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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年4月2日 No.3449 大企業とスタートアップの契約のあり方を議論 -スタートアップ政策タスクフォース

経団連は3月13日、スタートアップ委員会スタートアップ政策タスクフォース(出雲充座長)の第7回会合を、新型コロナウイルスをめぐる状況に鑑みてオンラインで開催した。経済産業省の今里和之産業技術環境局技術振興・大学連携推進課長から、同省で作成を進めている大企業とスタートアップの契約に関する手引きとモデル契約書について説明を聞き意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 共創を促す契約手引きとモデル契約書の作成

近年、わが国ではオープンイノベーションが盛り上がりをみせているが、研究開発費全体に占める割合は依然として小さい。経済産業省は、自前主義からの脱却に挑戦する企業を応援すべく、オープンイノベーション促進税制の新設などさまざまな施策を展開している。

一方で、大企業とスタートアップの連携に際しては「契約」にかかわる問題が多数発生している。例えば、秘密情報に対する認識の甘さからスタートアップが大企業の秘密情報を第三者に漏洩してしまうケースがある。また、大企業の法務部門が広範な競業禁止義務を形式的にスタートアップに押しつけてビジネスチャンスを奪ってしまうケースもある。スタートアップと大企業のそれぞれが抱えるさまざまな課題が両者の連携を阻害している。そこで経産省では、こうした課題を解決するために契約の手引きおよびモデル契約書の作成を進めている。

検討の範囲は、連携の入り口である秘密保持契約(NDA)から、概念実証(PoC)契約、共同研究契約、ライセンス契約の4つである。基本的な考え方は、スタートアップと大企業のいずれか一方を利するのではなく、日本全体として付加価値を高めるようにwin―winの関係をいかにつくるかを重視している。そのうえで、各契約における留意事項、問題事例と対応策のポイントを手引きとして整理する。モデル契約については、NDAとPoCでは汎用的なひな型を作成し、共同研究契約では特にニーズが大きい「AI」と「化学・素材」の2分野を取り上げてひな型を作成する。あわせて逐条解説も設ける。想定読者はスタートアップ、ベンチャーキャピタル(VC)、大企業(特に法務部・知財部)である。

手引き、モデル契約ともに現在作成中だが、例えばNDAでは秘密情報の定義や取り扱い方法を明確にする、知財の帰属についてはPoC以降で協議するといった基本方針と、これに対応する条項案を示す予定である。

経産省では、2020年度の早い時点で同手引き等を公表する考えだが、現在、公正取引委員会でもスタートアップ取引慣行に関する調査が行われている。同手引きのようなガイドラインについては府省庁間で連携して実効性を高めるべきとされており、公正取引委員会の調査結果も勘案して、未来投資会議で政府全体としての考え方を取りまとめる予定である。

◇◇◇

説明を受けてタスクフォース委員等との間で、「こうした取り組みは非常に有益」「NDA段階では今後のプロジェクトの内容が見えていないので、提供する情報の正確性を保証しないことを契約に明記することも必要」「大企業とスタートアップとでは法務のリソースが圧倒的に違う。それを踏まえて交渉のポイントを整理してほしい」「大企業側の優れた取り組み事例を周知することも効果的」などの意見が交わされた。

【産業技術本部】

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