1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2018年6月21日 No.3366
  5. 今後の大学のあり方と産業界への期待

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年6月21日 No.3366 今後の大学のあり方と産業界への期待 -筑波大学の永田学長から聞く/教育問題委員会

説明する永田学長

経団連は6月8日、東京・大手町の経団連会館で教育問題委員会(渡邉光一郎委員長、岡本毅委員長)を開催した。今後の大学のあり方と産業界への期待について、中央教育審議会(中教審)大学分科会将来構想部会の部会長でもある永田恭介筑波大学長から説明を聞き、意見交換を行った。説明の要旨は次のとおり。

■ わが国の高等教育を取り巻く現状

技術革新による産業構造・就業構造の変化を受けて、求められる知識・技術は急速に変化しており、イノベーションを可能とする人材への期待が高まっている。

一方、本格的な人口減少社会の到来による18歳人口の大幅減少は、わが国全体の大学の質低下に直結し、学生の質を維持するには、大学の規模を見直すか、優秀な留学生や社会人の受け入れを増やす必要がある。

こうしたなか、わが国の競争力の源泉である研究力においても、また地方における人材育成や産学連携においても国立大学は大きな役割を果たしているが、国立大学法人運営費交付金等は国家財政を反映して減少傾向にある。欧米諸国の多くが大学への公的支援を増加させるなかで逆行しており、日本の競争力のさらなる低下が懸念される。また、各国が優秀な学生獲得に腐心するなか、日本だけが取り残されている。

■ 大学の将来像

大学の将来像については国立大学協会が国立大学の将来像をまとめたほか、中教審でも検討が進んでいる。今後は、大学自らが、将来の変化を見据えてそれぞれの強みや独自性を意識したうえで役割や機能を明確化し、発展の方向性を考えることが求められる。そこで中教審では、人材養成の3つの観点、「世界を牽引する人材養成」「高度な教養と専門性を備えた先導的な人材養成」「高い実務能力を備えた人材養成」を提示して、各大学における改革の加速を促している。

同時に、学修の質保証や教育機能の充実も求められる。情報公開と学修成果の可視化や「学位プログラム」導入による分野横断的な教育の実施、大学・学部間での教員や授業科目のシェアリングなどがその具体策である。学外人材の理事登用などを通じた大学の経営力強化や財務基盤強化も重要である。

連携・統合等については、大学の機能強化を最大限実現するため、その特性や地域性等に応じて多様な形態を可能とすることが望ましい。これには地方公共団体や産業界など学外のステークホルダーとの協力が不可欠である。国公私の枠を超えた連携・統合については課題もあるが大いに期待している。

なお、国立大学では改革の議論が前向きになされている一方、私立大学ではそうした動きがほとんどみられない。建学の精神や設置基準の違いなどは理解できるが、わが国全体の高等教育の質の担保の観点から私立大学にも積極的に議論に加わってもらいたい。

■ 産業界への期待

産学官共同で留学支援する「トビタテ!留学ジャパン」という取り組みがある。留学生倍増を掲げて設けられたもので、これに参加した学生は見違えるように成長して帰国している。この取り組みは時限的であり、今後のわが国を担う人材育成の観点から、同様な支援の仕組みをぜひ検討してもらいたい。企業からの出資金をファンドにプールして最先端研究の人材を支援し、特許等の成果を出資額に応じて受け取る仕組み(「生み出せ!イノベーションジャパン」)も一案である。

【SDGs本部】

「2018年6月21日 No.3366」一覧はこちら