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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2018年5月24日 No.3362 21世紀政策研究所が講演会「Brexit交渉とEUの経済外交~日本の産業界への処方箋」を開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は4月16日、東京・大手町の経団連会館で講演会「Brexit交渉とEUの経済外交~日本の産業界への処方箋」を開催した。同研究所の研究プロジェクト「英国のEU離脱とEUの将来展望」の一環として実施されたもので、渡邊頼純研究委員(慶應義塾大学教授)を座長とし、ロンドン・スクールオブエコノミクスのステファン・ウォルコック博士の参加を得てBrexit交渉の現状やBrexit後の英国とEUの関係などを解説した。

■ ウォルコック博士講演

(1) Brexit交渉における英国とEUの立場

冒頭、ウォルコック博士は、Brexitの主たる問題は関税ではなく規制であると指摘。英国が目指す姿を「チェリー」と「カゴ」に例えて、(1)単一市場にフリーアクセスができるもの(2)相互認証や同等性評価によって対応するもの(3)英国独自の規制を適用するもの――という3つの規制の「枠組み」(カゴ)が存在し、金融や自動車など「分野」(チェリー)に応じて、3つのいずれかに振り分けていく「いいとこ取り」を目指していると分析した。

一方、EUは、カナダや韓国などすでにFTAを締結している国から信頼性を失うリスクがあるため、英国の「いいとこ取り」を認めず、単一市場に残るか否かの2択しかないという立場を示しているとし、英国とEUの立場の違いを明らかにした。

(2) Brexit交渉の着地点

Brexit交渉では、国境管理や規制・司法制度などの面で、英国・EU双方に譲れない一線(レッドライン)が存在すると指摘。交渉の着地点としては、英国・EU双方のレッドラインに合致する「CETA(EU―カナダ型FTA)プラス」の協定が現実的だろうとの見解を示した。

そのうえで、「CETAプラス」の「プラス」部分に何が含まれてくるのかが重要であると指摘。例えば、国境管理を行うことや規制の自立性の確保などが英国のレッドラインとして挙げられるとした。一方のEUは、これまでEUが第三国と締結したFTAには、相互認証に関する内容やTBT(Technical Barriers to Trade、貿易の技術的障害)への対処なども含まれており、EUは交渉相手に応じて柔軟に中身を変えているが、既存のEUと第三国の関係にマイナスを与え得るものはEUとして受け入れ難く、例えばCETAなどで認められていないサービス分野の同等性の確保は難しいだろうと述べた。

(3) 今後の課題と日本企業への影響

英国とEUには、Brexit後もルールベースの開かれた貿易体制を維持したいという共通の利害があると述べた。そのうえで、多国間主義からの脱却を図る米国や、既存の規範・ルールとは相いれない方向に向かっている中国の動向が、これから英国・EU双方にとって大きな課題になるだろうと指摘した。

また、日本を含む第三国の企業の実務的な問題として、国境管理体制の問題は避けられず、税関対応などのキャパシティー不足に伴う国境付近での渋滞発生が懸念されるほか、欧州域内にサプライチェーンが分散している企業は原産地規則の問題などが生じるだろうと分析した。

■ 意見交換

後半では渡邊研究委員から、(1)No Deal Brexit(協定なしの離脱)は回避できたのか(2)メイ首相が目指す将来の枠組み協定のかたちとはどのようなものか(3)日本企業は欧州におけるバリューチェーンの組み替えが必要なのか――という3点の問題提起がなされ、ウォルコック博士から以下の見解が示された。

まず、(1)については、英国内における政治的な議論が経済的な合理性を重視する方向に変化しつつあることや、すでに何らかのDealを成立させるための取り組みも一定程度行っていることから、すべてを無に帰すことはしないだろうとの見解を示した。しかしながら、アイルランド問題の合意が形成されない場合はNo Deal Brexitとなる懸念もあると指摘した。

(2)について、英国は既存の協定モデルではなく独自のモデルを追求しながらも、具体的な協定モデルを示せていないため、依然としてどのような協定モデルを英国が模索しているのかは不透明であると述べた。

(3)について、英国がEUの原産地規則を使い続けるならば、日本を含む第三国の企業にとって基本的には影響がないものの、仮にそうでなかった場合には、英国・EU間における製品の付加価値の基準が変わり、英国で製造した製品がEU域外の製品と見なされる可能性があることを指摘した。

◇◇◇

21世紀政策研究所では、今後も引き続き欧州情勢の変化を注視し、セミナー等を通じて情報発信を行っていく予定である。

【21世紀政策研究所】

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