経団連は3月27日、東京・大手町の経団連会館で審議員懇談会を開催した。十倉雅和会長ならびに冨田哲郎審議員会議長をはじめ、審議員ら約260人が参加。資源エネルギー庁の村瀬佳史長官ならびに畠山陽二郎次長が、「エネルギー基本計画、GX2040ビジョン」と題して講演するとともに意見交換した。講演の概要は次のとおり。

右から村瀬氏、畠山氏
■ 第7次エネルギー基本計画のポイント
2025年2月、第7次エネルギー基本計画を閣議決定した。足元では、ロシアによるウクライナ侵略が長期化し、中東情勢の不透明さが継続するなど、前回のエネルギー基本計画の改定時から、わが国のエネルギー安全保障の環境は大きく変わっている。同時に、生成AIの登場などのデジタルトランスフォーメーション(DX)や、グリーントランスフォーメーション(GX)の進展などを背景に、電力需要の増加が見込まれる。
こうした点を踏まえ、第7次エネルギー基本計画は、S+3E(安全性、安定供給性、経済効率性、環境適合性)の原則は維持しつつ、エネルギー安定供給や脱炭素の観点を踏まえ、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスの取れた電源構成を目指すことや再生可能エネルギーと原子力を共に最大限活用することなどを基本方針として整理した。
より具体的には、再エネについて、主力電源として、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら最大限の導入を進めるほか、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力の導入拡大、次世代型地熱発電の社会実装加速化などを掲げた。
原子力発電については、安全性の確保を大前提とした再稼働を加速するとともに、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内でも、次世代革新炉への建て替えや、フュージョンエネルギーを含む次世代革新炉の研究開発を促進することとしている。
火力発電については、トランジション手段としてのLNG(液化天然ガス)火力の確保、水素・アンモニア・CCS(二酸化炭素回収・貯留)による脱炭素化を推進していく。
その他、事業者の積極的な脱炭素電源投資を促進する事業環境、ファイナンス環境の整備を進めていくことに加え、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組みを通じて、多様かつ現実的な道筋によりアジアの脱炭素化を進め、世界全体での脱炭素化に貢献していくことをうたっている。
■ GX2040ビジョンの取りまとめ
GXに向けた投資の予見可能性を高めるため、長期的な方向性を示すべく、エネルギー基本計画の改定とともに、「GX2040ビジョン」を取りまとめた。同ビジョンでは、脱炭素電力などのクリーンエネルギーを利用した製品やサービスが付加価値をもたらすGX産業が、今後は成長を牽引していくとしたうえで、わが国におけるクリーンエネルギーの地域偏在性を踏まえ、効率的、効果的に新たな産業用地の整備と脱炭素電源の整備を進めることで、地方創生と経済成長につなげていくとの考えを示した。
こうしたエネルギー政策と産業政策を一体的に展開・実行していくためには、官民連携が不可欠である。引き続き、経済界には政策への理解と協力をお願いしたい。
【総務本部】