ウェイク・テクニカル・コミュニティカレッジRTPキャンパスで懇談
ノースカロライナ州はライフサイエンスに強みを持ち、なかでもリサーチトライアングル地域(Research Triangle Region, RTR)はライフサイエンス・クラスター市場ランキングで全米第5位を誇る(注)。比較的低コストで住みやすい環境、官民による積極的な投資誘致、良質な労働力供給等から、特にバイオ製造業が集積しており、日本企業の投資も相次ぐ。
9月23・24の両日、経団連事務局が視察し、産学官関係者と意見交換したところ、強みとして(1)強力なライフサイエンス支援体制(2)企業との提携による労働者育成(3)連携を歓迎するオープンなマインドとネットワーク――が指摘された。概要は次のとおり。
■ 強力なライフサイエンス支援体制
州内におけるライフサイエンス産業の経済効果は820億ドル、関係企業は840社に上る。
政府発のバイオ産業支援機関であるノースカロライナバイオテックセンター(NC Biotech)が州の取り組みを支えている。
同センターのメアリー・ヘクト・キッセル氏によると、州内のさまざまな企業と連携してアイデアからインパクトまでの道を支援しており、研究助成金、起業に対するローンとメンタリング、ライフサイエンスの魅力を広めるアンバサダープログラムや若手人材の育成支援等を実施する。
RTRでは、民間の地域開発機関であるRTRパートナーシップが、バイオに限らず、地域内投資の促進に必要な支援を提供する。
エクゼクティブディレクターのライアン・コーム氏によると、RTP(Research Triangle Park)の「トライアングル」とは、デューク大学、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC)、ノースカロライナ州立大学をつなぐ三角形の呼称。
同州の1人当たり所得が全米最低水準だった時代に、スタンフォード大学を参考に高収入の雇用を創出できる研究パークであるRTPを設立したことが始まりである。企業・研究所の誘致や研究・起業支援を強力に進めて現在のエコシステムを構築し、今も成長途上にある。
トライアングルの一角であるUNCのシェリル・ワデル氏、エミール・ルンゲ氏によると、同校では研究成果の商業化を促進するため、R&D助成、アクセラレーションプログラム、エンジェル投資家とのネットワーク等を進めている。
最近はKPMGと連携して、初期の重要な顧客である大企業と、大学発スタートアップの連携を加速しており、州外の起業家も参加しているという。
■ 企業との提携による労働者育成
同州最大のコミュニティカレッジであるウェイク・テクニカル・コミュニティカレッジのRTPキャンパスでは、スコット・ラルズ学長らと懇談した。
同校では、企業のニーズに合わせてカスタマイズしたカリキュラムや設備を提供して、バイオ製造技術者やラボ技術者を育成する。州政府は投資促進策の一環として、人材育成費用も補填する。
提携する富士フイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズのサラ・ガスケル氏は、州を挙げて熟練労働力の確保に対応してくれることが投資インセンティブになっていると述べた。
■ オープンなマインドとネットワーク
コーム氏によると、ノースカロライナ州の真の強みは自発的なネットワークにあり、連携を好むオープンマインドな人々こそが成長の原動力になっている。例えばUNCでは、卒業生や成功した起業家の自発的参加により、商業化支援に無償の外部アドバイザーを活用する。
ルンゲ氏は「RTRにはネットワーキングと恩返しの精神が根付いている。ここは親しみやすいオタクたちの地域(region of affable nerds)だ」と強調した。
(注)不動産サービス大手の米ジョーンズラングラサール(JLL)がまとめた2024年のランキング
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