小林氏
経団連は東日本大震災の被災者・被災地支援活動の一環として、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の「共に生きる」ファンド等の助成活動を支援し、会員企業に寄付を呼びかけてきた。JPFに寄せられた震災関連の寄付は約73.5億円に上る。この支援プログラムは2025年3月をもって終了した。
そこで経団連は9月9日、東京・大手町の経団連会館で、JPFと東日本大震災被災者支援プログラムに関する報告会を共催した。
来賓の防災庁の設置準備を担当する瀬戸隆一内閣府副大臣は「災害対応力の強化には、デジタル化に加えて、顔の見える関係構築が重要。東日本大震災からの復旧・復興に当たり、官民連携促進に貢献してきたJPFに期待している」と防災立国の実現に意欲を示した。
JPFの亀田和明事務局長(当時)、藤原航国内事業部長は被災者支援活動の成果を報告。いわき・双葉の子育て応援コミュニティ cotohana(コトハナ)の小林奈保子代表理事は福島県双葉郡の現状を紹介した。概要は次のとおり。
■ JPF東日本大震災被災者支援活動成果報告(亀田氏、藤原氏)
JPFは500以上の事業を支援し、その裨益者は54万人以上に及ぶ。
活動を支えた寄付の5割以上が経団連の関係企業からの迅速な拠出であった。これにより(1)被災者へのきめ細かな支援(2)被災地人材の支援等を通じた、自立に向けた復興支援(3)現在の災害支援ネットワーク形成促進――が可能となった。
特に企業との連携では13年から19年にかけ、被災地の支援ニーズを分野ごとにまとめた「ニーズマトリクス情報」を、経団連1%(ワンパーセント)クラブの協力を得て定期配信し、企業が求める被災地情報を提供した。今後は災害発生前から企業とのコミュニケーションを深化させたい。
■ 双葉郡の現状とコトハナの活動(小林氏)
双葉郡では移住に伴い子どもが増加している。現在、郡内7町村で小中学校が再開されており(注)、そのうち大熊町で開校した、0歳から15歳までがシームレスに学べる「学び舎 ゆめの森」は注目の教育施設である。一方で、小児科医や産婦人科医が不足している。
小売店舗の再開で日頃の買い物に支障はないが、学用品や子ども服の購入先が限られているとの声がある。塾や習い事、自然遊びの場も不足しており、双葉郡外に出向く必要がある。
コトハナは、子育てに資する情報を収集し、提供している。当初は「病院・学校はどこか」といったインフラ関係の情報ニーズが多かったが、最近では「子ども会や子ども食堂など、校外の場はあるか」など、地域コミュニティへの関心が高い。
活動するなかで、(1)高齢化に伴う支援の担い手不足(2)特別支援が必要な子どもや外国ルーツの子どもへの対応――が特に課題と感じている。
双葉郡では、国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」に基づく先進的な実証実験が行われており、子どもたちはそれに間近で触れることができる。交流人口や関係人口が拡大しており、「よそ者ウェルカム」な雰囲気もある。新しい「人・もの・こと」との出会いが多い地域であり、多くの方にぜひ足を運んでもらいたい。
(注)25年時点で双葉町の小学校2校と中学校1校がいわき市に移転中
【ソーシャル・コミュニケーション本部】
