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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年4月24日 No.3681 日印協力におけるわが国の最近の取り組み -南アジア地域委員会企画部会

経団連は3月24日、南アジア地域委員会企画部会(松木俊哉部会長)をオンラインで開催した。外務省アジア大洋州局南部アジア部の室谷政克南西アジア課長、経済産業省通商政策局の島野敏行南西アジア室長、日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューデリー事務所の長宗豊和産業調査員から、日印協力における最近の取り組み等について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 最近のインド情勢(室谷氏)

インドは、伝統的に戦略的自律性を確保しながら、日米豪印やBRICS等、ミニラテラルを軸とする全方位外交を展開している。主要国との関係では、米国とは軍事、商業、テクノロジー等、重要分野での協力を発表した。中国とは国境問題が存在するなかで関係をマネージするために、2024年10月に5年ぶりの中印首脳会談を実施した。ロシアとは、引き続き友好関係を維持している。また、グローバルサウスの代弁者を標榜し、「グローバルサウスの声サミット」を開催するなど、国際場裡における存在感を高めている。

経済面では、モディ首相が、「自立したインド」の重要性を強調している。グローバルサプライチェーンのハブとして輸出を増やすため、電子機器、医薬品、電気自動車(EV)等の高付加価値製品の現地生産や外国資本の呼び込みを推進している。

こうした状況のなか、日本は、インドとの紐帯をさらに強めていく。同時に、インドの成長を日本に取り込むべく、デジタルやクリーンエネルギー等、新たな分野における二国間協力のほか、インド人材のさらなる活用に向けた人材交流や経済安全保障分野における連携を強化してきている。

■ 日印経済協力に向けた経産省の取り組み(島野氏)

日印間には、通商や経済安保で、おおむね米印間と似た枠組みがあるが、米印重要新興技術イニシアティブ(iCET)に類似するものがない。今後、先端技術分野で産学官協力を推進するためにも、経済安全保障について民間を含めて対話する新たな体制の構築を検討している。

また、25年8月のアフリカ開発会議(TICAD)に備え、2月26日には、日本企業がインド以西で連携を強化し、インド洋やアフリカへのビジネス展開の機運醸成を目的とした「日・インド・アフリカ官民フォーラム」を開催した。同日公表した「アフリカの持続可能な経済発展のための日印協力イニシアティブ」では、(1)アフリカへの貿易・投資拡大の産業拠点としてインドへの産業集積の促進(2)アフリカへの民間投資・雇用創出・人材育成等の拡大――を柱にインドと連携し、アフリカ諸国へ民間主導のビジネスや投資を推進することを目指している。

加えて、グローバルサウス未来志向型共創等事業や、インドの人材育成・インド企業と日本企業の交流促進のための取り組みを強化し、日印関係を新たな段階へと発展させていく所存である。

■ ジェトロのインドにおける取り組み(長宗氏)

ジェトロ・ニューデリー事務所は、経済安全保障分野における日印協力の強化に向けて、具体的な協力分野や課題を調査している。日印両国は、サプライチェーンにおける対中依存度が高く、経済安全保障の観点から、両国の連携強化が不可欠である。具体的には、(1)デジタル・半導体(2)エネルギー・鉱物資源(3)ヘルスケア(4)防衛・航空宇宙――の分野において、日本の技術を使用したインドでの生産委託・量産化、インドの高度人材を活用した共同研究・実証・スケール等の協力が考えられる。

他方、モディ政権では、高関税や非関税障壁によって国内産業を保護する政策が採られており、日本を含む外国企業が影響を受けている。経済安全保障の強化に向けて、両国が政策協調していくことが必要である。また、AIやバイオテクノロジーをはじめ、中国がさまざまな分野での技術を高め、日印にとって技術的脅威が高まるなか、両国間で重要技術分野に関する共同研究を加速することが重要である。

【国際協力本部】

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