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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年4月17日 No.3680 消費者法政策のパラダイムシフト -消費者政策委員会

山本氏

経団連は3月26日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会(稲垣精二委員長、吉田淳一委員長)を開催した。一橋大学大学院法学研究科の山本和彦教授(消費者庁「第5期消費者基本計画の策定に向けた有識者懇談会」座長)から、消費者法政策のパラダイムシフトや第5期消費者基本計画の概要等について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 消費者像の変化

消費者法政策においては、「一般的・平均的・合理的な消費者像を前提に、消費者・事業者間の情報・交渉力の格差の是正を目的として法的な対応を図る」ことを基本理念としてきた。

しかし、近年、高齢者や若年者、外国人といった、「一般的・平均的な消費者像」とは異なり、類型的・属性的な脆弱性を持つ消費者が増加している。また、デジタル取引の拡大によって、消費者の脆弱性を利用したターゲティング広告やダーク・コマーシャル・パターン(注)等が普及し、消費者が「合理的な」判断を行うことが難しくなっている。

さらに、取引主体が多様化し、消費者自身が売り手となる取引が増加しているうえ、金銭を対価としてモノやサービスを購入する消費者だけでなく、情報・時間・関心・アテンション等を対価として提供する消費者が新たに出現するなど、「消費者」の概念も拡大している。

■ 消費者法政策のパラダイムシフト

このような消費者像の変化を踏まえ、政府は、消費者を大くくりに捉えた一律の対応から、よりきめ細かな個別的対応へ転換する「消費者法政策のパラダイムシフト」の必要性を主張し、専門調査会でその詳細を検討してきた。2025年3月に閣議決定された「第5期消費者基本計画」にも、「消費者政策の価値規範に関する考え方の転換(パラダイムシフト)を図る」と明示されている。

具体的には、(1)消費者と事業者間の情報・交渉力の格差を是正するだけでなく、さまざまな脆弱性を有する消費者が安心・安全に取引に参画することを可能にする環境(2)他者の介入を排除し、消費者が独立して自由に意思決定できさえすればよいとするのではなく、消費者が他者との適切な関係性のなかで自らの価値観に基づく「自分自身の選択」として納得できる決定を可能とする環境――を整備することなどを基本的な考えとする。これらの詳細は、今後、具体的施策のなかで明らかになっていく。

(注)通常オンライン・ユーザー・インターフェースに見られ、消費者バイアスを悪用することなどにより消費者の最善の利益とはならない可能性のある選択を消費者に行わせる多種多様な行為(OECD「ダーク・コマーシャル・パターンOECDデジタルエコノミー文書」22年10月、消費者庁訳)

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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