1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2018年8月9日 No.3373
  5. 21世紀政策研究所が「欧州CE政策により加速するビジネスモデルの転換」セミナーを開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2018年8月9日 No.3373 21世紀政策研究所が「欧州CE政策により加速するビジネスモデルの転換」セミナーを開催

21世紀政策研究所は7月27日、セミナー「欧州CE政策により加速するビジネスモデルの転換」を開催した。

同研究所の研究プロジェクト「“Circular Economy (CE)”研究会」(研究主幹=梅田靖東京大学大学院教授)のキックオフセミナーとして、欧州で成長戦略の柱の1つに位置づけられているサーキュラーエコノミー政策について、標準化等を含めた最新動向を報告するとともに、今後どのようなビジネスモデルに発展し事業活動に影響する可能性があるかを紹介した。

■ ライフサイクル工学からみたCEへの取り組み・課題(梅田研究主幹)

Industrie 4.0に対して、日本からは新しいものづくりのあり方を発信できなかった。標準化を通じて企業間をまたがるネットワーク化や汎用的なフレームワーク、プラットフォームをつくれず、持続可能性に対応しつつイノベーションに結び付ける欧州の動きに後手にまわっているといわざるを得ない。日本発のプラットフォーマーも出てきていない。グローバル市場はこれまでの「モノを売る」売切型ビジネスから、IoTやICT技術を駆使した「サービスを仕込むビジネスモデル」へと変化している。

ものづくりの今後の姿は、ライフサイクル価値の創造に重きが置かれ、すべての製品の状態をリアルタイムに把握して循環する仕組みをつくることが重要になる。IoT、Cyber Physical Systems、人工知能、ビッグデータの活用により、これまで以上に製品や部品情報のトレーサビリティをリアルタイムで求められる社会が到来することになろう。「適切な」循環は、あらかじめ設計し、適切にマネジメントしないと実現できない。そのため、ライフサイクルの見える化、設計・分析・マネジメントの統合的実施が必要となると同時に、循環プロバイダーのミッションが増すことになる。ライフサイクル設計はこれまでも各企業で実施されてきたが、今後、これまで以上にライフサイクルにわたるエンジニアリング活動の統合的支援が、設計~生産~使用~メンテナンス~再生産~循環の各段階で必要となり、“Digital Triplet”(実世界+情報世界+知的活動世界)による新たなものづくりシステムに対応していく必要があろう。

■ 欧州のサーキュラーエコノミー(CE)が目指すもの~社会インフラとプラットフォーム・ビジネスをターゲットとするEUの戦略的ツール
(喜多川和典研究委員/日本生産性本部エコ・マネジメントセンター長)

欧州のCEは、地球の資源利用を効率化するために、売切型ビジネスモデルから循環型ビジネスモデルへの転換を求める政策であり、「環境の威」をまとった経済・産業政策そのものである。その主なビジネスモデルは、(1)デジタル・プラットフォーム型(2)社会インフラ型――の2つがある。これらのビジネスの競争力強化・グローバル化する戦略ツールがCEであるともいえる。

一方、6月末にフランスの規格協会がCEにかかわるISOのTC設置案を各国に提案してきた。提案されたISO化の案は、第三者認証を想定した組織のマネジメントシステムであり、継続的な組織管理のなかで、ビジネスモデルの転換、製品ライフサイクル管理、サプライチェーンマネジメントまでに及ぶ、新たな組織管理が求められる可能性のあるものとなっている。こうした欧州の動きの具体化に対し、日本の強みを活かしつつ、次世代のビジネストレンドに適合する新世代の産業構造へ、どのように転換していくかが問われている。

■ サーキュラーエコノミーにおけるビジネスモデルについて
(廣瀬弥生研究委員/電力中央研究所企画グループマーケティング担当部長)

CEに基づく戦略が世界的に展開された場合、日本の産業界にリスクが生じる可能性がある。1つ目に、モノ売りからサービスを売ることが高付加価値である時代の到来である。海外企業には自社製サービスのノウハウを国際標準にすることで市場を奪いたいとの戦略があり、CE規格の主導権を握る可能性がある。これにより、国内ユーザーやユーザー企業向けの使い勝手よりも、コストが安く、環境価値が高いことを売りにされた場合、日本企業はこれまでのノウハウが活かせないリスクがある。2つ目に、ハードウエアからソフトウエアに価値を見いだす時代の変化である。欧州ベンダーは、IoT等によるデータ蓄積により、デジタルビジネスの主導権を握りたいと考えている。主導権が製造業からデジタルベンダーへ移行すれば、国内製造業にとって大変不利になる。このようにあらゆる主導権を欧州企業に持っていかれるリスクが発生しているといえる。CEで認証ビジネスの主導権を握ることができれば、ソリューションビジネス、標準化に加え、デジタル・プラットフォームそのもので優位性が高まる。

一方で、新しいイノベーションの取り組み方は、顧客との共創にある。企業が消費者やサプライチェーンなどのパートナーと協働することにより、製品や経験価値を一緒に創り出すことができる。消費者自らの手でパーソナル化が実施され、企業は消費者からフィードバックをもらい、プラットフォームをさらに高い価値のあるものにすることができる。これまでいわれてきたような、よい技術であれば必ず社会に普及するとは限らず、標準化技術と認定されても社会で使われるとは限らないといったことが起こる。日本も早急に新たな環境経済モデルを軸にした日本発のコンセプトを発信することにより、ビジネスの主導権を握る戦略を検討する必要がある。

<パネルディスカッション>

コーディネーターの赤穂啓子研究委員(日刊工業新聞大阪支社編集局長)のもと行われたパネルディスカッションでは、CE政策が2015年に欧州委員会から発表されてから、どのような変化が起こり、今後どのような進展が考えられるかについて、ISO設置の動きをはじめ、EU以外に中国でもプラットフォーム・ビジネスが本格化していることなどが話し合われ、日本に参入している事例などが紹介された。

また、日本企業がCE型ビジネスモデルを取り入れ、発信する必要性について話し合われ、自社での好事例の発信、技術とマーケティングを見据えた戦略が必要であることが言及された。

【21世紀政策研究所】

「2018年8月9日 No.3373」一覧はこちら

「週刊 経団連タイムス」一覧はこちら