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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2018年11月22日 No.3386 パリ協定とビジネス界の関与 -21世紀政策研究所 解説シリーズ/21世紀政策研究所研究主幹(東京大学公共政策大学院教授) 有馬純

有馬研究主幹

10月10日、パリで主要経済国ビジネスフォーラム(BizMEF)とOECDビジネス産業諮問委員会(BIAC)の共催による「国別貢献(NDC)、パリ協定の実施におけるビジネスの関与」をテーマとしたワークショップに参加する機会を得た。

現在、パリ協定の詳細ルール交渉が行われているが、パリ協定に実効性を持たせるためには政府や市民団体のみならずビジネス界の支持と協力が不可欠である。低炭素投資にせよ、クリーン技術にせよ、中心的役割を果たすのはビジネス界だからである。しかし筆者自身の温暖化交渉の経験に照らせば、必ずしも枠組み策定においてビジネス界の実態が反映されてきたとはいい難い。

例えばクリーン開発メカニズム(CDM)を活用するのは民間企業であるにもかかわらず、CDMのルール交渉において手続きを複雑なものにし、結果的に使い勝手の悪いものをつくり上げてしまった。政府間の枠組みである以上、産業界が直接、交渉に参加することはないとしても、枠組みの実施にあたって産業界との対話は強化されてしかるべきである。OECDの場合、BIACの意見・要望がOECDの活動への有益なインプットとなっている。生物多様性条約のもとには「ビジネスと生物多様性のためのグローバルプラットフォーム」という場が設けられている。

温暖化防止の国際枠組みや国内政策におけるビジネス界の関与は国によって濃淡がある。日本の場合、経済産業省が政府交渉団の重要な一角を占めていることもあり、国際枠組み交渉においてビジネス界の発信が政府の交渉ポジションに反映されやすい。国別目標策定についても、2008年に麻生内閣が策定した2020年15%減目標(05年比)や15年に安倍内閣が策定した30年26%減目標(13年比)の裏づけとなるエネルギーミックスにおいて産業界の意見が一定程度反映されている(鳩山内閣の20年25%減目標(90年比)は産業界との調整は皆無であった)。

欧州においてもEU―ETSの設計や目標設定にあたってビジネス界とのコンサルテーションがある。他方、米国オバマ政権下で25年26~28%減目標(05年比)を策定した際、産業界とのコンサルテーションは行われなかったという。

ワークショップには経団連、ビジネスヨーロッパ、フランス経団連、米国商工会議所、世界鉄鋼連盟といったビジネス団体に加え、政府関係者、学識経験者、シンクタンク、国際機関も参加したが、パリ協定の実施局面において産業界の関与を強めることが必要との点で認識が共有された。BizMEF、 米国国際ビジネス協議会(USCIB)は、パリ協定のもとで女性、ジェンダー、先住民族等の関与を強めるため「プラットフォーム」をつくる動きがあることを念頭に、ビジネス界との対話のための「プラットフォーム」も設けるべきだと提言している。

COP決定のようなかたちで産業界の関与を制度的に担保することは容易ではない。締約国のなかにはベネズエラやニカラグアのように「利益相反」を理由に特定の産業界のオブザーバー参加を排除すべきだとの極端な主張をする国もあるからだ。全員一致を旨とする国連でのCOP決定のハードルは高い。

しかしパリ協定は各国政府のみならず幅広いステークホールダーの参加を求めており、ビジネス界の果たすべき役割は大きい。その意味でも今回出席した産業団体が先進国中心であったことは残念だった。インド、中国、ブラジル等、途上国の産業団体も巻き込んでいくことが重要である。

【21世紀政策研究所】

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