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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年7月27日 No.3325 トランプ税制改革の動向<上> -21世紀政策研究所 解説シリーズ/21世紀政策研究所研究主幹 青山慶二

21世紀政策研究所(三浦惺所長)の国際租税研究会は6月上旬に、法人税に焦点を当てたトランプ税制改革の動向を現地調査するため、経団連税制委員会と協力して調査団を派遣した。本稿は、2回に分けてその調査内容(調査後の状況変化を含む)を報告するものである。
今回は、トランプ税制改革案の沿革および概要を解説し、次回は、わが国企業が関心を寄せる各論(国境税調整と利子控除制限を中心)を詳説する。

■ 米国税制改正の手順

米国では、抜本的税制改革は次の順序で行われる。

  1. 税制改正案の発議をする下院歳入委員会に対し、大統領が改正要望を提出して、これを踏まえた協議を議会と行政府の間で開始する。
  2. 税制改正には両院での過半数の合意が必要とされ、なおかつ、恒久的改正のためには上院での5分の3以上の多数による議決を必要とするため、議会内では上下両院間の協議も活発に行われる。
  3. 上院での5分の3以上の賛成確保が不可能な場合、一定の財政規律の制約のもとで、過半数で成立させる財政調整措置の手法を取る。

本調査団の訪米当時は、4月にトランプ政権が公表した「税制改革基本方針」を受けて、議会と大統領府との間で具体的改革案の議論がスタートしたところであった。上・下院における共和党の多数支配の状況からみて、抜本改正に取り組む政治的環境は整っており、具体化の可能性は高いとの推測のもとにヒアリングを行った。

■ その後の展開

ヒアリング先で指摘されたのは、大統領府の構想を具体化するのに貢献すべき行政府(特に財務省)の政治任用職が未発令であることへの懸念であった。4月の大統領基本方針が、1ページの項目列記にとどまるものであり、議会での具体的立案過程へ十分な指導力を発揮できていないとの指摘である。

これに加えて、トランプ政権の3大改革(医療保険制度の改廃、税制改革、インフラ投資)のなかで、税制改革の先行プロジェクトと位置づけられていたオバマケア改廃法案が、下院通過後、上院共和党の合意が得られず、7月中旬を過ぎても議決のめどが立っていない事情が挙げられる。かかる状況下では、税制改革の内容とスケジュールに大きな影響が生じると予測されている。

■ 抜本改革の方向性

4月公表の抜本改革案がその理論的モデルとしたものは、2014年のキャンプ提案と16年の下院共和党改正案である。ただし、それらのなかから政治的に反発が予想されるものはリストから省略されたようである。以下、各案の内容を比較して紹介する。

(1)キャンプ提案および下院共和党案

キャンプ提案は、法人税減税案としてはトランプ改革案に比べ緩やかであった(35%から25%までの連邦法人税率の引き下げ)。焦点は、米国税制の国際競争力を欧州並みにするとの観点から提案されたテリトリアル課税への移行である。外国子会社からの配当に対し、日欧と同様95%益金不算入にするとともに、その改正時に海外に留保されていた子会社利得に対し1回限りのみなし配当課税を行う。国境税調整や純支払利子の控除否認などは提案されていない。

一方、下院共和党案は、税制インフラの競争力強化の観点から、税率引き下げとテリトリアル課税移行に加えて、仕向地主義キャッシュフロー法人税(国境税調整付き)の仕組みを追加した。仕向地主義は、輸出売り上げを非課税とするとともに輸入仕入れを損金不算入とすることによって、付加価値税制のもとで輸出還付を受ける欧州企業とイコールフッティングの状況をつくろうとするものであり、キャッシュフロー税は、投資に即時償却(ただし、そのファイナンスコスト=純支払利子の控除は否認)を認めるものである。ここでは、国境税調整による追加財源もあり、法人税率引き下げは20%が目途とされた。

(2)トランプ税制改革案

4月公表の改革案は、上記改革案を踏まえつつ、政権の国内雇用確保の公約実現を意識した企業競争力強化に向けたメニューとなった。ただし、その中身は、上記のなかからいわば「いいとこ取り」で政治的反発の少ないパッケージ(15%への税率引き下げ、テリトリアル課税への移行、1回のみなし配当課税の実施)となっている。

選挙公約である15%までの大幅税率引き下げを維持したため、その財源が確保可能かどうかに関しては、議会との困難な調整が予想されている(下院は将来の経済成長3%を前提とした増収シナリオを背景に実現可能性を検討しているようであるが、ヒアリング先の大勢は20~25%までの引き下げが現実的ではないかとしていた)。

オバマケア法案の先行処理はもちろんであるが、税制改革案についても政治任用の促進等によりトランプ改革案の肉づけ作業が進むことが期待されている。

【21世紀政策研究所】

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