
スパイッチ首相(左)と齋藤部会長
経団連の齋藤洋二ヨーロッパ地域委員会企画部会長は5月28日、東京・大手町の経団連会館で、モンテネグロのミロイコ・スパイッチ首相と懇談した。スパイッチ首相の発言概要は次のとおり。
私はかつて日本に留学していた。日本との関係強化に取り組んでいきたい。
モンテネグロは、大規模なインフラ投資を行っていく方針であり、特に高速鉄道や高速道路といった交通インフラでの日本企業との協力を期待している。また、アドリア海沿岸にはバール港を有している。現在は十分に活用できていないが、アドリア海で最も深い港であることに加え、地政学的に重要な位置にあり、欧州への玄関口としての潜在性は高い。LNG(液化天然ガス)ターミナルの建設や水素のプロジェクトも検討している。バール港の周囲に産業特区を設ける準備ができているので、日本企業にはここに進出し、欧州で最も安価な労働力を活用してほしい。
エネルギー分野では、水力が主力電源の一つであり、水力発電所の新規建設も計画している。また、イタリアとの間には設備容量600メガワットの海底電力ケーブルがあり、送電が可能である。イタリア南部は欧州内で電気料金が高く、モンテネグロの電力価格は最も低い水準である。イタリア側は、AIの活用やデータセンターの建設による需要拡大に応えるべく、海底ケーブルの容量を倍増することも検討している。
モンテネグロは晴天の日が多く、山岳地帯では風があるため、太陽光発電や風力発電が拡大する余地がある。安価な電力が利用できるため、データセンターの建設地として魅力的である。
2022年に大規模なサイバー攻撃を受けたことにより、サイバーセキュリティの強化に注力している。24年にはフランス、スロベニアと共に西バルカン地域のサイバーキャパシティセンターを設立した。サイバーセキュリティでも日本企業と協力したい。
観光分野における日本との協力にも期待している。9月1日から日本への入国ビザが免除されることは喜ばしい。統合型リゾートの建設でも、ホスピタリティ溢れる日本企業に参画してほしい。
わが国は28年までにEUに加盟することを目指し、EUのさまざまな基準を導入し始めている。今こそ、モンテネグロに進出する良い機会である。
【国際経済本部】