃料税の大幅軽減等が盛り込まれた。しかしながら、平成23年度税制改正法案は3月末までに成立せず、つなぎ法により3月末に期限切れを迎える税制措置について適用期限が3ヶ月延長されることとなった。
また2011年1月に公表された「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」では、2011年秋以降、可能な限り早期に「番号法(仮称)」案及び関係法律の改正法案を提出し、2015年1月を目途に、税務分野等のうち利用可能な範囲で番号制度の利用が開始されることが示された。
なお、租税条約ネットワークの充実・拡大に向けて、オランダ、バハマ、ケイマン諸島、ガーンジー、マン島、ジャージー等との租税条約の交渉に際し、経済界の意見を取りまとめ、その反映に取り組んだ。

(2)社会保障と税・財政の一体改革に向けた取組み

「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連成長戦略2010〜」(2010年4月)では、安心できる社会保障制度の構築、財政の中長期的な持続可能性の確立等の観点から、消費税率引上げを含む税制抜本改革に着手することが不可避であること等を示し、「平成23年度税制改正に関する提言」(2010年9月)においてその考え方を改めて示した。
その結果、12月に閣議決定された「社会保障改革の推進について」では、社会保障と税の一体改革について2011年半ばまでに成案を得ることが示された。
政府においては、本年4月に社会保障のあるべき姿を、6月には社会保障と税・財政の一体改革案を示すべく「社会保障制度に関する集中検討会議」において議論が進められていることから、その議論に経済界の考え方が反映されるよう、関連委員会との連携を図りつつ、「国民生活の安心基盤の確立に向けた提言」(2011年3月)を取りまとめた。

3.財政制度委員会

(氏家純一委員長)
(秦喜秋共同委員長)

(1)社会保障と税・財政の一体改革に関する提言の検討

「経団連 成長戦略2010」(2010年4月)で、社会保障と税・財政の一体改革に向けて、経済成長と両立した財政健全化の必要性を示すとともに、国・地方を通じた財政健全化目標の制定を提言した。
また、2011年2月には、企画部会(部会長:筒井義信日本生命保険取締役専務執行役員)と税制・社会保障企画部会との合同会合を開催し、「国民生活の安心基盤の確立に向けた提言」(2011年3月)の審議を行った。同提言では、2011年半ばまでに成案を得る運びにある一体改革に向けて、財政健全化ならびに社会保障財源確保のための消費税引き上げ等を求めた。

(2)財務省との意見交換

11月に野田財務相ら財務省幹部と社会保障と税・財政の一体改革に関する意見交換を行った。財政健全化への具体的な取組みとして、(1)成長戦略の早期実行によりデフレを脱却し、名目成長率を高めることで税収の増加を図ること、(2)歳出面での無駄の排除、重点化・合理化努力に努めること、(3)歳入面で直接税に偏った不安定な構造を改め、消費税を含めた税制の抜本改革を行うこと、を求めた。また、財政健全化への取組みが遅滞することのないよう、超党派による建設的議論が行われるよう促した。

4.社会保障委員会

(森田富治郎委員長)
(〜5月27日 井手明彦共同委員長)
(5月27日〜 荻田伍共同委員長)

(1)国民生活の安心基盤としての社会保障制度の確立に向けた検討

政府・与党が、社会保障・税一体改革の検討を開始したことを受け、企画部会(部会長:浅野友靖第一生命保険取締役常務執行役員)を中心に、年金改革部会(部会長:山崎雅男東京電力副社長)、医療改革部会(部会長:齊藤正憲三菱電機取締役)に加えて、税制委員会等の関係委員会との連携を図りつつ、提言「国民生活の安心基盤の確立に向けた提言」(2011年3月)を取りまとめた。
同提言では、社会保障制度改革に臨む基本姿勢を示しつつ、医療・介護・年金・子育て支援における課題、現状の問題点を明らかにし、各制度改革の方向性を具体的に示すとともに、消費税の引き上げによる社会保障財源確保の必要性を主張した。

(2)各種審議会等への対応

社会保障審議会等の審議会、各種研究会等において、経団連代表委員を通じ、生産年齢人口が減少するなか、保険料負担での対応は雇用創出を阻害し新成長戦略に逆行するとの観点から、意見表明を行った。高齢者医療制度改革に際し、「高齢者医療制度の再構築に向けて」(2010年4月)及び「高齢者医療制度の再構築と被用者保険の維持・発展に向けた被用者保険関係4団体共同アピール」(2010年12月)を健保連、協会けんぽ、連合の共同で取りまとめ、政府へ提出した。このほか、各種審議会において、医療・介護の機能分化と連携の重要性と給付の重点化を求めた。

(3)企業年金制度の改善への取り組み

企業年金制度に関して、継続性・健全性の確保に努めつつ、より柔軟で多様な制度設計を可能とする観点から、「企業年金に関する制度改善要望」(2010年11月)をとりまとめた。また、政府・関係団体と連携して、2012年3月末に廃止される適格退職年金の円滑な移行に取り組んだ。

5.金融制度委員会

(奥正之委員長)

委員会では、2010年5月31日にイングランド銀行のアダム・ポーゼン金融政策委員を招き、現下の国際金融情勢をテーマに、バーゼル委員会による規制に対する評価やG20による問題解決策の限界等について説明を聞くとともに意見交換を行った。

また、資本市場部会(部会長:武井優東京電力取締役副社長)において、2011年1月19日に、東京証券取引所の静正樹執行役員から、2010年3月に導入された独立役員制度のその後の運用や今後の課題、取引時間の短縮や空売り規制の強化等を含む市場機能強化策等、最近行われた上場制度整備について説明を聞くとともに、忌憚のない意見交換を行った。

金融庁から、発行開示書類における格付に関する開示を強化する内容を含む「企業内容等の開示に関する内閣府令(案)」が公表された。資本市場部会から、当改正案は発行会社が都合の良い格付を恣意的に選択すること(いわゆる格付ショッピング)の弊害防止を社債市場全体の課題と位置付けた上で発行体に一律的な開示強化を求めている点で問題があること、さらに改正案によって追加的に開示対象となる事項が必ずしも投資家の投資判断に有用な情報ではないことについて指摘を行った結果、発行体に対する一律の開示強化策の導入は見送られることとなった。

金融庁開示ワーキンググループの検討に参画し、ライツオファリングに係る開示制度等の見直しや、外国企業等における英文開示の範囲拡大等の制度整備を内容とする「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律案」が2011年3月に国会に提出された。

「2010年度日本経団連規制改革要望」では、金融・保険・証券分野について要望をとりまとめ、関係省庁と調整した結果、一部が「金融資本市場及び金融産業活性化等のためのアクションプラン」に反映され、上記法案に盛り込まれた。

6.経済法規委員会

(清水正孝委員長)
(萩原敏孝共同委員長)

(1)会社法見直しに関する議論等への対応

企画部会(部会長:八丁地隆日立製作所副社長)では、2010年4月より、法制審議会会社法制部会において、企業統治の在り方と親子会社に関する規律を中心に会社法見直しの検討が始まったことを踏まえ、見直しにあたっての経済界の考え方を整理し、「企業の競争力強化に資する会社法制の実現を求める」(2010年7月)を取りまとめた。また、会社法見直しの各種論点につき、会社法制部会の委員・幹事である名古屋大学大学院法学研究科の中東正文教授、東京大学大学院法学政治学研究科の神作裕之教授、東京大学社会科学研究所の田中亘准教授、京都大学大学院法学研究科の前田雅弘教授等より説明を聴取するとともに意見交換を重ねた。さらに、会社法制検討ワーキンググループを設置し、毎回の会社法制部会への対応を検討した。こうした検討成果に基づき、経済界代表委員である八丁地隆企画部会長を通じて、会社法制部会の審議において、経済界の考え方の反映に努めた。
また、事業報告や計算書類等の作成実務の参考に供するため、2010年9月の会社計算規則の一部改正を踏まえて「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」(2010年12月)を作成・公表した。

(2)民法(債権関係)改正の検討への対応

法制審議会民法(債権関係)部会において債権法の改正に向けた検討が行われていることに対応して、企画部会の下に設置された債権法検討ワーキンググループにおいて、民法(債権関係)部会での審議スケジュールに合わせて、経済界としての対応につき意見交換を行った。その成果を踏まえ、同部会に参加する経済界代表委員を通じて、審議への経済界の意見の反映に努めた。

(3)独占禁止法改正への取組み

競争法部会(部会長:佐久間総一郎新日本製鐵執行役員)では、長年にわたって、公正取引委員会の審判制度の廃止及び審査手続の適正化を求めてきた。その成果として、審判を廃止するための独占禁止法改正法案が2010年通常国会に提出されたが、継続審議とされたまま、2011年通常国会に引継がれており、法案の早期成立・施行を関係各方面に積極的に働きかけ続けている。
また、2009年の独占禁止法改正によって、新たに課徴金賦課の対象となった優越的地位の濫用について、企業の予見可能性向上の観点から、経団連では詳細かつ網羅的なガイドラインを定めるべきことを強く求めてきた。2010年6月に公表された優越的地位の濫用に関するガイドライン(案)に対して、競争法部会において意見をとりまとめ提出した結果、経済界の意見を踏まえたガイドラインが同年11月から施行された。
企業結合規制については、経済界において現行制度の運用がグローバル市場における競争実態を踏まえたものとなっていないとの問題意識が高まっていたことを踏まえ、「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)に当該規制の見直しが盛り込まれた。そこで改めて経済界としての考え方を提言「企業結合に関する独占禁止法上の審査手続・審査基準の適正化を求める」(2010年10月)として取りまとめ、関係各方面に働きかけを行った結果、2011年3月に提言の内容を踏まえて公正取引委員会の規則ならびに企業結合ガイドライン等の改定案が公表され、パブリックコメントに付された。

(4)消費者法関連の課題への取組み

消費者法部会(部会長代行:松木和道三菱商事理事)では、消費者庁における集団的消費者被害救済制度に関する検討が進んでいることを踏まえ、消費者庁の成田裕紀企画課長、一橋大学大学院法学研究科の山本和彦教授、田辺総合法律事務所の奥宮京子弁護士等より、当該制度の論点について説明を聴取した。その上で、経済界としての考え方を整理し、消費者庁の研究会への経済界意見の反映に努めた。
また、2010年10月に同研究会の検討を引き継ぐ形で、消費者委員会の下に集団的消費者被害救済制度専門調査会が設置されたことを受け、経済界代表委員を通じて、実効的な集団的消費者被害救済と濫訴の防止が両立するような制度設計に向けて、経済界の意見が反映されるよう努めた。

(5)国際会計基準の円滑な導入に向けた対応、開示の簡素化

企業会計部会(部会長:島崎憲明住友商事特別顧問)では、企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)との間で進められている会計基準のコンバージェンス作業で取り上げられている主な基準について、産業界の意見を集約し、欧州や米国の団体と連携を図りながら、積極的な意見発信や働きかけを行った。その結果、ASBJにおいては、包括利益の単体財務諸表への表示が先送りされ、IASBにおいては、引当金の基準改訂のデュープロセスが見直された。
IFRS導入準備タスクフォースでは、個々の基準への対応を検討し、その中から問題提起された減価償却制度については、ASBJを通じ、IASBのアプトン氏のペーパーが示されることとなった。
連結財務諸表と単体財務諸表に適用する会計基準の関係については、財務会計基準機構に設置された単体財務諸表に関する検討会議に参加し、企業会計部会と緊密な連携を図りつつ、対応の方向性につき検討した結果、経済界の意見が報告書に反映された。
経団連が共同事務局を務める非上場会社の会計基準に関する懇談会では、中小企業に適用される会計基準または指針は、国際的な影響を受けず、安定的なものにすべきであること等につき、報告書を取りまとめた。
わが国の開示制度については、各国の制度と比較しても過剰であることから、かねてより政府に開示制度の簡素化を働きかけてきた。こうした取組みにより、政府が6月に公表した「新成長戦略」に、業績予想開示の在り方の検討、四半期報告の大幅簡素化、内部統制報告制度等の見直しといった事項が盛り込まれた。このような取組みを後押しするとともに、開示制度に関する経済界としての考え方を改めて示すべく、「財務報告に関わるわが国開示制度の見直しについて」(2010年7月)を取りまとめた。その結果、「金融資本市場及び金融産業活性化等のためのアクションプラン」に提言の多くが反映され、関係省庁との調整を経て、関係法令の整備が行われた。

○行革・産業・国土関係

1.行政改革推進委員会

(前田晃伸委員長)
(5月27日〜 竹中登一共同委員長)

(1)規制改革の推進

全会員企業・団体を対象に実施したアンケート調査をもとに、関係委員会の協力を得て、14分野210項目にわたる「2010年度日本経団連規制改革要望」(2010年10月14日)をとりまとめ、政府の行政刷新会議が設置した「国民の声」(規制・制度改革提案の集中受付)に提出するとともに政府・与党等関係先に建議した。併せて、11月2日に竹中共同委員長が蓮舫内閣府特命担当大臣(行政刷新)ならびに園田康博大臣政務官(規制・制度改革に関する分科会・会長代理)を訪問し要望の実現を求めるとともに、政府の規制・制度改革分科会関係者等に内容の説明を行う等要望の実現に向けた取組みを進めた。
要望の取りまとめに当たっては、2010年9月27日に行政改革推進委員会を開催し、八田達夫政策研究大学院大学学長を招き、規制改革の現状と課題につき説明を受けるとともに、意見交換を行った。

(2)その他行政改革の推進

2010年6月14日には、規制改革推進部会(部会長:小倉利之芙蓉総合リース会長)を開催し、青木由行内閣官房地域活性化統合事務局参事官ほかより、規制の特例措置と資金面の支援措置等を一体的に講じる「総合特区」の創設に向けた政府の検討状況につき説明を受けた。
また、公務員制度改革の一環である官民人事交流を推進するため、総務省と人事院による「官民人事交流制度のさらなる活用に関する説明会」の開催(東京:2010年10月15日及び11月18日、大阪:2010年10月29日)に協力した。

2.道州制推進委員会

(中村邦夫委員長)
(池田弘一共同委員長)

(1)道州制の導入に向けた提言や働きかけ

道州制の導入を働きかけるため、原口一博総務大臣(当時)はじめ政府関係者が出席する「総務省・経団連政策プラットフォーム」を5月に開催し、道州制の導入に向けた検討を働きかけた。12月には、片山善博総務大臣と懇談し道州制や地域主権改革について意見交換を行うとともに、経団連の考えを改めて伝えた。9月には横浜市の林文子市長と同市が取りまとめた「新たな大都市制度創設の基本的考え方」について意見交換を行った。
また、道州制や地域主権改革の最新の動向を把握するため道州制推進委員会を開催し、7月には逢坂誠二総理大臣補佐官を招き「地域主権戦略大綱」(2010年6月22日閣議決定)の内容について聞くとともに懇談を行った。加えて、関西広域連合が設立される直前の11月には、甲角健関西広域機構専務理事を委員会に招き、関西広域連合の設立と今後の見通しについて話を聞いた。

(2)道州制の導入に向けた気運の醸成と地方関係者との対話

道州制導入に向けた国民的な議論を高めるため、経済三団体が協働して「地域主権と道州制を推進する国民会議」を各地で開催した。
具体的には、10月に九州地域戦略会議との共催により、蒲島郁夫熊本県知事らの参加を得て熊本市でシンポジウムを行った。また11月には、四国経済連合会と共催し、小川淳也衆議院議員・元総務大臣政務官らが参加するシンポジウムを高松市で開催し、道州制の重要性について議論を行った。
その他、各地で開かれた地方経済懇談会等を通し、現地の経済界関係者と道州制や地域主権に関して懇談を行った。

3.産業問題委員会

(西田厚聰委員長)
(原良也共同委員長)

(1)産業競争力の強化

昨年度公表した提言『産業構造の将来像―新しい時代を「つくる」戦略―』(2010年1月)の実現に向け、経済産業省の策定した「産業構造ビジョン」(2010年6月)等への提言の反映に努めた。その一環として、近藤洋介経済産業大臣政務官(当時)との懇談を6月に開催した。
わが国の立地競争力を高める観点から、提言「『日本国内投資促進プログラム』の早期実行を求める」(2010年10月)をとりまとめ、総理も参加する国内投資促進円卓会議等を通じ政府の「日本国内投資促進プログラム」(2010年11月)に反映させた。
また、わが国の経済・産業の抱える課題について検討するため、産業政策部会において有識者を招きヒアリングを行い、設備投資の低迷や需給ギャップの解消に向けた政策について議論を行った。

(2)エンターテインメント・コンテンツ産業の振興

エンターテインメント・コンテンツ産業部会(部会長:依田巽ギャガ会長)では、「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連 成長戦略2010〜」(2010年4月)で掲げた諸課題の実現を政府に働きかけ、政府の「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)、知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2010」(2010年5月21日)への反映に努めた。また、施策の実現に向け、7月に部会を開催し経済産業省と意見交換を行うとともに、映像産業振興機構およびコンテンツ・ポータルサイト運営協議会の運営、JAPAN国際コンテンツフェスティバルの開催等に協力した。

(3)外国人材受け入れに関する取り組み

「新成長戦略」に盛り込まれた「高度人材に対するポイント制による優遇制度」について、企業のニーズを踏まえた制度が早期に実現するよう政府等に働きかけを行った。
また、外国人の入国・在留に関する規制改革についても積極的に取り組み、パッケージ型インフラの海外展開に対応した在留資格「研修」の見直し、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士が活躍するための環境整備等を働きかけた。

4.起業創造委員会

(大久保尚武委員長)
(高原慶一朗共同委員長)

次代のわが国経済・産業を担う新産業、新事業やその中核となる有望な企業、起業家の創出に向けた検討を深めるべく、2月に東京大学産学連携本部事業化推進部長の各務茂夫教授より、実例を含めて企業・大学発ベンチャーの育成・支援に必要となる取り組みや起業環境の国際比較等について説明を聞くとともに、意見交換を行った。
また、11月に開催された日本ベンチャー学会の全国大会を後援し、産学官の連携や起業を創出する気運の向上に努めた。

5.運輸・流通委員会

(宮原耕治委員長)
(亀井淳共同委員長)

わが国の国際競争力強化の観点から、7月に中田信哉神奈川大学経済学部教授より、効率的な物流・商流の実現に向けた今後の物流、流通施策のあり方について説明を聞き、意見交換を行った。

(1)物流政策

物流部会(部会長:丸山和博東レ専務取締役)のもとで具体的な検討を進めてきた。「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)を受けて、7月に若林陽介国土交通省港湾局港湾経済課長及び田口芳郎国土交通省政務三役付政策官より、選択と集中に基づくコンテナ及びバルク港湾の戦略的な整備やオープンスカイ構想の推進等について説明を聞くとともに意見交換を行った。8月には戸崎肇早稲田大学アジア研究機構アジア研究所教授より、9月には金近忠彦日本港湾協会理事・港湾政策研究所所長より、それぞれ広域ポートオーソリティのあり方について説明を聞き、部会として「広域ポートオーソリティに関する提案」(2010年9月)を取りまとめた。その上で、政府が行った総合特区の提案募集に対して同提案を提出し、その実現を働きかけた。また、12月には山口勝弘国土交通省総合政策局交通計画課長より、次期通常国会での法案提出が予定されている「交通基本法」に関して説明を聞き、意見交換を行った。
さらに、輸出貨物に係る「保税搬入原則」の撤廃に向けて政府・与野党に働きかけを行った結果、上記閣議決定に対応が盛り込まれた。加えて、市村浩一郎国土交通大臣政務官のもとに設置された「ビジネスジェットの推進に関する委員会」に参加し、海外からの受入体制の強化及びわが国での普及を働きかけた。

(2)流通政策

2010年9月、旧流通部会を発展的に解消し、中野勘治菱食代表取締役社長を部会長として、新たに流通部会を設置した。2010年9月に深野弘行経済産業省 商務流通審議官を、2011年2月には渡辺達朗専修大学商学部教授を来賓として招き部会を開催。流通産業を取り巻く環境変化を踏まえた流通産業の将来像と流通政策のあり方について意見交換を行なった。
また、流通部会での審議を経て、ワーキング・グループを設置。2010年12月より会合を開催し、流通産業が直面している課題を洗い出すとともに、事業環境の整備に向けた流通政策のあり方について集中的な議論、検討を行なった。

6.農政問題委員会

(小林栄三共同委員長)
(廣瀬博共同委員長)

(1)「力強い農業の実現に向けた提言」の公表

政府の「食と農林漁業の再生推進本部」(本部長:内閣総理大臣)が、2011年6月を目途に、高いレベルの経済連携の推進と国内農業・農村の振興とを両立させ持続可能な力強い農業を育てるための基本方針を決定するとしたのを受け、「力強い農業の実現に向けた提言」(2011年2月)を取りまとめ、政府・与党関係先に建議した。
この過程で、2011年1月21日に企画部会・農商工連携部会・国際関係部会の合同部会を開催し、小寺彰東京大学総合文化研究科教授より、世界におけるEPA/FTAによる貿易自由化やルール設定の動向とわが国が採るべき方策について説明を聞き懇談するとともに、2月3日には生源寺眞一東京大学大学院農学生命科学研究科教授を来賓として委員会会合を開催し、力強い農業の実現に向けてわが国が取り組むべき課題等について説明を受け懇談した。
また、2010年7月8日には、井出道雄農林水産省事務次官を招き委員会会合を開催し、政府が3月に閣議決定した新たな「食料・農業・農村基本計画」につき説明を受けるとともに懇談した。

(2)「農林漁業等の活性化に向けた取組みに関するアンケート調査」の実施等

2011年1月には、全会員企業・団体を対象に「農林漁業等の活性化に向けた取組みに関するアンケート調査」を実施、その結果を事例集として3月15日に公表した。
また、2010年5月17日には、廣瀬博委員長ほか農政問題委員会幹部が、佐賀県唐津市はじめ県内の農業現場数か所を視察するとともに、現地の農業関係者等との意見交換会を実施し、農業界との相互理解を深めた。

7.都市・地域政策委員会

(岩沙弘道委員長)
(山口昌紀共同委員長)

(1)未来都市モデルプロジェクト

経団連は、民間主導で成長モデルを構築し、イノベーション立国を実現するため、未来都市モデルプロジェクトを実施することにした。具体的には、環境・エネルギー、医療、農業等今後の成長分野において、企業が持つ先端技術を都市に結集して実証実験を行うとともに、教育・子育て支援、観光振興等の取組みも行う。
6月にモデル都市部会(部会長:菰田正信三井不動産専務取締役)を新設し、7月、森雅志富山市長より、同市のまちづくりへの取組みについて説明を聞いた。8月に委員会を開催し、八田達夫政策研究大学院大学学長より、景気対策および成長戦略としての都市政策について説明を聞いた。その結果も踏まえ、「未来都市モデルプロジェクト中間報告」(2010年9月)をとりまとめ、プロジェクトの目的、枠組み等を示した。
その後、11月に委員会を開催し、小宮山宏三菱総合研究所理事長より、未来都市が切りひらく日本型課題解決型モデルについて説明を聞いた。「サンライズ・レポート」(2010年12月)のなかで検討中のプロジェクトの概略を示した。2011年3月、委員会を開催し、内閣官房の和泉洋人地域活性化統合事務局長より、総合特区制度、都市再生基本方針の改訂等の検討状況について説明を聞いた。
計5回のモデル都市部会の開催等、これまでの検討の成果をとりまとめる形で、12の具体的なプロジェクトからなる「未来都市モデルプロジェクト最終報告」(2011年3月)をとりまとめた。

(2)平成23年度税制改正への対応

「平成23年度都市・土地・PFI税制改正に対する要望」(2010年9月)をとりまとめた。

8.観光委員会

(〜5月27日 大塚陸毅委員長)
(5月27日〜 大塚陸毅共同委員長)
(5月27日〜 山口範雄共同委員長)

(1)提言の取りまとめ

委員会において、4月に伊藤元重東京大学大学院経済学研究科教授より日本の観光産業の成長戦略について、11月にジョージ・タナシェビッチ マリーナ・ベイ・サンズ総支配人より同社のIR(Integrated Resort)開発への取り組みについて、2011年3月に間宮忠敏日本政府観光局理事長より日本の観光政策の現状と課題について話を聞くとともに意見交換をした。
また、2011年2月企画部会(部会長:生江隆之三井ホーム社長)に、鈴木史朗観光庁総務課企画室長を招き、「観光立国推進基本計画」の見直しに向けた検討状況について話を聞くとともに意見交換をした。
上記の議論を踏まえ、提言「わが国観光のフロンティアを切り拓く」(4月)、「改定『観光立国推進基本計画』に望む」(2011年3月)を取りまとめた。

(2)「インターンシップ・モデル・プロジェクト」への取り組み

提言「観光立国を担う人材の育成に向けて」(2010年2月)に基づき、観光委員会有志企業によるインターンシップ・モデル・プロジェクトを検討し、2011年4月から立教大学観光学部にて実施することとした。

(3)観光立国シンポジウムの開催

11月、「観光立国シンポジウム」を開催し、各地の先進的な観光振興の事例を紹介するとともに、観光立国実現のための方策について議論した。

(4)上海市及び上海万博への視察団派遣

9月に、中国上海市における都市観光の振興や空港アクセス等のインフラ整備状況、上海万博を視察した。

(5)視察会の開催

鉄道博物館(7月1日)、羽田空港国際線旅客ターミナル(9月17日)の視察会を開催した。

9.住宅政策委員会

(〜5月27日 渡文明委員長)
(5月27日〜 宗岡正二委員長)
(5月27日〜 関口憲一共同委員長)

7月、企画部会(部会長:立花貞司トヨタ自動車顧問)を開催し、国土交通省の井上俊之住宅局官房審議官より、成長戦略と住宅税制について説明を聞いた。また、8月、委員会を開催し、山崎福壽上智大学経済学部教授より、今後の都市住宅政策のあり方について説明を聞いた。
その結果も踏まえ、平成23年度税制改正及び予算編成に対する要望として、提言「豊かな住生活の実現と住宅市場の活性化に向けて」(2010年9月)を取りまとめた。

○技術・環境・エネルギー関係

1.産業技術委員会

(榊原定征委員長)
(中鉢良治共同委員長)

(1)第4期科学技術基本計画の策定に向けた提言の取りまとめ等

政府の第4期科学技術基本計画に産業界の意見を反映させるため、「イノベーション創出に向けた新たな科学技術基本計画の策定を求める」を10月にとりまとめ、関係方面へ働きかけた。また、総合科学技術会議の基本政策専門調査会および施策検討ワーキンググループの民間委員へのサポート等を通じ産業界の意見を表明した。その結果、経団連の主張が基本計画の答申案に概ね反映された。

(2)海外の有識者および政府高官との懇談会の開催

11月に英国ケンブリッジ大学・ヒューズ教授との懇談会、12月にシンガポール・リム科学技術研究開発庁長官との懇談会を開催し、各国の科学技術イノベーション政策について意見交換を行った。

(3)産学官連携による世界トップレベル研究開発拠点の実現に向けた働きかけ

新成長戦略に盛り込まれた「つくばナノテクアリーナ拠点形成」に関連し、「つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点運営最高会議」に中鉢産業技術委員会共同委員長が参画、同拠点形成に向けて産業界として支援をした。検討ワーキンググループに参画して、同拠点の中期計画策定への意見反映をはかった。

(4)産学官連携の推進

6月に京都で「平成22年度産学官連携推進会議」を内閣府、日本学術会議等と共催した。グローバル化を通じた大学の競争力強化及び人材育成に関する課題、大学の産業界との連携強化等に関し、大学や関係省庁と意見交換を行った。産業界から見た大学・大学院における教育に焦点をあてた調査を実施した。

2.知的財産委員会

(野間口有委員長)
(足立直樹共同委員長)

(1)生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)への対応

名古屋開催のCOP10に向け、ABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)が大きな焦点となっていたことから、企画部会(部会長:広崎膨太郎日本電気特別顧問)において、経済産業省や環境省と情報交換・意見交換を行いつつ、7月に提言「生物多様性条約における『遺伝資源へのアクセスと利益配分』に関する議定書原案に対する意見」をとりまとめた。COP10開催中も政府関係者と緊密に連携をはかり、知財面の大きな懸念事項は盛り込まれない形で「名古屋議定書」が合意された。

(2)イノベーション・ハブ構想実現に向けたさらなる検討

提言「『イノベーション立国』に向けた今後の知財政策・制度のあり方」(2010年3月)で提唱した「イノベーション・ハブ」構想の実現に向け、企画部会において米国ベンチャーキャピタル、産業革新機構、IMEC(ベルギーのナノエレクトロニクス国際研究開発拠点)、日本知的財産協会、東京大学の渡部俊也教授といった国内外の組織や有識者と意見交換を行い、検討を深めた。

(3)知財事務局等、政府知財関係者との連携強化

5月に政府の「知的財産推進計画2010」が決定されたことを受け、6月に知財事務局、8月、10月、2011年2月に大臣政務官、知財事務局を始めとする政府の知財関係者と幅広く意見交換を行った。

(4)特許制度改正に関する検討への対応

産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会において12月にとりまとめられた「特許制度に関する法制的な課題について」(案)に対し、企画部会としての意見を提出し、職務発明制度等について本質的な議論の必要性を指摘した。

(5)不正競争防止法改正に関する検討への対応

  1. 技術的制限手段回避規制
    産業構造審議会知的財産政策部会技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会においてとりまとめられた「技術的制限手段に係る不正競争防止法の見直しの方向性について(案)」に対し、企画部会としてその方向性に賛同する旨の意見を提出するとともに、2011年1月に経済産業省と意見交換を行った。
  2. 刑事訴訟手続における営業秘密保護規定
    営業秘密の漏洩に関し、訴訟を起こしたために営業秘密が漏洩するという矛盾を解決すべく、法務省・経産省で設置した「営業秘密保護のための刑事訴訟手続の在り方研究会」において産業界の意見を表明した。刑事訴訟手続上新たな工夫を講じることにつき、12月に両省で合意がはかられた。2011年1月に企画部会において経済産業省から一連の経緯につき説明を受けるとともに、意見交換を行った。

(6)国際標準化に関する取組み

国際標準化戦略部会(部会長:西谷清ソニー業務執行役員SVP)において、「中国の国際標準化に対する取り組み」について遠藤誠弁護士、「戦略的な国際標準化の推進とアジアとの連携」について経済産業省と意見交換を実施した。「知財と標準の一体的推進」について、大阪工業大学平松幸男教授、東京理科大学藤野仁三教授と、「公正で適切な基準認証の必要性」について藤田俊弘IDEC常務との意見交換を実施した。「情報通信分野の標準化政策」について、総務省と意見交換を実施した。昨年度に引き続き、部会委員の共通認識の醸成に向けて、各社の取り組みに関するヒアリングを実施した。また、「特許と標準化をめぐる最近の動向」について特許庁と意見交換を実施するとともに、部会として今後重点的に取り組むべきテーマの絞り込みを行うためグループディスカッションを行った。

(7)著作権法改正に関する検討への対応

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」に対し、5月に著作権部会(部会長:和田洋一スクウェア・エニックス・ホールディングス社長)としての意見を提出した。

3.情報通信委員会

(渡辺捷昭委員長)
(清田瞭共同委員長)

(1)新IT戦略への対応

提言「新しい社会と成長を支えるICT戦略のあり方」(2010年3月)を踏まえ、4月に政府IT戦略本部の「新たな情報通信技術戦略の骨子」に対するパブリックコメント募集に対し意見を提出する等、関係方面に働きかけを行った。経済界の意見も踏まえ、IT戦略本部において5月に「新たな情報通信技術戦略」(新IT戦略)、6月に分野ごとの詳細な「工程表」が策定された。7月に、エレクトロニクス、IT産業の競争力強化に向け、経済産業省と共催でシンポジウム「21世紀の新社会システムと電子立国の再興に向けて」を開催した。

(2)ICTの利活用を阻む規制・制度の改革

会員企業へのアンケートに基づき、8月に総務省のICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集に対し意見を提出した。さらにこれを精査・整理して、10月の「2010年度日本経団連規制改革要望」に盛り込み、政府行政刷新会議や政府IT戦略本部規制・制度改革に関する専門調査会を通じて実現を図った。

(3)クラウド・コンピューティングの普及・発展への取組み

クラウド・コンピューティングの普及、発展、課題の検討等を民間主導で横断的に行う「ジャパン・クラウド・コンソーシアム」(http://www.japan-cloud.org/)の設立(副会長として渡辺捷昭副会長・情報通信委員長が就任)に協力した。

(4)通信・放送の融合法制の実現

通信・放送政策部会(部会長:前田忠昭東京ガス副社長)のこれまでの要望と整合性のある「放送法等の一部を改正する法律」が12月に成立・公布された。これに伴い、2月に通信・放送政策部会を廃止した。

(5)国際的な動向への対応

5月に米国セールスフォース・ドットコムのベニオフ会長との懇談会、7月にACCJ(在日米国商工会議所)との意見交換会と英国BTグループのレイク会長との懇談会を開催、11月にインターネットエコノミーに関する日米政策協議に参加した。また、9月に、国連が設置したインターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)の第5回会合に対して意見を提出した。IGFは第5回で終了となるため、今回の意見提出を機に国際問題部会(部会長:加藤幹之富士通顧問(当時))を廃止した。

4.電子行政推進委員会

(〜5月27日 秋草直之委員長)
(5月27日〜 内田恒二委員長)
(5月27日〜 秋草直之共同委員長)

(1)番号制度の早期導入に向けた働きかけ

電子行政の基盤となる番号制度の早期実現に向け、7月に「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会 中間取りまとめ」について国家戦略室と懇談、8月に国家戦略室の「中間取りまとめ」に関する意見募集に対し意見を提出した。11月に、電子行政推進部会(部会長:遠藤紘一リコージャパン会長)が中心となって検討を行い、番号制度の具体的な利用イメージ等を示した提言「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」をとりまとめた。1月には、政府・与党社会保障改革検討本部において、経団連の意見を反映した「社会保障・税に関する番号制度についての基本方針」が決定され、本年秋以降、できるだけ早期に法案を提出し、2014年6月を目途に全国民に番号を配布、2015年から順次利用を開始することとなった。

(2)番号制度の早期導入に向けた国民世論の喚起

12月に各界から500名が参加し、番号制度に関するシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、峰崎直樹内閣官房参与の挨拶、和田隆志内閣府大臣政務官、平井卓也自民党IT戦略特別委員会委員長等によるパネルディスカッションを行い、番号制度の早期導入に向けて超党派で取り組む必要性が確認された。
62団体・個人(2月時点)の賛同を得たメッセージ「私たちは番号制度の導入を支持します。」や、パンフレット「豊かな国民生活の基盤を創る番号制度」を、シンポジウムや地方経済懇談会で配布し、世論喚起を図った。

(3)国民本位の電子行政を実現するための基盤整備に向けた働きかけ

総務省と経団連で設置した電子行政タスクフォースや、IT戦略本部電子行政タスクフォース等を活用し、電子行政推進法策定、行政CIOの任命等、国民本位の電子行政を実現するための基盤整備を求めた。

5.海洋開発推進委員会

(元山登雄委員長)

(1)新成長戦略への対応

4月に「海洋立国への成長基盤の構築に向けた提言」をとりまとめ、海洋資源等国家権益の確保、海上輸送等の安全・安心の確保、低炭素社会への貢献等に関する施策について訴えた。自民・公明・民主の関係議員と有識者で構成する海洋基本法フォローアップ研究会において元山委員長が提言について説明した。
5月に離島の活用等を目的とした低潮線保全法が成立、6月に政府が策定した「新成長戦略」において、海洋資源やエネルギーの開発等の海洋関連の施策が盛り込まれた。

(2)政府・有識者との懇談

4月に委員会を開催し、資源エネルギー庁資源・燃料部から、海洋資源・エネルギーの開発状況と今後の課題について説明を聞いた。10月に委員会を開催し、内閣官房総合海洋政策本部の小野芳清事務局長から、海洋政策の現状と課題について説明を聞いた。
11月から総合部会(部会長:山脇康日本郵船取締役・副会長経営委員)において、海洋資源開発や、洋上風力発電、海上安全保障等について政府関係者や有識者からヒアリングを行った。

6.環境安全委員会

(坂根正弘委員長)
(〜5月27日 鮫島章男共同委員長)
(5月27日〜 天坊昭彦共同委員長)

(1)環境問題全般(環境省首脳との意見交換(10月4日))

米倉会長はじめ、渡評議員会議長、副会長ほかと松本龍大臣はじめ環境省政務三役・幹部との懇談会を開催し、地球温暖化、循環型社会形成、生物多様性等の問題に関して意見交換を行った。

(2)地球温暖化問題への対応

  1. ポスト京都議定書の国際枠組構築に向けた取組み
    ポスト京都議定書の国際枠組のあり方等について、国内外の関係方面に対し様々な働きかけを行った。
    1. 7月5日、COP16(国連気候変動枠組条約第16回締約国会議)議長国メキシコのパトリシア・エスピノサ外務大臣が来日した際、委員会を開催し、COP16に向けた議長国としての取組み等について説明を聞く一方、米中を含む全ての主要排出国が参加する国際枠組の構築が不可欠であるとの日本産業界の考え方等を強く訴えた。このほか、各国から来訪した政府要人らと国際枠組のあり方等について懇談し、日本産業界の見解等を積極的に発信した(4月14日:解振華中国国家発展改革委員会副主任、6月14日:ヴィッキー・ポラード欧州委員会気候行動総局政策担当官、12月2日:イボ・デ・ブア前国連気候変動枠組条約事務局長、2011年2月2日:ボー・リデゴー デンマーク首相府次官補、2月15日:リジョイス・マブダファシ南アフリカ共和国水・環境副大臣、2月28日:クリスティアーナ・フィゲレス国連気候変動枠組条約事務局長)。
    2. 11月16日、(ア)全ての主要排出国の単一の枠組への参加、(イ)国際的公平性の確保、(ウ)技術の重視、を柱とする提言「地球温暖化防止に向け真に実効ある国際枠組を求める」をとりまとめ、政府与党等に建議した。
    3. COP16(11月29日〜12月10日、於メキシコ・カンクン)に坂根委員長はじめ委員会幹部が参加し、松本龍環境大臣、田嶋要経済産業大臣政務官、山花郁夫外務大臣政務官等政府関係者等との懇談を通じて働きかけを行った。また、地球産業文化研究所とのサイドイベントを共催し、京都議定書延長反対の日本の経済界の立場やボトムアップ方式による国際枠組み作りの重要性を国際社会に訴え、議論を深めた。さらに、日本産業界代表として「エネルギー安全保障と気候変動に関する主要経済国ビジネスフォーラム」に参加し、(ア)技術、(イ)温室効果ガスの測定・報告・検証、(ウ)市場、(エ)低炭素社会への道筋等の主要論点につき議論を交わすとともに、共同宣言をとりまとめ、政府関係者に手交した。加えて、メキシコ産業団体CESPEDESとのサイドイベントも共催し、日墨二国間オフセットをはじめ、両国産業界による具体的な協力プロジェクトや今後の連携強化等につき意見交換を行うとともに、共同宣言をとりまとめた。
  2. 国内の地球温暖化対策等に関する働きかけ、情報発信の拡充
    政府・与党内で地球温暖化対策税や国内排出量取引制度、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度等主要3施策の導入に関する検討が本格化する中、これに対する提言として「地球規模の低炭素社会の実現に向けて」をとりまとめ(9月)、関係方面に建議した。内閣官房・国家戦略室で主要3施策に関するヒアリングが行われた際には、坂根委員長より産業界の考え方を陳述するとともに、「日本経団連 低炭素社会実行計画」の基本方針ならびにエネルギー多消費9業種の実行計画について説明を行った。
    また、「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)に対する意見」(6月)、「排出量取引制度環境省案に関するアンケートの集計結果」(9月)等を環境省・経済産業省等関係省庁に提出するとともに、民主党税制改正PT総会(地球温暖化対策税検討会:10月6日)、民主党環境部門会議(10月13日)等の場での意見陳述を通じて強く働きかけた(なお、再生可能エネルギーの全量買取制度については、「資源・エネルギー対策委員会」参照)。
    さらに、広報活動を充実させる観点から、2月16日、地球温暖化対策に関するホームページを開設し、温暖化対策に関する産業界の主体的な取組みや考え方等を紹介している。
  3. 産業界の温暖化対策の着実な推進
    1. 「日本経団連 低炭素社会実行計画」基本方針(2009年12月公表)に沿って、業界毎の実行計画とりまとめを推進し、エネルギー多消費9業種の実行計画を策定した(内閣官房・国家戦略室ヒアリングについては、(2) ご参照)。
    2. 環境自主行動計画2010年度フォローアップ調査を実施し、11月に結果を公表した。本年度は、産業・エネルギー転換部門34業種におけるCO2排出量について、1990年度比16.8%減少との結果となった。また、外部有識者で構成される第三者評価委員会が12月〜3月に計6回の会合を開催し、信頼性向上のための課題等につき、評価報告書を取りまとめた。
    3. クールビズ等夏季の国民運動の開始時期である6月に、環境自主行動計画への取組み、オフィスでの省エネ、顧客や従業員への働きかけ等について、会員企業に協力を要請した。経団連においても冷暖房の調節等を実施した。
  4. 政府関係者・学識経験者等との懇談(以下は全て委員会会合)
    1. 産業構造審議会環境部会の地球環境小委員会政策手法ワーキング・グループ委員である読売新聞の安部順一編集委員より、わが国温暖化政策のあり方等について説明を聞き、意見交換を行った(9月6日)。
    2. 経済産業省の菅原郁郎産業技術環境局長より、COP16直前の状況および展望等について説明を聞くとともに、懇談した(11月2日)。
    3. 経済産業省の有馬純大臣官房審議官より、COP16総括を踏まえた日本政府の今後の対処方針等説明を聞き、意見交換を行った(12月24日)。

(3)循環型社会形成に向けた取組み

  1. 環境自主行動計画(循環型社会形成編)のフォローアップ
    1. 本年度も41業種が参加し、2009年度の産業廃棄物最終処分量や業種毎の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組み状況等を調査した。2011年3月にフォローアップ調査結果を公表した。
    2. 2011年度以降も、産業界は引き続き主体的かつ積極的に3Rを推進すべく、(1)2015年度を「目標年度」とする産業界全体の産業廃棄物の最終処分量削減の目標の設定、(2)業種ごとの特性に応じた独自目標に係る設定――を2つの柱とする計画を12月に策定した。
  2. 循環型社会のさらなる進展に向けた提言(2010年9月)のとりまとめ
    産業廃棄物の最終処分量の削減は限界に近いとする業種も多い。循環型社会のさらなる進展に向けては、廃棄物の適正処理を確保することで環境への悪影響を回避しながら、民間がリサイクルに取り組みやすい条件を整備することが不可欠である。そこで、生産工程で発生する副産物の新たな用途開発の推進、廃棄物処理法の特例制度の拡充等を柱とする提言をとりまとめた。
    同提言については、9月13日開催の中央環境審議会循環型社会計画部会で公表し、その実現を働きかけた。
  3. 廃棄物処理法の改正への対応
    5月12日に成立した改正廃棄物処理法に伴い、政省令の改正を検討した中央環境審議会廃棄物処理制度専門委員会において、吉川廣和廃棄物・リサイクル部会長(DOWAホールディングス会長)が委員として参画し、産業界の意見反映を図った。このほか、適宜、廃棄物・リサイクルワーキング・グループ(座長:黒瀬JFEスチール環境管理部長)を開催し、環境省と懇談するとともに、産業界としての対応について検討を行った。
  4. 不法投棄等の支障除去等に関する基金への対応
    環境省がとりまとめた「支障除去等に関する基金のあり方懇談会」報告書(2009年10月29日)に基づき、本年度も、11月24日に環境省を招いて説明会を開催したうえで、本基金に協力した。また、引き続き、同懇談会に参画し、2013年度以降の新たな制度の検討に際し、産業界の経済界意見の反映に努めた。
  5. PCB汚染重電機器の安全かつ合理的な処理方法の検討
    5月25日、PCB対策ワーキング・グループ(座長:影山嘉宏東京電力執行役員環境部長)を開催し、処理コストの低減策等について意見交換を行った。また、8月20日には、環境省と日本環境安全事業株式会社(JESCO)を招き、JESCOの事業運営等について説明を伺うとともに、処理コストの低減策等について懇談した。
  6. 容器包装リサイクル法に関する提言(2005年10月)のフォローアップ
    12月13日に懇談会を開催し、経済産業省から容リ法を巡る諸課題について説明を聞くとともに、3R推進団体連絡会より「容器包装の3R推進のための自主行動計画フォローアップ調査結果」の報告を受けた。
  7. 政府関係者・学識経験者等との懇談(以下は全て廃棄物・リサイクル部会)
    細田衛士慶應義塾大学経済学部教授から、循環型社会構築に向けた課題と対策、特に、動脈経済と静脈経済が有機的な結びつきによって実現する円滑な資源循環について説明を受けるとともに、懇談を行った(9月3日)。
    環境省廃棄物・リサイクル対策部の伊藤部長より、政府の第二次循環型社会形成推進基本計画のフォローアップの進捗状況等、最近の廃棄物・リサイクル行政をめぐる動向について説明を受けるとともに、懇談を行った(11月29日)。
    森口祐一・国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター長から、循環基本計画のフォローアップにおける課題等について説明を受けるとともに、懇談を行った(2月21日)。

(4)環境規制制度の改善に向けた動き

  1. 「水質に係る化学的酸素要求量、窒素含有量及びりん含有量の総量規制基準の設定方法について」への対応
    5年に一度行われる水質汚濁防止法における総量規制基準の見直しに対し、規制水準が適切なものとなるよう、環境管理ワーキング・グループにおいて、環境省と3回に亘り(10月4日、10月19日、11月16日)の意見交換を行うとともに、パブリック・コメントを提出した。その結果、産業界の意見が概ね反映された見直し結果となった。
  2. 「地下水汚染の効果的な未然防止対策の在り方について(答申)」への対応
    中央環境審議会では、工場・事業場が原因と推定される地下水汚染事例が毎年見られるとの認識の下、地下水汚染の効果的な未然防止対策の在り方について検討を行った。これに対し、環境管理ワーキング・グループにおいて、9月14日に環境省と意見交換を行う等、審議会の検討において、産業界の意見が十分反映されるよう努めた。
  3. 「次期VOC対策の在り方検討」への対応
    工場等からの揮発性有機化合物(VOC)排出総量については、現在、本年度末までに2000年度比3割程度削減することを目標に対策が講じられている。こうした中、環境省は、来年度以降の対策の在り方について、中央環境審議会にWGを設置し検討を行っている。そこで、環境管理ワーキング・グループでは、11月26日に環境省と意見交換を行い、次期VOC対策が合理的なものとなるよう産業界の意見を伝えた。
  4. 水銀規制に関する国際条約交渉への対応
    水銀によるリスクの削減については、2013年までに条約に合意すべく、現在国際交渉が行われている。環境管理ワーキング・グループでは、11月18日に経済産業省、12月9日には環境省と、それぞれと意見交換を行い、国際的に公平な条約の実現に向けて交渉するよう求めた。

7.資源・エネルギー対策委員会

(岡素之共同委員長)
(〜5月27日 柴田昌治共同委員長)
(5月27日〜 井手明彦共同委員長)

(1)エネルギー基本計画の見直しへの対応

政府の総合資源エネルギー調査会において、エネルギー基本計画の見直しに向けた作業が開始されたことから、4月2日に企画部会(部会長:渡辺康之IHI副社長)を開催し、資源エネルギー庁の笹路エネルギー情報企画室長から説明を聞くとともに懇談した。また、説明を踏まえ、「エネルギー基本計画見直しについての意見」(4月)を資源エネルギー庁に提出した。
さらに、7月7日には、委員会を開催し、資源エネルギー庁の石田徹長官から、新たなエネルギー基本計画(6月18日閣議決定)について説明を聞くとともに懇談した。新たな基本計画には、「3E」の適切なバランス、エネルギー源の多様化と供給源の多角化、資源の安定的な確保のための戦略的な資源外交の推進、エネルギー技術開発の必要性等が盛り込まれ、概ね産業界の意見が反映された。

(2)再生可能エネルギーの全量買取制度導入への対応

資源エネルギー庁において、再生可能エネルギーの全量買取制度導入に向けた検討が進められる中、4月15日に企画部会を開催し、資源エネルギー庁の渡邊新エネルギー対策課長から、制度設計のオプションの内容やその影響について話を聞くとともに懇談を行った。また、それらを踏まえ、「『再生可能エネルギーの全量買取制度に関するオプションについて』に対する意見」(6月)をとりまとめ、資源エネルギー庁に提出した。
さらに、意見募集の結果を踏まえ、買取対象、価格、期間をはじめとする全量買取制度の大枠が示されたたことから、8月5日に企画部会を開催し、資源エネルギー庁の渡邊新エネルギー対策課長より、制度の大枠や同制度導入による影響について説明を聞くとともに懇談を行った。
12月24日には、買取制度小委員会報告書案が公表され、「『買取制度小委員会報告書(案)』に対する意見」(1月)をとりまとめ、資源エネルギー庁に提出した。

(3)資源・エネルギーの安全保障確保に向けた取組み

新興国の経済成長等により、資源・エネルギーの需給が逼迫する中、資源・エネルギーの安定確保がわが国の重要課題となっている。そこで、資源・環境制約を克服しつつ、グリーン・イノベーションを実現する観点から、今後強化すべき資源・エネルギー政策について、4月を目途に提言を取りまとめるべく検討を開始した。

(4)「世界省エネルギー等ビジネス推進協議会」への協力

5月、わが国の優れた省エネ・新エネ技術を官民連携して世界に普及するために設立された世界省エネルギー等ビジネス推進協議会の会長に、米倉会長が就任し、省エネ技術を紹介した国際展開技術集の配付をはじめ同推進協議会の活動に協力した。

(5)レアメタル問題に関する検討

中国のレアアース輸出枠が、年間ベース(2010年)で前年比4割減と大幅に削減されたことを踏まえ、「円高・デフレ対応緊急経済対策」にも盛り込まれたレアアース総合対策について、10月21日に経済産業省からから説明を受けるとともに、懇談を行った。

(6)エネルギー分野に係る規制改革への取組み

9月、各種エネルギー供給事業の効率化・活性化に向けて、エネルギー分野に係る規制改革要望をとりまとめた。

○社会関係

1.広報委員会

(〜5月27日 宗岡正二委員長)
(5月27日〜 中村芳夫委員長)

国内外への広報が積極的かつタイムリーに行われるように努めた。

2.企業行動委員会

(〜5月27日 渡文明委員長)
(5月27日〜 佃和夫委員長)
(加藤壹康共同委員長)

(1)「企業行動憲章」の改定をはじめ企業倫理徹底とCSR推進に向けた取組み

9月の理事会で企業行動憲章を3年ぶり、同実行の手引きを6年ぶりに改定した。改定にあたって、4月の企画部会(部会長:吉田豊次武田薬品工業常務取締役)、社会的経営責任部会(部会長:鍛治舍巧パナソニック常務役員)の合同会合で、企業行動憲章WGを発足させ、ISO 26000(後述)等の国際的動向や国内の法令改正等を踏まえた検討を行い、9月の委員会でとりまとめた。
また、10月の「企業倫理月間」にあたり、米倉会長から全会員に「企業倫理徹底のお願い」を呼びかけた。さらに、企業倫理トップセミナーならびに関西企業倫理セミナ―を開催し、改定した憲章ならびに実行の手引きの周知を図り、企業倫理の徹底とCSR推進を働きかけた。12月には、海外の関係企業等にも普及を図る視点から、同憲章ならびに実行の手引きを英訳し、公表した。

(2)ISO 26000(社会的責任に関する国際規格)の発行と国内への周知

社会的責任経営部会では、ISO対応チーム(座長:鈴木均日本電気CSR推進部長)を中心に、11月に発行したISO 26000(社会的責任に関する国際規格)の策定と今後の普及、促進に積極的に関わった。ISO 26000の最終案を固めた作業部会第8回総会(5月、於:コペンハーゲン)の結果を受けて、7月と9月に東京と大阪において説明会を開催するとともに、(一社)日本経団連事業サービスと連携し、2月と3月に、実務担当者向けのワークショップを実施した。

(3)実効ある消費者政策の推進

消費者政策部会(部会長:室町正志東芝副社長)では、6月に全国消費者団体連絡会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、12月に消費者庁福嶋浩彦長官を招き、今後の消費者政策のあり方等について、消費者団体や政府と意見交換を行った。
また、消費者委員会の池田弘一委員(アサヒビール相談役)や消費者委員会における意見陳述を通じて、消費者と事業者がWIN−WINの関係となる消費者行政を推進するよう、消費者庁や消費者委員会に働きかけた。

(4)「社会的責任に関する円卓会議」への参画

「社会的責任に関する円卓会議」に行政、消費者団体、労働組合、NPO・NGO、金融等のステークホルダーとともに参画し、「私たちの社会的責任宣言」(2010年5月)、「安全・安心に向けた持続可能な事業に向けた協働戦略」(2011年3月)を策定した。また、同円卓会議の「協働プロジェクト」として、2011年2月に、実行委員会の幹事として、消費者団体、文部科学省とともに「消費者・市民教育モデル事業(消費者教育フェスタ)」を開催した。

3.社会貢献推進委員会

(古賀信行共同委員長)
(佐藤正敏共同委員長)

(1)「新しい公共」の推進等に寄与する社会貢献活動のあり方の検討

政府における「新しい公共」推進の動きに対応し、社会貢献担当者懇談会(座長:嶋田実名子花王理事)では、4月、政府の「『新しい公共』円卓会議」の委員から、議論の模様について説明を聞くとともに、産業界の対応等について意見交換を行った。また、10月、内閣府の山内健生審議官を招いて社会貢献推進委員会を開催し、「『新しい公共』の概要と今後の各府省の施策」について説明を聴くとともに、幅広い主体が社会を支える手法について懇談した。

(2)市民公益税制の拡充への働きかけ

さらに、6月、同懇談会を中心に、政府における企業市民税制の見直しへの対応について検討を行った。その検討を踏まえ、社会貢献推進委員会として「市民公益税制に関する平成23年度税制改正要望」をとりまとめ、税制委員会と連携して、その実現に向けて政府に働きかけた。その結果、平成23年度税制改正大綱において、所得税税額控除制度等寄付税制の拡充が盛り込まれた。

(3)内外の動向を踏まえた社会貢献活動の検討

同懇談会では、企業活動における社会貢献活動の位置付けを強めるうえで、社会貢献活動の広報のあり方やISO26000(社会的責任に関する国際規格)の中核主題のひとつである「コミュニティへの参画およびコミュニティの発展」の利活用について、有識者から説明を聞き、意見交換を行った。

(4)東日本大震災への対応

米倉会長を本部長とする「東日本大震災対策本部」のもと、1%(ワンパーセント)クラブ等と協力して義援金・支援金や救援物資の提供を会員に呼びかけるとともに、「救援物資ホットライン便」を立ち上げ、救援物資を被災地に届けた。

(5)2009年度社会貢献活動実績調査

2009年度の社会貢献活動の実績(支出額、制度整備、具体的な活動)について調査し、10月に公表した。

(6)社会貢献基礎講座の実施

(一社)日本経団連事業サービスと連携し、社会貢献基礎講座を実施した。

4.政治委員会

(大橋光夫委員長)

(1)個人寄付の促進策に関する検討

今後の政治資金のあり方を考える上で、個人寄付の促進が不可欠の課題であることから、企画部会(部会長:桂靖雄パナソニック副社長)において、わが国における政治資金の課題、各国の政治資金制度の現状等について、有識者からのヒアリングを中心に検討を重ねた(10月、11月、12月)。

(2)政党との政策対話

政党幹部との間で会合を開催し、重要政策課題をめぐり意見交換を行なった。

  1. 民主党との会合
    • 民主党首脳との懇談会(8月)
    • 政策テーマ別会合(11月)
  2. 自由民主党との会合
    • 自由民主党首脳との懇談会(9月、2011年2月)
  3. 公明党との会合
    • 公明党首脳との懇談会(10月)

(3)閣僚との懇談会

(4)政治関連調査等

政治情勢、政治資金等に関する情報収集等を実施した。

5.教育問題委員会

(〜5月27日 蛭田史郎共同委員長)
(5月27日〜 川村隆委員長)
(石原邦夫共同委員長)

(1)産業界の求めるグローバル人材の具体像と大学教育のあり方に関する検討

産業界が求める人材の具体像と大学教育の内容に乖離があるとの指摘を受け、産業界の求めるグローバル人材の具体像や大学教育への期待、および大学生が社会に出るまでに身につけるべき職業意識や必要な知識・能力について産業界の立場から検討した。
その一環として、経団連会員及び地方別経済団体会員を対象に、2010年秋に「産業界の求める人材像と大学教育に関する期待に関するアンケート」を実施したほか、企画部会(部会長:岩波利光日本電気副社長)において、文部科学省による大学改革への取り組みや、各大学におけるグローバル人材の育成に向けた取り組み、企業におけるグローバル人材の採用の現状と育成・活用における課題等について説明を聴き、提言とりまとめの参考とした。また政府の「国際化拠点整備事業」(グローバル30)採択13大学と協力して、グローバル人材育成に向けた課題を検討するため「G30産学連携シンポジウム」を開催した(2010年8月)。

(2)企業の初等中等学校に対する教育支援活動を推進

企業が出前授業を通じて小中学校、高校の授業に直接関わり、児童・生徒の職業意識や、社会・技術・環境等に対する意識を高めていくことが求められていることから、「教育と企業の連携推進ワーキング・グループ」(座長:小川理子パナソニック社会文化グループゼネラル・マネージャー)では、企業の教育支援活動の普及策について検討した。その一環として、学校と企業を繋ぐ教育コーディネーター組織や、子供の理科離れ対策について検討している組織の代表を招き説明を聴いた他、会員企業が取り組んでいるキャリア・職業教育、環境・理科教育プログラムについてアンケートを実施した。

(3)中央教育審議会等への対応

中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会の委員に就任した岩波利光企画部会長を通じて、産業界の意見反映に努めた。また、2010年6月及び2011年3月には、文部科学省による国立大学法人のあり方、および高校教育のあり方に関するヒアリングに出席し産業界の視点で意見を述べた。

6.防災に関する委員会

(〜5月27日 數土文夫共同委員長)
(木村恵司共同委員長)
(5月27日〜 小野寺正共同委員長)

従来よりの首都直下型地震対策に加えて、近年、頻発している集中豪雨等の大規模水害対策の検討を進めた。
まず、11月、田中淳東京大学総合防災情報研究センター長(兼同大学大学院情報学環教授)より、首都圏大規模水害の影響ならびに対応策について、地震対策との比較や被害想定のシミュレーションを交えた説明を聞いた。加えて、2011年1月、東祥三内閣府副大臣(金融、郵政改革、国際平和協力、拉致問題、防災、原子力安全)、ならびに、越智繁雄内閣府参事官(地震・火山・大規模水害対策担当)より、国における大規模水害と首都直下型地震への取組みの現状と課題について説明を聞いた。
また、企業における地震、水害への取組み状況について、提言「首都直下地震にいかに備えるか」の「企業に求められる地震対策の10箇条」に基づき、アンケート調査を実施した(9月)。地震対策においては、訓練の実施や社内での防災意識の向上、備蓄の確保等等多くの項目で対策を実施済みとの回答は8割に上っており、多くの企業で地震対策が進んでいることを確認した。一方、水害対策においては、家族の安否確認手段の多層化等地震と同様の対策になるものを除き、サプライチェーンの支援強化や地元自治体との連携強化等複数の項目で対策を実施済みとの回答は2〜4割にとどまり、更なる対策強化の必要性を示唆する結果となった。

○経営労働関係

1.経営労働政策委員会

(大橋洋治委員長)

本年度は3回の会合(2010年8月30日、11月10日、12月14日)を通じて、春季労使交渉・協議における経営側の基本姿勢と、雇用・労働に関する諸問題に対する考え方について総合的に検討し、「2011年版経営労働政策委員会報告」(2011年1月)を取りまとめた。
「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」を副題とする本報告では、法人への重い税負担や、労働市場の柔軟性を損ねる規制強化等、国際的なイコール・フッティングの確保に向けた取り組みが遅れている点を指摘し、その早急な改善を訴えるとともに、企業は、海外市場の需要を積極的に取り込む等、「成長」をキーワードとして、企業活動活性化への取り組みを推進することが必要であるとした。加えて、グローバルな事業展開を担う人材の確保・育成と、世界的に適材適所の人事運用を行うことの重要性を主張した。
今次労使交渉・協議では、グローバルな競争市場における自社の立ち位置を確認したうえで、自社の競争力を高める方策についての協議が求められるとした。また、国内事業立地の維持を図ろうとすれば、賃金より雇用を重視して考える必要があり、とりわけ、地方に事業拠点を置く中堅・中小企業では、雇用を最優先した交渉を継続せざるを得ず、賃金改善を行う企業は少ないとみられるとした。これらのことから、今次労使交渉・協議では、定期昇給の維持を巡る賃金交渉を行う企業が大半を占めると見通しを示した。
なお、本報告を周知するため、地方別経済団体・業種団体における講演を62回実施した。

2.雇用委員会

(〜5月27日 鈴木正一郎委員長)
(〜5月27日 国際労働委員会 立石信雄委員長)
(5月27日〜 篠田和久委員長)

(1)求職者支援制度創設への対応

雇用保険給付を受給できない求職者を対象に職業訓練と生活支援給付を行う新たな「求職者支援制度」の創設に向けた労働政策審議会における審議に際し、雇用におけるセーフティネットの充実の視点から現行の暫定的な仕組みを恒久化すべきこと、また、早期の就職への支援体制を整備すること、その際に、制度の効率的・効果的な運用を行っていく必要性等を主張し、新法案に反映させた。

(2)雇用保険制度の見直しへの対応

労働政策審議会における雇用保険制度の見直しの議論に際し、セーフティネットの充実と、現在の財政状況を加味した適正な負担の在り方の視点から、必要な見直しを行うことを主張し、改正法に2012年度からの標準料率の引き下げ等が盛り込まれた。また、雇用保険二事業については、政府の事業仕分け結果を踏まえつつ、二事業全体の効果的・効率的な運用に向け、同事業の直接的な利用者であり、かつ、財源の拠出者である事業主の意見を最大限尊重しながら不断に見直していくことの必要性について主張した。

(3)新卒者雇用を巡る動きへの対応

昨今の学生の就職活動の早期化に関する関係方面からの指摘も踏まえ、新卒採用検討ワーキング・グループ(座長:橋本浩樹王子製紙取締役専務執行役員)において新卒採用の在り方について検討を行い、報告書『新卒者の採用選考活動の在り方について』(2011年1月)を取りまとめた。同報告書を踏まえ、「選考活動」より前に行われる「広報活動」の過熱化を是正すべく、その起点を卒業・修了学年前年の12月1日以降と定める等、3月に『倫理憲章』について大幅な改定を行い(2013年度入社以降の新卒者を対象)、早期化への対応を図った。

(4)高齢者雇用を巡る動きへの対応

「希望者全員の65歳までの雇用確保」が『新成長戦略』に盛り込まれたこと等を踏まえ、雇用政策部会(部会長:橋本浩樹王子製紙取締役専務執行役員)において、今後の高齢者雇用の在り方に関する検討を開始した。

(5)国際労働機関(ILO)への対応

6月2日から18日まで、スイスのジュネーブにおいて第99回ILO総会が開催され、事務局員4名を派遣した。同総会では、HIVおよびAIDSに罹患した労働者の権利保護や、効果的な予防策等について討議を行い、出来上がった「勧告」をほぼ全会一致で採択した。また、家事労働者のディーセント・ワーク促進や、雇用確保に関して各国が遂行すべき政策やILOの役割について討議が行われた。
事前に各種議題に臨む使用者側の見解について審議を行うとともに(5月)、参加者から報告を聴取した(7月)。

(6)海外の労使関係等に関する情報収集

9月、中国の弁護士を招き、中国における外資系企業の労働紛争の実態と対策について説明を聞くとともに意見交換した。
2011年1月、オーストラリアの労働コンサルタントを招き、オーストラリアにおける最近の労使関係の変化と対応策について説明を聞き、意見交換を行った。

3.人事・労務委員会

(〜5月27日 指田禎一共同委員長)
(〜5月27日 市野紀生共同委員長)
(5月27日〜 鳥原光憲委員長)

(1)経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方に関する報告書の取りまとめ

国際競争の激化や少子・高齢化の進行、雇用形態の多様化といった経営環境の変化にともない、組織間・従業員間の一体感の醸成や企業内における技能・技術、ナレッジの伝承、ミドルマネジャーをめぐる問題の解決等、新たな人事労務マネジメント上の課題が生じていることから、政策部会(部会長:松本智日本たばこ産業執行役員人事責任者)において、専門家・有識者によるヒアリングや22社の企業事例の聴取を通じて、職場における新たな諸課題に対する具体的な対応策について検討し、報告書「経営環境の変化にともなう企業と従業員のあり方」(2010年5月)を取りまとめた。

(2)ミドルマネジャーをめぐる現状課題への対応策の検討

職場におけるミドルマネジャー(40歳前後の管理職)の役割の重要性が高まる一方、プレイング・マネジャー化等もあり、マネジメント力、コミュニケーション力、部下指導力の低下等、ミドルマネジャーの育成・強化が喫緊の課題となっている。そこで、会員企業がミドルマネジャーをめぐる課題に対応する際の参考となる報告書を作成するため、ミドルマネジャーをめぐる現状課題の把握等を目的としたアンケート調査や、政策部会において有識者や企業事例のヒアリング等を行った。

(3)中央最低賃金審議会に関する対応

厚生労働省中央最低賃金審議会における2010年度地域別最低賃金額改定の目安審議に関して、使用者側委員から審議状況等を聞くとともに、2010年度目安答申に向けた使用者側の対応方針について了承した。

4.労働法規委員会

(三浦惺委員長)

(1)有期労働契約法制の見直しに対する取組み

労働法企画部会(部会長:庄司哲也日本電信電話取締役総務部門長)では、労働政策審議会で検討が進められている有期労働契約法制の見直しの議論に対して、産業界としての基本的な考え方を検討し、使用者側委員を通じて意見反映に努めた。

(2)民法(債権関係)改正に対する取組み

法制審議会で検討が進められている民法(債権関係)改正の議論に対して、労働法制の立場から検討し、経済法規委員会と連携して意見反映に努めた。

(3)仕事と生活の推進に向けた取組み

内閣府に設置されている仕事と生活の調和連携推進・評価部会において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章・行動指針・数値目標」の新たな政労使合意および「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート」の改定に際し、規制強化や企業への負担とならないよう検討し、使用者側委員を通じて意見反映に努めた。

(4)安全衛生に関する取組み

職場におけるメンタルヘルス対策や受動喫煙防止対策等、労働政策審議会における労働安全衛生法の見直しの議論に対して、労働安全衛生部会(部会長:三木眞三菱マテリアル常務取締役)を中心に実務的な検討を行い、使用者側委員を通じて意見反映に努めた。
また、国際労働機関(ILO)の第99回総会において取り上げられた「HIVおよびAIDSと仕事の世界」について日本の経済界として意見表明し、勧告の取りまとめに努めた。

(5)労働災害に関する労働基準法規則、労災保険法令改正への対応

労働災害に関わる業務上の疾病の範囲の見直しおよび外貌障害に関する障害等級認定基準の見直しにあたり、産業界としての考え方を検討し、それぞれの公聴会において使用者側としての見解を表明した。

(6)改正育児・介護休業法の省令・指針案への対応

改正育児・介護休業法の全面施行(2010年6月30日)に向けた省令・指針案の審議に際し、企業の実態を踏まえたものとなるよう検討し、労働政策審議会において使用者側委員を通じて意見反映に努めた。

(7)企業の福利厚生のあり方についての検討

各企業の具体的な取組み事例をもとに、福利厚生が従業員の安心を確保していくために果たす役割を整理し、報告書「課題解決型の福利厚生の実現に向けて」(2010年10月)を取りまとめた。

(8)第3次男女共同参画基本計画策定への対応

政府の第3次男女共同参画基本計画策定の過程で示された基本的な考え方(中間報告)の内容を検討し、パブリックコメント等を通じて意見反映に努めた。

5.中小企業委員会

(澤部肇委員長)

(1)中小企業における人材の確保・定着・育成に関する報告書の取りまとめ

中小企業における円滑な人材の確保や定着、育成を促す観点から、「中小企業における人材の確保・定着・育成に関する報告書」(2010年7月)を取りまとめ、周知した。
同報告書では、経営者自らが説明会で自社の魅力を伝えることや、工夫を凝らした会社説明会の実施、教育機関への積極訪問等、中小企業ならではの取り組みの紹介や、教育機関・政府等に求められる施策等を掲げた。

(2)中小企業の海外展開に向けた効果的な支援策の検討

急速な円高の進行による取引先の海外移転の高まりや、少子・高齢化にともなう国内市場の縮小への対応等により、中小企業の海外需要の取り込みの重要性が一層高まっている。そこで、委員会において、有識者・専門家による講演や海外展開により成長している中小企業の取り組み事例のヒアリング等を通じて、中小企業が海外展開を行う上での課題の把握や、国、自治体、支援機関等による中小企業の支援政策のあり方について検討を行った。

6.国民生活委員会

(〜5月27日 岡部正彦共同委員長)
(岡本圀衞共同委員長)
(5月27日〜 川合正矩共同委員長)

強毒性の鳥由来・新型インフルエンザ(以下「新型インフルエンザ」)発生に備えた政府の対策の再構築に向けて、アンケート調査(人事・労務に関するトップ・マネジメント調査:2010年9月)を実施し、企業の新型インフルエンザ対策への取組み状況を把握した。また、2011年3月には、田代眞人・国立感染症研究所新型インフルエンザウイルス研究センター長を来賓に迎え、新型インフルエンザをめぐる国内外の最新の状況について説明を聞く機会を設け、会員企業・団体への情報提供に努めた。
他方、政府に対しては、新型インフルエンザ対策の再構築の早期とりまとめを要請する等適宜意見交換を行った。

7.少子化対策委員会

(斎藤勝利共同委員長)
(前田新造共同委員長)

(1)子育て支援に関わる政府検討への対応

政府の子育て支援の制度・財源の一元化に向けた審議に際し、「子ども・子育て新システム構築に向けた要望」(2010年6月)を日本商工会議所と共同で取りまとめ、特別会計の創設や企業の追加負担に関わる問題指摘を行った。さらに、内閣府の審議会において、経団連代表委員を通じ、上記の問題指摘を行うとともに、待機児童の解消に資する制度改革の必要性を主張する等、法律案要綱の策定に向け、経済界の意見反映に努めた。また、企画部会(部会長:高尾剛正住友化学専務執行役員)や所管省庁の担当政務との会合を通じ、政府案に対して経済界から問題提起を行った。

(2)「家族の日」「家族の週間」にちなんだ活動協力

会員企業に対し、11月の「家族の日」「家族の週間」にちなんだ活動協力を呼びかけるとともに、各社の子育て支援やワーク・ライフ・バランスに関わる活動事例を集約し、政府・マスコミほか、関係各方面に配布。企業のワーク・ライフ・バランスの推進に向けた積極的姿勢を広く示した。

○国際関係

1.貿易投資委員会

(佐々木幹夫委員長)
(芦田昭充共同委員長)

(1)アジア太平洋地域における経済統合の推進

提言「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」(2010年6月15日)をとりまとめ、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を含め、アジア太平洋地域における経済統合の推進を関係方面に働きかけた。10月には、APEC首脳会議に向けての緊急提言「経済連携協定の一層の推進を改めて求める」をとりまとめるとともに、11月には、経済3団体による緊急集会を開催し、決議「TPP交渉への早期参加を求める」を採択した。10月、12月には、経済連携推進委員会と合同会合を開催し、それぞれ経済産業省の佐々木伸彦通商政策局長、西山英彦大臣官房審議官を招き、TPPを含むわが国の経済連携の推進について説明を聞いた。

(2)多角的自由貿易体制の維持・強化

2011年3月に委員会を開催し、北島信一在ジュネーブ国際機関代表部大使より、WTOドーハ・ラウンド交渉の現状と見通し等について聞いた。また、2010年9月に会合(座長:長谷川公敏サービス貿易自由化交渉に関する懇談会座長)を開催し、アレッサンドロ・ハラWTO事務局次長を招き、ルール交渉の現状を中心にドーハ・ラウンドの状況ついて説明を聞くとともに意見交換した。さらに、米国サービス産業連盟主催の「グローバル・サービス・サミット」(2010年9月、於:ワシントン)に参加するとともに、各国サービス産業団体と共同で声明を発出し、ドーハ・ラウンドの妥結に向け交渉の活性化を求めた。

(3)通商戦略のあり方に関する検討

2011年1月より、企画部会(部会長:笹川隆三菱電機常務執行役)において、有識者と懇談する等通商戦略のあり方に関する検討を行った。3月には経済連携推進委員会との合同会合を開催し、木村福成慶応義塾大学教授よりTPPを中心とする通商戦略について説明を聞くとともに、提言案を審議した。

(4)投資環境の整備に向けた取り組み

提言「グローバルな投資環境の整備のあり方に関する意見」(2008年4月)の実現に向けて、政府の対外投資戦略会議(委員:笹川隆貿易投資委員会企画部会長)を通じ、投資協定の締結推進等に関する経済界の意見が反映されるよう働きかけた。

(5)実効ある安全保障貿易管理制度に向けた制度の再構築

日米両国政府に対し輸出管理制度の抜本的な見直しを求めた日米財界人会議(10月、於東京)の共同声明のとりまとめに協力した。また、2011年2月に輸出管理タスクフォース会合を開催し、(財)安全保障貿易情報センターより、関係法制度の見直しに関する考え方について説明を聞いた。

2.国際協力委員会

(槍田松瑩委員長)
(矢野薫共同委員長)

(1)アジア成長戦略の推進

経済連携推進委員会、アジア大洋州地域委員会、日本ベトナム経済委員会、日本インドネシア経済委員会、日タイ貿易経済委員会等と連携し、経済統合とインフラ整備を通じて、アジア諸国の成長に貢献し、自らも成長するという「アジア成長戦略」に基づいて、各種活動を行った。
具体的には、提言「国際貢献の視点から、官民一体で海外インフラ整備の推進を求める」(10月)と「海外インフラ展開のための金融機能の強化を求める」(12月)を取りまとめ、政府に対し、円借款執行の迅速化、ODA予算の増額、国際協力機構(JICA)の海外投融資の再開や国際協力銀行(JBIC)機能の強化等、海外インフラ整備に貢献する開発スキームの改革を働きかけた。
また、「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて−東アジア・サミットに向けたメッセージ−」(10月)を取りまとめ、槍田委員長を団長とするASEAN政策対話ミッションが同サミットの機会にハノイを訪問し、ズン首相を始めとするベトナム政府および党の要人に対してこれを伝えるとともに、同国のインフラ整備のための関連法制度の整備を働きかけた(10月)。
さらに、アジア域内のインフラ整備に域内の民間資金を活用する観点から、「アジア債券市場整備の加速を求める」(12月)を取りまとめ、関係各方面に働きかけを行った。これに先立ち、シンガポール通貨監督庁等を招いてアジア債券市場シンポジウム(10月)を開催し、債券市場整備の推進に向けた取り組みに関する官民の意見を聞いた。

(2)官民連携(PPP)によるインフラ整備の推進

  1. パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合との連携
    政府のパッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合(議長:仙谷官房長官、枝野官房長官)と連携し、日本企業が主体となるいわゆるジャパン・イニシアティブによる海外インフラ・プロジェクトの形成および展開を推進した。その一環として、同大臣会合に加藤日本ベトナム経済委員会共同委員長、朝田日本・インドネシア経済委員長が、それぞれベトナムとインドネシアでのインフラ整備への貢献策について意見陳述を行った(10月、2011年2月)。
  2. 外務省経済外交推進本部との連携
    在外公館の具体的支援を得て、わが国企業のインフラ・プロジェクトの受注を促進するため、外務省経済外交推進本部(本部長:前原外務大臣、松本外務大臣)との連携のための枠組み構築について、福林政策部会長(住友化学代表取締役専務執行役員)と伴野外務副大臣との間で合意した (2011年1月)。

(3)BOP(低所得層)ビジネスの推進

低所得層の社会的課題の解決に貢献するBOPビジネスを推進するため、日本貿易振興機構(ジェトロ)、国際協力機構(JICA)と共催でシンポジウムを開催し、グラミン銀行のユヌス総裁(当時)が基調講演を行った(7月)。

3.OECD諮問委員会

(〜6月30日 本田敬吉委員長)
(6月30日〜 斎藤勝利委員長)

経済協力開発機構(OECD)加盟国経済団体で構成される民間諮問機関 Business and Industry Advisory Committee to the OECD (BIAC、本部パリ)を通じて、わが国経済界の意見をOECDの取組みに反映させるべく、以下の活動を行った。

(1)BIAC活動の企画・運営への参画

5月のBIAC総会ならびに10月のBIAC理事会に斎藤委員長が参加し、わが国経済界の立場から意見を述べた。

(2)BIAC・OECD会合への参加、提言の作成

わが国企業関係者が、60回を超えるBIACおよびOECDの会合に参加するとともに、OECD多国籍企業行動指針の改訂等、企業活動に係るルール等に関し、わが国経済界の意見が反映されるよう、適宜意見を取りまとめ、BIACに提出した。

(3)国内会合の開催

BIAC、OECDにおける検討状況の国内議論への還元を図るとともに、国際経済金融情勢を把握すべく、白井さゆり慶應義塾大学総合政策学部教授(6月)、八木毅外務省経済局長(8月)と懇談した。2011年3月には、BIAC本部の活動について報告会を開催した。また、上記OECD多国籍企業行動指針の改訂に関し、OECD多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォースを開催し(4月、8月、10月、12月)、OECD・BIACにおける検討状況を把握するとともに、適宜、見解を取りまとめ、BIACならびに日本政府に働きかけた。

(4)広報活動

BIACおよびOECDの活動をわが国経済界に広く紹介すべく、機関誌(「BIAC NEWS」)、小冊子(「BACの組織と活動」)を発行した。

4.経済連携推進委員会

(大橋洋治委員長)
(勝俣宣夫共同委員長)

(1)日中韓自由貿易協定の推進

  1. 提言「日中韓自由貿易協定の早期締結を求める」の公表(11月)
    企業へのアンケート結果をもとに、標記提言を取りまとめ、物品貿易、サービス貿易、投資、知的財産権、原産地規則、環境エネルギー、ビジネス環境整備等を含む包括的な自由貿易協定の早期実現を関係各方面に働きかけた。
  2. 日中韓FTA産官学共同研究への参加
    日中韓FTA産官学共同研究(5月 於ソウル、9月 於東京、12月 於中国威海)に参加し、日本の経済界の立場から意見陳述を行った。
  3. 第2回日中韓ビジネス・サミットの開催(5月)
    日中韓首脳会議の開催にあわせて、中国国際貿易促進委員会、全国経済人連合会(韓国)と共に韓国済州島でビジネス・サミットを開催した。会議では、日中韓FTAの推進、環境エネルギー問題、域内の産業協力、観光振興等に係る協力について議論し、共同声明を取りまとめ、鳩山総理大臣、温家宝首相、李明博大統領に直接手交した。
  4. 委員会の開催(6月)
    経済産業省の貞森恵佑通商交渉官より、日中韓FTAの実現に向けた政府の取り組みについて説明を聞いた。

(2)TPP参加への取り組み

  1. 提言「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」(6月)の公表
    標記をとりまとめ、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を含め、アジア太平洋地域における地域経済統合の推進を関係方面に働きかけた。
  2. 緊急提言「経済連携協定の一層の推進を改めて求める」(10月)の公表
    APEC首脳会議に向けて標記をとりまとめ、わが国がAPEC首脳会議でTPP交渉への参加を表明し、国を開く姿勢を内外に鮮明にすることを、関係方面に働きかけた。
  3. 委員会の開催(10月、12月)
    貿易投資委員会との合同会合を開催し、それぞれ経済産業省の佐々木伸彦通商政策局長、西山英彦大臣官房審議官を招き、環太平洋経済連携協定(TPP)の推進での政府の取り組みについて説明を聞いた。
  4. 決議「TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への早期参加を求める」(11月)の公表
    経済3団体による緊急集会を開催し、標記を採択した。

(3)日モンゴル経済連携協定の実現に向けた取り組み

日モンゴル経済連携協定産官学共同研究(6月 於ウランバートル、11月 於東京、2011年3月 於ウランバートル)に参加し、日本の経済界の立場から意見陳述を行った。

(4)経済連携協定見直しへの協力

日インドネシア経済連携協定、日マレーシア経済連携協定の見直しに関し、経済産業省が実施したアンケート調査に協力した。

5.G8ビジネス・サミット

4月にカナダのオタワで開催されたG8ビジネス・サミットに御手洗会長、米倉評議員会議長、渡副会長が参加した。世界経済をめぐる諸課題について意見を交換するとともに、市場に対する長期的な信頼の回復、貿易の促進と保護主義の排除、気候変動に関する地球規模の対応に関し、経済界の見解を共同宣言に取りまとめ、G8サミットで議長を務めるカナダのハーパー首相に手交した。
6月にカナダのトロントで開催されたG20ビジネス・サミットには、米倉会長が参加した。景気後退と回復、金融市場のリスクと規制、持続的成長の推進力の3つのテーマをめぐり意見を交換するとともに、G20各国財務大臣およびG20サミットで議長を務めるカナダのハーパー首相との対話の機会がもたれた。11月に韓国のソウルで開催されたG20ビジネス・サミットには、米倉会長が参加し、経済情勢等をめぐり各国の参加者と意見を交換した。

6.APEC CEOサミット

2010年のAPEC日本年にあたり、11月に、議長国の経済界を代表して、米倉会長の主催により、「APEC CEOサミット2010」を横浜で開催した。2日間にわたる会議には、海外からの来訪者約450名を含む900名以上が参加し、「世界の成長の原動力としてのアジア太平洋−経済危機後の繁栄を目指して」をテーマに、14のセッションにおいて、APEC首脳、経団連副会長、APEC参加国・地域の主要企業のCEOや、国際機関の代表や学識経験者も交えて、様々な角度から議論を深めた。
今次CEOサミットでは、新興国の台頭で世界経済の構造が大きく変化する中、アジア太平洋が世界経済の成長センターとして引き続き中心的な役割を果たしていくべきとの点で一致した。また、そのような役割を果たしていく上で、貿易・投資の一層の自由化が不可欠であり、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現に向けて、TPP(環太平洋経済連携協定)等地域経済統合の取組みを推進していくべきであるとの意見が数多く出された。
また、エネルギー・環境、イノベーションとICT、CSR等の分野における具体的連携の推進等について議論が行われた。さらに、制度・ルールの調和や統一を図り、シームレスな事業環境を整備していく上で、APECの果たす役割へ高い期待が示された。

APEC CEOサミット2010に参加したAPEC首脳
  • オーストラリア ジュリア・ギラード首相
  • チリ セバスティアン・ピニェラ・エチェニケ大統領
  • 中国 胡錦濤国家主席
  • 香港 曽蔭権行政長官
  • 日本 菅直人総理大臣
  • メキシコ フェリペ・カルデロン大統領
  • ニュージーランド ジョン・キー首相
  • フィリピン ベニグノ・アキノ3世大統領
  • シンガポール リー・シェンロン首相
  • 米国 バラク・オバマ大統領
  • ベトナム グエン・ミン・チェット国家主席

【地域別・国別委員会等】

北米

1.アメリカ委員会

(長谷川閑史委員長)
(村瀬治男共同委員長)

(1)日米の経済連携関係強化の推進

企画部会(部会長:本田敬吉イー・エフ・アイ会長)において、両国の新政権発足に伴う新たな経済対話枠組みの構築の見通しについて、7月に外務省、経産省を招いて説明を聞くとともに、早期の発足を働きかけた。その後、11月の日米首脳会談での合意による「日米経済調和対話」の発足を受け、外務省より対話の概要につき説明を聴取する(2011年1月)とともに、議題とすべき項目に関する意見を提出した(2月)。さらに、11月の米国中間選挙の結果を踏まえた米国の政治経済動向について、クリストファー・パディラ元米商務次官を招き、意見交換を行った(11月)。

(2)民間対話チャネルの強化に向けた米国政府・経済界・有識者との意見交換

ルース駐日米国大使と経団連幹部との定期会合につき、第2回を御手洗前会長のもとで(5月)、第3回を米倉会長のもとで(2011年3月)、それぞれ開催した。また、米国で事業活動を行う日系企業が留意すべき雇用法関連問題に関するセミナーを開催(4月)し、エプスタイン・ベッカー&グリーン法律事務所より説明を聞いた。また、企画部会において、ジーン・フアン フェデックス社チーフエコノミストより、米国経済動向について(9月)、ウィリアム・J・ラドシェル 元AOLタイムワーナーCTOより、米国情報通信産業の最新動向と世界経済へのインパクトについて(12月)、それぞれ聴取・懇談した。

(3)日米経済協議会への協力

第47回日米財界人会議(11月、於:東京)をはじめとする日米経済協議会の活動を支援した。

(4)米国議員団・青年政治家、日系米国人とわが国経済界との交流促進

米国連邦議員や若手政治家との懇談会(2010年9月、2011年2月)、日系米国人リーダー代表団との懇談会(2011年3月)を開催した。

2.カナダ委員会

(〜5月27日 青木哲委員長)
(5月27日〜 村瀬治男委員長)

(1)カナダ政府要人との政策対話

  1. ジョナサン・フリード駐日カナダ大使との懇談(10月)
    フリード大使が村瀬委員長を訪問し、日加経済問題をめぐり種々懇談した。懇談の中で、日加EPAについて、両国の産業界の意見を踏まえつつ今後も議論を行っていくことに合意した。

(2)カナダ経済界要人との政策対話

  1. マンレー カナダ経営者評議会(CCCE)理事長との懇談(6月)
    G20ビジネスサミット(於 トロント)の機会を捉え、日加関係強化の方策や、2005年の第2回会合以来中断している日加経済会議の再開等について意見交換を行った(米倉会長が出席)。

欧州

1.ヨーロッパ地域委員会

(横山進一共同委員長)
(小林喜光共同委員長)

(1)EUとの経済関係の強化・統合の推進

日・EU経済関係の強化・統合に向けて、日・EU EPAに関する第三次提言(2009年11月)等を踏まえ、欧州ビジネス協会との共同声明「日・EU定期首脳協議:今こそ経済統合協定(EIA)交渉を開始すべき」を公表した(4月)。ヴィタール・モレイラ欧州議会国際貿易委員長の来日の機会を捉え、EIAの実現を目指して、シンポジウム「日・EU経済関係の強化・統合に向けて」を開催した(2011年2月)。さらに、関係閣僚との懇談会ならびに下記(3)に掲げる欧州要人との懇談に際し、EIAの実現に向け働きかけを行った。企画部会(部会長:谷垣勝秀日立製作所執行役常務)を適宜開催し、日・EU首脳間の合意に基づく経済関係を包括的に強化・統合するための方策に関する政府間の共同検討作業の進捗状況について外務・経済産業両省から説明を聞くとともに、EIA交渉開始に向けた今後の取り組みをめぐり意見交換を行った。

(2)訪中東欧ミッションの派遣

7月、両共同委員長を団長とする訪中東欧ミッションをスロヴァキア、ルーマニア、ブルガリアに派遣し、イヴァン・ガシュパロヴィチ大統領、イヴェタ・ラディチョヴァー首相等(スロヴァキア)、トライアン・バセスク大統領等(ルーマニア)、ゲオルギ・パルヴァノフ大統領、ボイコ・ボリソフ首相等(ブルガリア)と懇談し、貿易・投資関係拡大の方途につき意見交換を行うとともに、日・EU EIAの実現に向けて理解を求めた。ミッションに先立ち、両共同委員長はブラッセルを訪問し、パブロ・サルバ欧州議会議員、欧州経済団体を束ねるビジネスヨーロッパ等と懇談した。

(3)政府、経済界要人等との政策対話

来日した要人との間で二国間経済関係の強化、日・EU経済関係の強化・統合のための方途等について懇談した。

  1. 欧州委員会:カレル・デ・グフト欧州委員(4月)、アラン・シーター対外関係総局局長(9月)、マウロ・ペトリチオーネ貿易総局局長(11月)、ジャン・リュック・ドゥマルティ貿易総局長(3月)
  2. 欧州議会:ハンス・ファン・バーレン対日交流議員団団長ほか(11月)
  3. 英国:ニック・アンスティー ロード・メイヤー・オブ・ロンドン(5月)、レオン・ブリタン英国首相付貿易顧問(11月)
  4. ドイツ:ヴェルナー・ホイヤー外務省国務相(8月)、ライナー・ブリューデレ経済・技術相(10月)
  5. フランス:ダヴィッド・アスリーヌ上院議員ほか(9月)
  6. スペイン:ホセ・ルイス・サパテロ首相、ミゲル・アンヘル・モラティノス外務・協力相、ミゲル・セバスティアン工業・観光・商務相、クリスティーナ・ガルメンディア科学・イノベーション相、ディアス・フェラン スペイン経団連会長(9月)
  7. ベルギー:イブ・レテルメ首相(4月)
  8. オランダ:ベルナルド・ウィンチェス オランダ産業連盟会長(11月)
  9. フィンランド:パーヴォ・ヴァユリュネン貿易・開発相(11月)
  10. ハンガリー:ベチェイ・ジョルト国家経済省次官(11月)
  11. スロヴァキア:フランティシェク・シェベイ国会外交委員長(11月)
  12. ブルガリア:ボイコ・ボリソフ首相、トライチョ・トライコフ経済・エネルギー・観光相、ツヴェタン・シメオノフ ブルガリア商工会議所会頭(2011年1月)
  13. クロアチア:ゴルダン・ヤンドロコビッチ外務・欧州統合相(9月)

(4)その他

  1. 駐欧州大使との懇談会(2011年2月)を開催し、日・EU関係の現状と課題、主要国の経済情勢等について聞くとともに意見交換を行った。
  2. 在京EU大使月例会(7月)において米倉会長が講演を行った。
  3. チェコ・日本技術デー(5月、於東京)にて小林共同委員長が挨拶を行った。
  4. 日本・スペイン・シンポジウム(2011年2月、於パンプローナ)において横山共同委員長が共同座長を務めた。
  5. 日・EUビジネス・ラウンドテーブルの活動に協力した。

○アジア・大洋州

1.アジア・大洋州地域委員会

(〜5月27日 土橋昭夫共同委員長)
(5月27日〜 川村隆委員長)
(宮内義彦共同委員長)

(1)アジア成長戦略の推進

国際協力委員会、経済連携推進委員会、日本ベトナム経済委員会、日本インドネシア経済委員会、日タイ貿易経済委員会等と連携し、経済統合とインフラ整備を通じて、アジア諸国の成長に貢献し、自らも成長するという「アジア成長戦略」に基づいて、各種活動を行った。
具体的には、提言「国際貢献の視点から、官民一体で海外インフラ整備の推進を求める」(10月)と「海外インフラ展開のための金融機能の強化を求める」(12月)を取りまとめ、政府に対し、円借款執行の迅速化、ODA予算の増額、国際協力機構(JICA)の海外投融資の再開や国際協力銀行(JBIC)機能の強化等、海外インフラ整備に貢献する開発スキームの改革を働きかけた。

(2)ASEANミッションの派遣

「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて−東アジア・サミットに向けたメッセージ−」(10月)を取りまとめ、同サミットの開催時に槍田副会長(国際協力委員長)を団長とするASEAN政策対話ミッションがハノイを訪問し、ズン首相を始めとするベトナム政府および党の要人に対してこれを伝えるとともに、同国のインフラ整備のための関連法制度の整備を働きかけた(10月)。
また、米倉会長を団長とするASEANミッションを、インドネシア、タイ、シンガポールに派遣した(2011年2月)。各国の官民首脳との会合を通じて、ASEAN+6や環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめとする地域経済統合、我が国の優れた技術を活用した官民連携によるインフラ整備、アジア債券市場整備に向けた方策等について各国首脳、経済界のトップと共通認識を形成すると共に、アジア地域の成長のための今後の協力方策について意見交換を行った。またスリンASEAN事務総長と懇談し、ASEAN連結性マスタープランの実現に向けて協力することで合意した。

(3)第2回日中韓ビジネス・サミットの開催(5月)

日中韓首脳会議の開催にあわせて、中国国際貿易促進委員会、全国経済人連合会(韓国)と共に韓国済州島でビジネス・サミットを開催した。会議では、日中韓FTAの推進、環境エネルギー問題、域内の産業協力、観光振興等に係る協力について議論し、共同声明を取りまとめ、鳩山総理大臣、温家宝首相、李明博大統領に直接手交した。

(4)日印経済関係の強化

  1. シン首相歓迎昼食会(10月)
    インドのシン首相の来日に際し、日本商工会議所、日印経済委員会とともに歓迎昼食会を開催した。日印経済関係の展望、インフラ整備での協力等に関するシン首相講演の後、日本側出席者との間で対印投資や技術移転の促進等につき懇談を行った。
  2. 第3回 日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム(BLF)(10月)
    シン首相の来日に合わせて、インド工業連盟(CII)との間で日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム(BLF)を開催し、日印包括的経済連携協定(CEPA)大筋合意を踏まえた日印経済関係の展望と課題、インドにおけるインフラ整備及び戦略分野における協力等につき意見交換を行った。また、その結果を共同報告書としてとりまとめ、米倉会長がインド側代表のムケーシュ・アンバニ リライアンス・インダストリー会長兼社長を伴って総理官邸を訪問し、菅総理およびシン首相に手交した。
  3. シャルマ・インド商工大臣及びインド工業連盟との懇談会(2月)
    日印包括的経済連携協定(CEPA)署名のため来日したシャルマ・インド商工大臣を招き、バルティア・インド工業連盟会長を始めとするビジネス・リーダー一行との懇談会を開催し、CEPA署名後の日印関係、インドにおけるインフラ整備、製造業における協力等をめぐり意見交換を行った。

(5)メコン実務ミッションの派遣(9月)

福林国際協力委員会政策部会長を団長、藤野アジア大洋州地域委員会企画部会長を副団長とするミッションが、ベトナムおよびカンボジアを訪問し、訪問先のベトナム・ハノイにおいて、ドン計画投資副大臣、ビエン商工副大臣、ドゥック交通運輸副大臣、ハー天然資源環境副大臣、ズン建設副大臣等とインフラ開発をめぐり意見交換を行った。また、カンボジア・プノンペンにおいて、フン・セン首相、ソック・アン副首相、チャム・プラシット商業大臣、トラム・イウ・テック公共事業・運輸大臣等と同国への中長期的な投資の可能性をめぐり意見交換を行った。

(6)経済連携協定、自由貿易協定への取り組み

経済連携推進委員会と連携し、以下の取り組みを推進した。

  1. 日中韓自由貿易協定
    日中韓FTA産官学共同研究(5月 於ソウル、9月 於東京、12月 於中国威海)に参加し、日本の経済界の立場から意見陳述を行った。
  2. 日モンゴル経済連携協定
    日モンゴル経済連携協定産官学共同研究(6月 於ウランバートル、11月 於東京、2011年3月 於ウランバートル)に参加し、日本の経済界の立場から意見陳述を行った。
  3. 日豪経済連携協定
    日豪EPA交渉会合(4月、2011年2月)にあわせて、交渉の状況や結果等について日本政府と情報共有を行った。

(7)アジア開発銀行(ADB)との協力

ASEAN域内のインフラ整備におけるADBとの連携強化を目的として、「ASEAN連結性マスタープラン」ならびに「アジア総合開発計画」におけるADBの取組みとわが国企業との連携をテーマとするセミナー(2011年2月)を共催した。

(8)アジア・大洋州地域駐在大使との懇談会

2011年3月に、帰国中のアジア・大洋州地域に駐在する日本国大使との懇談会を日本商工会議所とともに開催し、中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、豪州等の最近の政治・経済情勢ついて説明を受けるとともに、官民連携の推進やインフラ分野におけるわが国の協力可能性について意見交換を行った。

(9)要人との懇談

  1. スリンASEAN事務局長との懇談会(4月、10月)
    訪日したスリンASEAN事務局長と、ASEAN連結性マスタープランの推進、官民連携によるインフラ整備の方策等について意見交換を行った(4月は御手洗会長(当時)、10月は米倉会長が出席)。
  2. サイモン・クリーン 豪貿易担当大臣との懇談会(6月)
    日豪EPA推進に向けた諸課題、TPP(環太平洋経済連携協定)等環太平洋地域における経済連携の強化、2010年APECへの期待等について意見交換を行った。(米倉会長、副会長、他出席)
  3. ジョン・キーNZ首相との懇談(11月)
    APEC CEOサミットに出席したジョン・キーNZ首相と米倉会長が懇談し、TPPや気候変動への対応等について意見交換を行った。
  4. 豪州若手政治家との懇談(2011年3月)
    来日した豪州の連邦議員、州議会議員など若手政治家との間で、TPPや気候変動への対応、企業における女性の活用状況等について懇談した。

2.中国委員会

(中村邦夫共同委員長)
(宗岡正二共同委員長)

(1)温家宝総理との懇談会

5月、来日した温家宝総理一行を経団連会館に招き昼食懇談会を開催した。

(2)経団連訪中ミッションへの協力

中日友好協会の唐家セン(とう かせん)名誉顧問の招きにより、2009年6月の王岐山副総理一行との政策対話継続を目的に御手洗会長(当時)を団長とする経団連ミッションが、5月11日から15日まで訪中した。現地では、温家宝総理、李源潮共産党中央組織部長はじめ、政府・党、企業等の首脳と日中経済関係について、人的交流、環境・省エネ、FTAを中心に今後の協力をめぐり懇談した。
また、循環経済園区やエコシティを計画中の唐山市曹妃甸を視察した。

(3)日中経済協会活動への協力

9月、米倉会長が日中経済協会訪中代表団の最高顧問として訪中し、李克強副総理をはじめとする中国政府の首脳と日中経済関係の更なる拡大に向けた諸問題について意見交換を行った。

(4)程永華中国大使との昼食懇談会

4月に着任早々の程永華大使を招いて昼食懇談会を開催した。

(5)要人との懇談

6月陳国鷹唐山市長の米倉会長訪問
11月唐家セン中日友好協会名誉顧問との懇談
12月米倉会長の程永華大使訪問
2011年2月井頓泉中日友好協会副会長の米倉会長訪問

(6)中国委員会実務ミッションの派遣

3月末から4月初めにかけて、実務レベルのミッションを中国の浙江省に派遣した。

3.日本・インドネシア経済委員会

(〜5月27日 興津誠共同委員長)
(〜5月27日 辻亨共同委員長)
(5月27日〜 朝田照男委員長)

(1)ASEANミッションの派遣(2011年2月)

経団連会長ミッションがジャカルタを訪問し、ユドヨノ大統領、ブディオノ副大統領、ハッタ経済担当調整大臣、ヒダヤット工業大臣他の主要閣僚や、スリスト・インドネシア商工会議所(KADIN)会頭等のインドネシア官民要人と懇談し、6つの経済回廊、首都圏投資促進特別地域構想(MPA)におけるわが国経済界に対する期待を聞くとともに、具体的協力を進めるための方策について話し合った。

(2)日インドネシア経済合同フォーラム(10月)

米倉会長、松下経済産業副大臣、ハッタ経済担当調整大臣、ヒダヤット工業大臣、マリ商業大臣、スリストKADIN会頭ほかが出席し、インドネシアにおけるインフラ整備での協力について話し合った。その結果、6つの経済回廊構想における地熱発電、高効率石炭火力発電の推進、温室効果ガス削減に向けた二国間枠組みの協議開始、首都圏の優先的なインフラ整備等について合意した。

(3)首都圏投資促進特別地域に関する説明会(2011年1月)

在インドネシア日本国大使館、外務省、経済産業省、国土交通省の担当官から、ジャカルタ首都圏のインフラ整備での両国間協力の進め方について説明を聞くとともに、そのマスタープラン作成への日本企業の協力の可能性について懇談した。

(4)パッケージ型インフラ展開関係大臣会合への働きかけ(2011年2月)

インドネシアをテーマに開催された標記会合において、朝田委員長より、インドネシアでのインフラ整備のためにPPP(官民連携)スキームや二国間オフセット・メカニズム等の推進について要望した。

(5)要人との懇談

  1. ブディオノ副大統領との懇談(11月)
    米倉会長がAPEC首脳会議出席のため来日したブディオノ副大統領と、日インドネシア経済合同フォーラムの成果やインドネシアのインフラ整備でのPPPスキームの導入推進について懇談した。なお、ハッタ経済担当調整大臣、マリ商業大臣、ヒダヤット工業大臣、ルトフィ駐日大使が同席した。
  2. ゴーベルKADIN副会頭との懇談(7月)
    来日したゴーベル副会頭と同国への日本企業の投資促進等について懇談した。

4.日タイ貿易経済委員会

(〜5月27日 丹羽宇一郎共同委員長)
(5月27日〜 伊藤一郎共同委員長)
(5月27日〜 小林栄三共同委員長)

(1)ASEANミッションの派遣(2011年2月)

米倉会長を団長とするASEANミッションがバンコクを訪問し、アピシット首相、トライロン副首相、ゴーン財務大臣、カシット外務大臣、ポンティワー商務大臣等の政府首脳や経済界代表と、TPPや域内経済統合、タイのビジネス環境整備、メコン地域における両国官民連携によるインフラ整備、アジア成長戦略に基づく日タイの具体的協力のあり方等について意見交換した。

(2)要人との懇談

  1. ウィーラサック駐日大使との懇談(7月)
    ウィーラサック大使を本委員会に招き、タイ経済の順調な成長と貿易投資の概況、マプタプット問題の状況等について説明を受けた。
  2. ワッチャラ通商代表との懇談(8月)
    来日したワッチャラ代表と高速鉄道等の物流インフラ整備、環境技術を活用する分野等の日タイ協力の有望分野について意見交換を行った。
  3. チャイウット工業大臣、アッチャカー投資委員会長官との懇談(9月)
    来日したチャイウット大臣、アッチャカー長官を本委員会に招き、マプタプット工業団地での日系企業の事業再開とタイの優遇税制について説明を受けるとともに、サービス投資の規制緩和、電力コストの削減等、タイのビジネス環境整備について要望した。
  4. アピシット首相との朝食懇談(11月)
    タイ通商代表部と太平洋経済委員会主催の朝食懇談会において、小林共同委員長が、APEC首脳会議出席のため来日したアピシット首相とメコン地域開発をはじめとするASEANの連結性向上について意見交換を行った。
  5. ウィーラサック駐日大使との懇談(2011年1月)
    大使公邸において、伊藤一郎共同委員長と小林栄三共同委員長がウィーラサック大使とタイのインフラ整備や投資環境整備、第三国における日タイ協力の重要性について意見交換を行うとともに、安定的に事業を行うことのできる労働市場および政治的安定の維持について要望した。
  6. デュシット・タイ商工会議所会頭兼タイ貿易院会長との懇談(2011年2月)
    米倉会長が、来日したデュシット会頭と、ASEANミッションでの懇談テーマやタイの政治経済情勢について意見交換を行った。

5.日本ベトナム経済委員会

(〜5月27日 加藤進委員長)
(5月27日〜 加藤進共同委員長)
(5月27日〜 高橋恭平共同委員長)

(1)ASEAN政策対話ミッションの派遣(10月)

槍田副会長を団長とするミッションが、東アジア・サミットの開催にあわせてハノイを訪問し、ズン首相、ホアン商工大臣、フック計画投資大臣、ヴィエット越日友好議連会長、サン共産党政治局員、ロック商工会議所会頭ほかと会談した。ホアン大臣とフック大臣とは、大畠経済産業大臣の同席の下で会談し、官民政策対話の設置について合意した。また、広域インフラ整備への日本の参加ならびに原子力発電、レアアース分野での協力をめぐり意見交換を行った。

(2)メコン実務ミッションの派遣(9月)

福林国際協力委員会政策部会長を団長とするミッションが、ベトナムおよびカンボジアを訪問し、訪問先のハノイにおいて、ドン計画投資副大臣、ビエン商工副大臣、ドゥック交通運輸副大臣、ハー天然資源環境副大臣、ズン建設副大臣等とインフラ開発をめぐり意見交換を行った。

(3)パッケージ型インフラ展開関係大臣会合への働きかけ(10月)

ベトナムをテーマに開催された標記会合において、加藤共同委員長より、ベトナムでのインフラ整備推進のためのファイナンス支援強化や、制度・人材育成等ソフト面での協力の拡大について要望した。

(4)ベトナム投資フォーラムの開催(8月)

ダン・フイ・ドン計画投資副大臣、ダン・タィン・タム越日ビジネスフォーラム会長はじめベトナムの各省庁・経済界幹部より、インフラ整備推進を目的とするベトナムの新しい官民パートナーシップ(PPP)スキーム案について、具体的案件とともに説明を受けた。出席した加藤共同委員長、高橋共同委員長より、PPPスキームの迅速な実現に対する期待を表明した。

(5)日越共同イニシアティブ

ベトナムの投資環境改善を目的として、日本政府・経済界とベトナム政府との間で設置された枠組みである「日越共同イニシアティブ」に関し、ハノイで開催された第3フェーズの評価・促進委員会に、日本側共同議長として加藤共同委員長、ならびに高橋共同委員長が出席した。同委員会は、第3フェーズ行動計画の成果を高く評価するとともに、第4フェーズを2011年半ばから開始することを決定した。また、両共同委員長は、滞在中、フン副首相、サン共産党政治局員等を訪問し両国経済関係の強化について話し合った。
なお、評価・促進委員会に先立ち、西村あさひ法律事務所ホーチミン事務所首席代表の小口弁護士を本委員会に招き、ベトナム法制度整備の現状と課題について説明を聞いた(11月)。

(6)要人との懇談

  1. フック計画投資大臣との懇談(4月)
    来日したフック大臣と懇談し、最新のベトナム経済情勢やPPPスキーム導入の進捗状況について説明を受けた。また、同大臣より、日越共同イニシアティブ第3フェーズの最終評価に対する期待が表明された。
  2. ダン・フイ・ドン計画投資副大臣との昼食懇談(8月)
    来日したドン副大臣と、ベトナムのビジネス環境整備の課題について意見交換を行い、交通・電力面でのインフラ整備への協力について要望した。

(7)ベトナムの人材育成への協力

  1. 奨学金の授与(12月)
    本年もベトナム日本商工会およびホーチミン日本商工会と協力してベトナム人大学生への奨学金を給付した(ダナン大学、フエ大学、ホーチミン工科大学、ホーチミン人文科学大学)。
  2. 日本法普及プロジェクトへの支援
    2003年から明治大学・学習院大学等の民・商法学者が実施している、ベトナム国家大学(ハノイ)法学部の日本法講座に対し、資金協力を行った。

6.東亜経済人会議日本委員会

(上島重二委員長)

(1)東亜経済人会議の開催

12月、東京にて第38回東亜経済人会議を開催した。上島重二委員長と鄭世松東亜経済会議・台湾委員会副会長が議長を務め、双方合わせておよそ100名の代表が参加し、日台企業協力や観光等について議論を交わした。

(2)幹部会議の開催

7月、台北において日台双方の主要メンバーが参加する少人数の幹部会議を開催し、「海峡両岸経済協力枠組取決めと日台企業協力」、「観光分野の交流促進」等について忌憚のない意見交換を行った。会議のあと、新竹の国立工業技術研究院や鹿港民俗文物館を視察した。

7.日本・香港経済委員会

(〜5月27日 鈴木邦雄委員長)
(5月27日〜 芦田昭充委員長)

12月に日本・香港経済委員会を開催し、経済産業省通商政策局の貞森恵祐通商交渉官から中国経済の発展と香港の役割について説明を聴いた。

○中南米

1.中南米地域委員会

(佐々木幹夫委員長)

(1)中南米地域駐在大使との懇談会

11月に、帰国中の中南米地域に駐在する日本国大使との懇談会を開催し、わが国の中南米地域における各国の最近の政治・経済情勢ついて説明を受けるとともに、官民連携の推進やインフラ分野におけるわが国の協力可能性について意見交換を行った。

(2)在京中南米諸国大使との懇談会

12月に、米倉会長を座長として、在京の中南米地域諸国の大使との懇談会を開催し、各国の政治・経済情勢について説明を受けるとともに、わが国の中南米諸国への投資拡大の可能性について意見交換を行った。

(3)要人との懇談

コレア・エクアドル大統領(9月)、コロン・グアテマラ大統領(10月)、モラレス・ボリビア大統領(12月)をはじめとした政府要人と懇談を行った。

2.日本メキシコ経済委員会

(小枝至委員長)

(1)第29回日本メキシコ経済協議会

メキシコ国際企業連盟(COMCE)との間で、第29回日本メキシコ経済協議会(2011年2月、於:メキシコシティ)を開催し、カルデロン大統領、フェラーリ経済大臣、マジョルガ農牧大臣、ゲバラ観光大臣をはじめとする政府要人ならびに経済界首脳との間で、経済関係強化の方策について意見交換を行った。また、同協議会の前後に日墨産業協力の事例である自動車部品サプライヤーや、大規模インフラ、食品・農業の現場を視察し、新たな両国協力の可能性を探った。

(2)ビジネス環境整備委員会への働きかけ

日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)に基づき設置されているビジネス環境整備委員会の第5回会合(2011年2月、於:メキシコシティ)に、小枝委員長が出席し、メキシコのビジネス環境の改善に関する意見陳述を行った。

(3)ルイス経済大臣との昼食会

6月、来日中のルイス経済大臣を迎え、昼食会を開催し、メキシコ経済の現状、日墨EPA再協議の状況、日墨経済関係の拡大の展望等につき、説明を聞くとともに意見交換を行った。

(4)「日本メキシコ交流400周年」への協力

「日本メキシコ交流400周年」(2009年3月〜2010年12月)に小枝委員長が日本側実行委員長を務め、記念事業の認定等に協力した。

(5)日墨戦略的グローバルパートナーシップ研修計画への協力

外務省中南米局の要請に応じ、日本企業等からの派遣生募集に協力した。

3.日本ブラジル経済委員会

(槍田松瑩委員長)

(1)日伯貿易投資促進合同委員会への取り組み

両国官民のビジネス環境整備等を話し合う枠組みである「日伯貿易投資促進合同委員会」の第3回会合(2010年4月、於:ブラジリア)に向けて、「日伯経済関係強化のための基本的考え方」を取りまとめた。また、経団連代表を同会議に派遣し、ブラジル日本商工会議所と連携して、上記の考え方に基づき、ブラジルのビジネス環境改善を求めた。
また、第4回会合(2010年11月、於:東京)の開催にあたっては、移転価格税制、中古品輸入、ビザ問題等これまで改善に進展の見られなかったビジネス環境上の問題点の指摘とその改善を改めて要望した。なお、インフラ整備や資源開発の推進策についての日本側の基本的考え方を説明した。

(2)第13回日本ブラジル経済合同委員会

5月に、東京でブラジル全国工業連盟(CNI)とともに、第13回日本ブラジル経済合同委員会を開催した。世界経済危機後の新たな両国経済関係のあり方や、エネルギー・天然資源、先端技術・製造業、農業、インフラ等の分野における両国のビジネス機会等について意見交換を行った。

(3)ブラジル工業連盟(CNI)との懇談

11月に、槍田委員長がCNIのマスカレーニャス委員長と懇談し、第14回日本ブラジル合同経済委員会の開催について話し合った。

4.日本ベネズエラ経済委員会

(小島順彦委員長)

8月に、小島委員長が、ベネズエラでヘルムンド ベネズエラ日本経済委員会(JAVEC)委員長と懇談し、ベネズエラにおける民間企業の現状と、政治・経済・社会情勢について説明を受けるとともに、両国経済界の継続的な協力の必要性について意見交換を行った。

5.日本コロンビア経済委員会

(小島順彦委員長)

(1)ルイス・ギジェルモ・プラタ・パエス商工観光大臣との懇談会

7月に、プラタ商工観光大臣との懇談会を開催し、最近のコロンビア政治・経済情勢や、投資協定・租税条約交渉の進捗、EPA締結に向けた展望等について説明を受け、日本との協力関係強化について意見交換を行った。

(2)ルイス・ムニョス コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)会長の小島委員長表敬

11月に、ムニョスFNC新会長が、小島委員長を表敬訪問した。最近のコロンビアの経済情勢について説明を受け、第7回日本コロンビア合同委員会の開催可能性について意見交換を行った。

○中東・アフリカ

1.中東・北アフリカ地域委員会

(渡文明委員長)

(1)日本・アラブ経済フォーラム

12月、日本政府とアラブ連盟とともにチュニジアの首都チュニスにおいて、日本側から400人、アラブ側から700人以上の参加を得て、第2回日本・アラブ経済フォーラムを開催した。同フォーラムには、日本側より渡委員長(評議員会議長)、前原外務大臣、大畠経済産業大臣、アラブ側よりムーサ・アラブ連盟事務総長、アラブ諸国の閣僚等が出席し、産業振興、雇用推進、観光振興、貿易投資の自由化、エネルギー・環境問題への対応等について意見交換を行った。

(2)アラブ連盟加盟国の駐日大使との懇談会

12月、アラブ連盟加盟国駐日大使との懇談会を開催し、19カ国・地域の大使等の参加を得た。従来、石油・ガス資源の貿易・投資を中心とする日アラブ経済関係を多様化する方策について意見交換した。

(3)中東・北アフリカ地域駐在大使との懇談会

12月に、帰国中の中東・北アフリカ地域に駐在する日本国大使との懇談会(日本イラン経済委員会、日本アルジェリア経済委員会と共催)を開催し、日本政府の同地域における外交政策課題等について説明を聞き、意見交換を行った。

(4)「日本サウジアラビア産業協力フレームワーク」への協力

サウジアラビアの産業多角化や人材育成の協力の可能性を探るため、日本政府が設置した「日本サウジアラビア産業協力フレームワーク」の活動に協力した。

(5)要人との懇談

  1. イエメン:アル・カルビー外務大臣との懇談会(11月)
  2. オマーン:マッキー国家経済大臣との懇談(4月)
  3. パレスチナ:ファイヤード首相(11月)

(6)各国駐日大使との懇談

  1. イラク:ルクマン・フェーリ新駐日大使との懇談(8月)
  2. クウェート:アルオタイビ駐日大使との懇談(8月)

2.日本トルコ経済委員会

(梅田貞夫委員長)

(1)第18回日本トルコ合同経済委員会の開催

両国政府の周年事業「2010年トルコにおける日本年」の掉尾を飾る主要行事のひとつとして、ザフェル・チャラヤン対外貿易担当国務大臣の臨席を得て、トルコ海外経済評議会(DEIK)とともに、第18回日本トルコ合同経済委員会を開催した。トルコの経済情勢・対外経済戦略・ビジネス環境整備への取り組みについて聞くとともに、エネルギー、インフラ、銀行・保険、電機・電子、ICT、食品、自動車・自動車部品産業等の有望分野における協力および中東・北アフリカを中心とした第三国における協力の可能性について、意見交換を行った(11月、於:イスタンブール)。

(2)ザフェル・チャラヤン対外貿易担当国務大臣との意見交換の実施

訪日したチャラヤン大臣との懇談会を開催し、トルコの投資環境の整備状況について説明を聞き、日本とトルコの二国間経済関係の拡大に向けた方策について意見交換を行った(11月、於:東京)。

3.日本イラン経済委員会

(野村哲也委員長)

(1)駒野新駐イラン大使が野村委員長を訪問

10月、駒野新駐イラン大使が、現地赴任直前に当会を訪問し、野村委員長と最近のイランをめぐる諸情勢について意見交換した。

(2)中東・北アフリカ地域駐在大使との懇談会

12月、中東・北アフリカ地域委員会、日本アルジェリア経済委員会とともに帰国中の中東・北アフリカ地域に駐在する日本国大使との懇談会を開催した。当日は、駒野駐イラン大使から最近のイラン情勢について報告を受けた。

4.日本アルジェリア経済委員会

(〜5月27日 重久吉弘委員長)
(5月27日〜 竹内敬介委員長)

(1)中東・北アフリカ地域駐在大使との懇談会

12月、中東・北アフリカ地域委員会、日本イラン経済委員会とともに帰国中の中東・北アフリカ地域に駐在する日本国大使との懇談会を開催した。当日は、神谷駐アルジェリア大使より、最近のアルジェリア情勢について報告を受けた。

(2)アラブ連盟加盟国駐日大使との懇談会

12月、中東・北アフリカ地域委員会とともにアラブ連盟加盟国駐日大使との懇談会を開催した。当日は、ケトランジ駐日アルジェリア大使の参加を得た。

5.サブサハラ地域委員会

(土橋昭夫委員長)

(1)日本政府との意見交換

12月、外務省主催のアフリカ大使会議「対アフリカ経済外交」の開催に協力するとともに、同会議において、アフリカ駐在の日本国大使とアフリカにおけるビジネス促進の課題と方策について意見交換を行った。

(2)要人との懇談

  1. ジョン・エバンス・アッタ・ミルズ ガーナ共和国大統領との懇談(9月)
  2. セレツェ・カーマ・イアン・カーマ ボツワナ共和国大統領との懇談(10月)
  3. アリ・ボンゴ・オンディンバ ガボン共和国大統領との懇談(10月)
  4. イスマイル・オマール・ゲレ ジブチ共和国大統領との懇談(12月)
  5. マーガレット・ナナニャナ・ナシャ ボツワナ共和国国民議会議長との懇談(2011年1月)

○ロシア・NIS

1.日本ロシア経済委員会 日本NIS経済委員会

(岡素之委員長)

(1)第11回日本ロシア経済合同会議の開催

ロシア産業家企業家連盟(RSPP)と協力し、第11回日本ロシア経済合同会議を開催し、両国の経済界関係者ら総勢約150名が参加した。両国代表団は、金融経済危機後の両国経済情勢やロシアのビジネス環境整備への取り組み状況、輸送インフラ近代化、省エネルギー・再生可能エネルギー等の有望分野での協力の拡大・深化の可能性について報告を行うとともに、意見交換を行った。
また、合同会議に先立ち、フリステンコ産業貿易大臣、ドヴォルコヴィチ大統領補佐官、ヤクーニン・ロシア鉄道社長らロシア政府・経済界要人と個別に懇談した(2010年6月、於:モスクワ)。

(2)来日したロシア・NIS諸国の政府・経済界要人との政策対話

下記のロシア・NIS諸国の政府・経済界要人と、二国間経済関係の一層の拡大に向けた方途等について懇談した。

  1. ヴィクトル・F・ヤヌコーヴィチ ウクライナ大統領(2011年1月)
  2. ヴィクトル・B・フリステンコ ロシア連邦産業貿易大臣(4月)
  3. ボリス・V・コレースニコフ ウクライナ副首相(9月)
  4. エリヤル・M・ガニエフ ウズベキスタン共和国副首相兼対外経済関係・投資・貿易大臣(4月)
  5. フョードル・A・ヤロシェンコ ウクライナ財務大臣(2011年2月)

(3)2010年度総会の開催

定時総会を開催し、5月27日の経団連第11回総会において可決承認された2009年度事業報告・収支決算と2010年度事業計画・収支予算について報告した。また、役員改選が原案通り承認された(7月)。

(4)ロシアの政治経済に関する情報収集および関係者への働きかけ

  1. ロシアとのビジネスを進める上での問題点や改善要望等の把握を目的として、会員企業を対象としたアンケートを実施し、結果概要をとりまとめた。
  2. 貿易経済に関する日ロ政府間委員会および同貿易投資分科会の開催前に、日本政府との意見交換を実施し、経済界の要望を政府間協議に反映させるよう働きかけた(4月、8月、2011年2月、於:東京)。
  3. ドヴォルコヴィチ大統領補佐官の提案により開催された「ロシアの経済近代化に関する日露経済諮問会議」(11月、於:横浜)の立ち上げに協力した。

【特別委員会等】

1.防衛生産委員会

(佃和夫委員長)

(1)総会の開催

7月に総会を開催し、2009年度事業報告・収支決算、2010年度事業計画・収支予算の承認、役員の一部改選を行った。当日は、京都大学大学院法学研究科の中西寛教授より「新たな防衛計画の大綱に向けた日本の防衛政策の課題」というテーマで講演を聞くとともに、「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」の審議を行った。

(2)「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」のとりまとめ

総合部会(部会長:川井昭陽・三菱重工業常務執行役員航空宇宙事業本部長)および基本問題ワーキンググループ(主査:岩崎啓一郎三菱重工業航空宇宙事業本部航空宇宙業務部部長)において、政府や有識者からのヒアリングを行い「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」を取りまとめ、防衛産業政策の確立、重点投資分野の明確化、武器輸出三原則等に代わる新しい武器輸出管理原則の確立等を提言した。
8月に政府の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」がまとめた報告書において、防衛産業政策の必要性や武器輸出三原則等の具体的な見直しの方針が明記された。9月に内閣官房副長官補付の山内正和内閣審議官から、報告書に関する説明を聞いた。
政府が12月に閣議決定した「防衛計画の大綱」には、防衛生産・技術基盤に関する戦略の策定や、装備品の国際共同開発・生産等防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討の方針が盛り込まれた。1月に「防衛計画の大綱および中期防衛力整備計画に関する説明会」を開催し、内閣官房副長官補付の山内正和内閣審議官と防衛省防衛政策局の堀地徹防衛計画課長から説明を聞いた。

(3)「米国の防衛産業政策に関する調査ミッション」の派遣

「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」の実現のための働きかけと、政府の「防衛大綱」に盛り込まれた施策の具体化に向けて、1月から2月にかけて、実務者レベルを中心としたメンバーによる「米国の防衛産業政策に関する調査ミッション」(団長:岩崎啓一郎・基本問題ワーキンググループ主査)を派遣し、米国の国防総省、商務省、国務省といった政府機関や防衛関連企業を訪問した。
11月から、基本問題ワーキンググループで米国及びわが国の政府関係者や有識者等からヒアリングを行った。

(4)内外の防衛関係者との意見交換

4月に米国PPI社のパイパー社長より、オバマ新政権の外交・安全保障政策等について説明を聞いた。11月に「2010年防衛白書に関する説明会」を開催し、防衛省大臣官房の前田哲報道官から白書について説明を聞いた。

(5)防衛産業の動向に関する調査・広報活動

防衛技術・生産基盤に関する関係者の理解を促進するため、「第五世代戦闘機」、「そうりゅう型潜水艦」に関する特報を11月と3月に出版し、広く配付した。

2.宇宙開発利用推進委員会

(下村節宏委員長)

(1)総会の開催

総会を7月に開催し、2009年度事業報告と収支決算、2010年度事業計画と収支予算、役員の一部改選が承認された。総会では、宇宙航空研究開発機構の樋口清司副理事長から、欧米の宇宙政策について講演を聞いた。総会終了後、記念パーティーを開催した。

(2)宇宙開発利用の推進に向けた取組み

  1. 新成長戦略へ向けた対応
    4月に「国家戦略としての宇宙開発利用の推進に向けた提言」をとりまとめ、宇宙産業の基盤強化や官民連携による内外の市場開拓等の成長戦略や、衛星やロケットの具体的なプログラムの推進の必要性を訴えた。
    その結果、6月に政府が策定した「新成長戦略」においては、宇宙分野の施策として、宇宙産業の振興、宇宙システムのパッケージによる海外展開、小型衛星・小型ロケットの開発等が盛り込まれた。
  2. 政府・有識者等との懇談会
    4月に委員会を開催し、林幸秀 科学技術振興機構研究開発戦略センター特任フェロー・宇宙航空研究開発機構技術参与から、中国の科学技術力及び世界の宇宙技術力比較について説明を聞いた。
    10月から、企画部会(部会長:栗原昇三菱電機専務執行役電子システム事業本部長)および宇宙利用部会(部会長:西村知典日本電気執行役員常務)において、政府関係者や有識者からのヒアリングを開始した。また、政府の宇宙開発戦略本部に設置された準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループへの参加を通じて、意見の反映を働きかけた。
  3. 宇宙開発利用の重要性に関する啓蒙活動
    国内外の宇宙開発利用の動向に関する理解を深めるため、会報「宇宙」第59号「グローバル時代の宇宙開発利用」を3月に出版し、広く配付した。

3.むつ小川原開発推進委員会

(佃和夫委員長)

(1)総会の開催

7月28日に総会を開催し、2009年度事業報告・収支決算、2010年度事業計画・収支予算が原案通り承認された。当日は総会審議に先立ち、高橋祐治・電気事業連合会原子力部長から「原子力発電の推進に向けた電気事業者の取組み」について、説明を受けるとともに意見交換を行った。

(2)むつ小川原開発地区視察会の開催等

2010年度は二回、むつ小川原開発地区視察会を開催し、国際熱核融合実験炉(ITER)関連施設、原燃再処理工場、尾駮レイクタウン、トヨタフローリテック花卉工場等を視察した。

(3)むつ小川原開発推進協議会への協力

むつ小川原への官民のプロジェクトの立地、計画の策定等に関して協議する場として、国土交通省、青森県、六ヶ所村、日本政策投資銀行、新むつ小川原株式会社および経団連によって設立された「むつ小川原開発推進協議会」の活動に、本年度も引き続き協力した。

(4)新むつ小川原十周年報告の会

8月4日に開催された「新むつ小川原株式会社十周年報告会・感謝の会」で佃委員長があいさつし、新むつ小川原株式会社関係者のこれまでの努力への謝意と今後の日本の成長への貢献に対する期待を述べた。「報告会・感謝会」には、今井名誉会長、豊田名誉会長も出席した。

(5)新むつ小川原株式会社の経営安定化に向けた活動

新むつ小川原株式会社の経営安定化に向けて、関係各社と意見交換を行った。



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