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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年10月23日 No.3702 提言「持続可能な観光立国の実現に向けて」を公表

経団連は10月14日、「持続可能な観光立国の実現に向けて~次期観光立国推進基本計画に向けた提言」を公表した。政府が第5次観光立国推進基本計画の策定を進めるなか、持続可能な観光立国の実現に向けて講じるべき施策を提言した。概要は次のとおり。

■ 現状と課題

活況を呈するわが国のインバウンド旅行者数やその消費額と裏腹に、「持続可能性」という観点でわが国観光産業は厳しい状況に直面している。

観光産業は他産業と比べて欠員率が高く、人材の確保と育成が喫緊の課題となっている。

観光客の増加に伴う混雑やマナー違反等が顕著となるにつれて、地域住民との軋轢を惹起する、いわゆるオーバーツーリズムの問題も各地で深刻化しつつある。

外国人延べ宿泊者数の約7割が三大都市圏に集中するなど、都市部と地方部間の格差も拡大している。

■ 講じるべき施策

1.わが国観光産業を支える人材の確保・育成

観光産業の担い手不足が顕著となるなか、観光産業全体の省力化や生産性の向上が急務である。

政府は、人材不足対策に係る具体的な優良事例の横展開や「省力化投資促進プラン」を着実に実行すべきである。観光客がインターネットを通じて情報を収集するなか、適時適切に情報を発信するデジタル人材の確保と育成も一層重要となる。長期的な観光産業の観点から、次世代の担い手の継続的な育成に向けた観光人材教育も不可欠である。

2.オーバーツーリズムの解消

持続可能な観光立国を実現するうえで、深刻化するオーバーツーリズムへの適切な対処は極めて重要である。観光客の受け入れと住民生活の質の両立を図る好事例の横展開や、日本の習慣や公共マナーに関する理解の促進に向けたSNSの活用等が求められる。

白タクや違法民泊等、わが国観光の健全で持続可能な発展を阻害する違法行為や迷惑行為に対しては、必要に応じた規制の導入を含め、取り締まりの強化を進めていく必要がある。

3.自律型観光の展開

観光による地方活性化と都市部への集中の是正を同時に実現するために、各地域が有する魅力や特色をアピールし、観光政策を地方創生と一体的に推進することが重要である。

地域分散や地方誘客の推進、受け入れ地域の観光戦略の立案と推進を担う観光地域づくり法人(DMO)の機能強化、地方空港をはじめとする地方の受け入れ環境の整備、地域内の移動に欠かせない二次交通の確保――などが不可欠である。

4.その他の重要課題

裾野の広い観光産業のバリューチェーン全体で、国内事業者の収益力の向上に資する観光政策を確立すべきであり、関係省庁および官民が連携して取り組む必要がある。

その一環として、消費額の大きい高付加価値旅行者を確実に取り込む施策の展開が重要である。ワーケーションやラーケーション等を通じた観光需要の平準化や、日本人の国際意識の向上にも資するMICE(注)を通じた誘客を推進すべきである。

観光政策の財源となる国際観光旅客税や宿泊税については、負担者である国民に対する納得性や公平性の観点から、国民への還元の明確化や、使途の透明性の確保が重要である。あわせて、国際競争力強化の観点から、アウトバウンドの促進に向けた渡航手続きの簡素化や、海外渡航に対するサポートの強化に取り組む必要がある。

■ 持続可能な観光立国の実現に向けて

わが国観光政策のあり方は重要な転換点に差し掛かっている。量から質への転換を図りつつ、「リスペクト」と「ウェルカム」の精神のもと、改めて、「住んでよし、訪れてよし」を両立し得る地域と観光の実現を図っていく必要がある。

経団連としても、諸課題の解決に向けて、できる限りの取り組みを進めていく。

(注)企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使ったビジネスイベントの総称

【産業政策本部】

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