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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2019年5月23日 No.3408 日本農業のポテンシャル<上> -21世紀政策研究所 解説シリーズ/21世紀政策研究所研究主幹(宮城大学名誉教授) 大泉一貫

大泉研究主幹

■ 農業は崩壊するのか成長するのか?

農業の将来に関しては意見が割れている。農業の崩壊をいう悲観論的な論調がある一方で、輸出産業として成長する可能性があるとする論調もある。日本農業の本当のポテンシャルはどの程度のものなのだろうか。

農業経営体や農業就業人口はこの10年で大きく減少するといわれている。農家数で2020年の110万戸弱から2030年には40万戸に、農業就業人口で160万人から54万人と私は予測している。数字はともかくとして、農家が減れば農業産出額も減り、日本農業はどんどん縮小するのではないかと考えるのが普通だろう。気分は崩壊論に傾く。だが、わが国では、概ね時代とともに農家は減っても産出額は向上してきた。

■ 生産性の向上がカギを握っている

そうなってきたのは生産性が伸びていたからである。農業のポテンシャルは生産性次第ということだ。

図表は、農業の生産性をみたものである。全国平均の生産性の経年変化と、2015年の各県の農業の生産性を重ね合わせた図である。左下の曲線は1960年からの労働生産性と土地生産性の推移である。少々見にくいが、概ね右肩上がりであるものの、単純な右肩上がりではなく蛇行しているのがわかると思う。

それは、1990年から2010年までの20年間で生産性が停滞ないし減少した時期である。この時期には、悲観論者がいうように農家が減って農業も縮小した「農業の失われた20年」だった。

生産性が低かった理由には、生産調整が強化されたことなどがあるが、根本的には戦後の保護農政システムが、グローバル化やわが国の経済構造の変化に合わなくなってしまったことが大きい。それに気づかず保護農政を続けていたわけだが、アベノミクス農政になって、やっと社会に適合的な「攻めの農政」が出てきたということである。

農業の生産性

■ 労働生産性は現状の2倍から3倍にできる

さて、その農業の生産性だが、2014/15年で229.5万円程度と低い。世界と比べても低いし、国内でも全産業の3割程度の低水準にある。成長産業化のカギは、この生産性が今後どの程度伸びるかにかかっている。現在の2~3倍に伸びる可能性は充分にあると、私は考えている。

図表では生産性の分子に産出額を取っているので倍近い数字になっているが、全国平均の生産性の図は左下の一角を占めるにすぎない。他方、鹿児島や宮崎の労働生産性は平均の2倍近く、北海道は3倍以上となっており、右上に伸びる余地はまだまだある。さらに、市町村別でみると全国平均の5倍以上の市町村も数多くあり、経営によっては10倍以上という経営もある。農家戸数が減少するとはいえ、2030年で農業生産の7割を担うのは、全国平均の10倍以上の生産性を上げている2万程度の農業経営者たちになっていくはずだ。こうした高い生産性の経営が頭角を現してくれば、わが国の農業のポテンシャルはますます高くなり、農業は成長産業にさらに一歩近づくと私は予想している。

課題は、その生産性の高い経営をつくるにはどうすればいいのかということになるが、それについては次号で解説する。

【21世紀政策研究所】

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