経団連は9月3日、東京・大手町の経団連会館でウクライナ経済復興特別委員会(國分文也委員長)の第3回会合を開催した。外務省の北川克郎欧州局長、経済産業省通商政策局の辻阪高子審議官から、7月にイタリア・ローマで開催されたウクライナ復興会議(URC2025)やウクライナへの官民ビジネスミッションの派遣について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 北川氏

日本政府は、ロシアによるウクライナへの侵略に対し、一貫して復興支援や外交的支援を行ってきた。
現在、最前線から遠く離れた地域へのドローンによる攻撃を含め、ウクライナでは激しい戦闘が継続している。ロシアが少しでも占領地を拡大するための試みを依然としてやめない一方で、ウクライナは西側諸国の支援を受け、徹底抗戦を続けている。
日本政府は、ウクライナのみならず、ロシアの影響を受けやすい周辺国などを含めた支援が必要との認識のもと、外交を展開している。
8月15日には米国・アラスカ州で米ロ首脳会談が実施されたが、プーチン大統領は「危機の根本的原因の除去が必要」など従来のコメントを繰り返した。
同月18日にはホワイトハウスで米ウクライナ首脳会談と欧州首脳を交えた会談が立て続けに行われるなど、「安全の保証」を巡る有志国連合の議論が継続している。
日本もその議論に積極的に参画している。日本にとって、ウクライナを経済的に強靭にする支援も重要な貢献の一つである。これを支える経団連やウクライナ経済復興特別委員会の取り組みに感謝したい。
ウクライナへの渡航について、さまざまな要望があることは承知している。10月にはウクライナ地雷対策会議が日本で開催される。地雷除去支援を含む国際的な枠組み作りにも貢献していく。
■ 辻阪氏

日本は2023年の岸田文雄内閣総理大臣(当時)のウクライナ訪問やG7広島サミットにおけるウクライナ復興支援へのコミット表明以降、ウクライナ復興支援を一貫して行ってきた。
24年2月には東京で「日・ウクライナ経済復興推進会議」を開催し、同年10月に日本貿易振興機構(ジェトロ)キーウ事務所を開設した。25年8月には東京で「日・ウクライナ経済復興推進フォーラム」を開催した。
経産省は国際連合工業開発機関(UNIDO)を通じた支援に260億円を拠出し、現時点では、医療、農業、地雷除去など29件のプロジェクトで契約を締結している。さらに、ポーランドやルーマニアを含む中東欧諸国との連携を強化し、ウクライナのエネルギーやインフラ再建を行うための補助金を新たに用意して公募を実施した。
23年以降はウクライナへの官民ビジネスミッションを5回実施した。
25年7月には初めてリヴィウを訪問。日本企業の活動を支援し、促進する窓口として、リヴィウ市役所は現地にジャパンデスクを設置した。リヴィウはロシアの攻撃による被害が比較的小さく、経済特区や周辺国との交通アクセスの良さから注目されている。今後も分野別・地域別のビジネスミッションを継続していく方針である。
7月のURC2025では、日ウクライナだけでなく中東欧諸国との官民ラウンドテーブルを開催し、国際的な連携を強化した。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のナショナルデーを好機と捉え、8月4日に「日・ウクライナ経済復興推進フォーラム」を開催した。
ウクライナからは、タラス・カチカ欧州・欧州大西洋統合担当副首相をはじめ政府閣僚が出席。オレーナ・ゼレンスカ大統領夫人による特別講演も行われ、新たに29本の協力文書を披露した。両国の政府、企業関係者ら約300人が参加し、ウクライナへの関心の高まりが改めて感じられた。
【国際経済本部】