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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年10月23日 No.3702 営業秘密管理指針の改訂および不正競争防止法を巡る最近の動向 -知的財産・国際標準戦略委員会企画部会

中山氏

経済産業省では2025年3月、営業秘密を取り巻く働く環境の変化やクラウド利用の普及等の情報管理方法の変化、生成AIの普及といった技術動向を踏まえ、不正競争防止法における営業秘密管理指針を約6年ぶりに改訂した。

そこで経団連は9月25日、東京・大手町の経団連会館で知的財産・国際標準戦略委員会企画部会(和田茂己部会長)を開催し、経産省経済産業政策局の中山英子知的財産政策室長から、営業秘密管理指針の改訂を中心に、不正競争防止法(不競法)を巡る最近の動向について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

本指針は、企業等が保有する多様な情報のうち、営業秘密が不正取得された場合に事後的救済として差し止め等の法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策である。

本指針で示す対策を越えた、個人情報や外為法(外国為替及び外国貿易法)の対象となるような重要技術の情報管理も重要であるため、ベストプラクティスを集めた「秘密情報の保護ハンドブック」も参照してほしい。

改訂の方針は、従前の考え方を大きく変えるものではなく、裁判例や学説における考え方を明確化するものである。

主な改訂項目は、(1)営業秘密の三要件「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の解釈に係る民事上の措置・刑事罰との関係の明確化(2)営業秘密以外の情報の保護について、限定提供データを含めた整理(3)本指針の対象となる「事業者」の範囲について裁判例を踏まえた明確化(4)営業秘密の三要件に関するさらなる明確化――の4点である。

(1)について、三要件の解釈として、民事上と刑事上の要件は同じものと考えられると明記した。

(2)の営業秘密以外の漏洩については、不競法に基づく限定提供データによる保護や、個人情報保護等のその他法令による法的保護を受ける可能性もあると整理した。

(3)については、大学・研究機関など企業以外の組織も、研究・実験データといった営業秘密に該当する情報を保有する可能性があることから、本指針における対象者の範囲として、大学・研究機関についても該当し得ると考えられる旨を明記した。

(4)の三要件の明確化について、まず、「秘密管理性」に関し、雇用形態の多様化を踏まえ、従業員のみならず、役員や取引相手先等も管理対象に含まれることを明記した。取引相手先との間で秘密保持契約の締結がなければ必ず秘密管理性が否定されるわけでなく、ケースバイケースで判断する。

当該営業秘密保有者にとって重要な情報であり、当然に秘密として管理しなければならないことが従業員にとって明らかな場合には、就業規則や誓約書による規範的な管理措置や、パソコンのログインID・パスワードによるアクセス制限も管理措置として足りるときもあると記載した。

生成AIに秘密管理情報を入力した場合でも直ちに秘密管理性が否定されるわけではないが、生成AI提供事業者に情報が提供される場合には秘密管理性が否定される場合もあり得る。

「有用性」について、情報取得者が有効に活用できるかという主観的判断ではなく、客観的な判断に基づくと明確化した。

「非公知性」については、ハッキング等によりダークウェブに情報が流出したことをもって直ちに非公知性が失われるわけではないと明記した。

公知情報の組み合わせであっても、その組み合わせが知られていない場合や、情報取得に時間やコストがかかり財産的価値が失われていない場合には非公知と言い得るとした。

今後もAI技術の進展等に応じて適宜見直しを図っていく。

【産業技術本部】

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